半澤則吉(達人)の記事一覧

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『国境の南、太陽の西』に描かれた青山という街【村上春樹の東京を歩く】
「僕はBMWのハンドルを握ってシューベルトの『冬の旅』を聞きながら青山通りで信号を待っているときに、ふと思ったものだった。なんだか僕の人生じゃないみたいだな、と。」(『国境の南、太陽の西』より)僕のあまり多くない自慢の一つに、古い初版本やサイン本の蒐集がある。若い頃は好きな作家のサイン会に出向いたり、古本屋で初版本を探し求めたりしたものだ。そういうわけで、いつ購入したのかはまったく覚えていないが、今回語りたい村上春樹『国境の南、太陽の西』も初版単行本を持っている。
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『ノルウェイの森』に描かれた新宿・御茶ノ水さんぽ−side緑−【村上春樹の東京を歩く】
ドイツ語の授業が終わると我々は新宿の街に出て、紀伊國屋の裏手の地下にあるDUGに入ってウォッカ・トニックを二杯ずつ飲んだ。「ときどきここに来るのよ、昼間にお酒飲んでもやましい感じしないから」と彼女は言った。(『ノルウェイの森』第7章より)彼女というのはもちろん、『ノルウェイの森』の二人目のヒロインである小林緑のことだ。『ノルウェイの森』は三十年以上も前に書かれた作品だが、村上春樹好きの友人と話すといまだに、主人公ワタナベが想いを寄せるヒロインの直子派か、ワタナベと近しい関係になる大学の友達の緑派か、という議論を交えることになる。直子については以前の記事で詳しく述べているので、こちらも合わせて読んでいただきたい。
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『ノルウェイの森』に描かれた四谷・目白台さんぽ―side 直子―【村上春樹の東京を歩く】
僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた(『ノルウェイの森』冒頭より) 僕は三十七歳で、飛行機のシートではなく自宅のデスクの硬い革張りのオフィスチェアに座っている。たまたま僕は今、『ノルウェイの森』の主人公ワタナベと同じ年齢であり、村上春樹が本作を執筆していた年齢を迎えた。そんな偶然が今回『ノルウェイの森』についての文章を書く大きな動機になった……というのは後で取ってつけた話なのだけど、そんな何やかやの偶然も重なり、こうやって村上春樹についての文章を書くありがたい機会を得た。最初に断らなければならないが、僕は村上春樹の研究者でもマニアでもない。学術論文のような専門的な話はできないし、ハルキスト垂涎のマニアックな小噺などは持ち合わせていない。それでも20年以上にわたり春樹作品を読み続けてきたのだから、フリークくらいは自称しても問題ないだろう。村上春樹フリークにとって、これはなかなか責任がある仕事だなと実感している。 僕が最初に村上春樹の小説を手に取ったのは十六歳だった。上半身裸で授業を受けるのが当たり前のような男子校。運動部の連中の大きなカバンが散らばった教室の後ろから四番目の席で、クラスメイトから借りた赤い表紙の本を開いた。授業をサボタージュする風潮がまだ残っていた時代だったからか(幸いにも僕の高校はそうだった)、僕らはよく小説を読んだ。村上春樹を読んだ。あの頃の空気と今吸っている空気が違うことは百も承知だが、だからこそ村上春樹をこれから読む人にも、何度も読んできた人でも楽しめる「春樹散歩」を書いていきたい。今回は村上春樹の代表作『ノルウェイの森』を歩く。本作の一人目のヒロイン直子とともに。
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朝ドラ『エール』ロスのあなたへ。窪田正孝が演じた裕一と大正の福島、昭和の国立競技場を歩く【朝ドラ妄想散歩】
朝ドラ102作目、『エール』は新型コロナウイルスに敢然と立ち向かった素晴らしい作品だった。放送開始直後の4月には緊急事態宣言が出され撮影がままならず、6月の終わりには放送休止、さらには10話ほど放送内容を縮小……と異例づくしであったが、昭和の名作曲家・古関裕而(こせき ゆうじ)をモデルとした作品はコロナ時代を生きる我々へのエールとなり、窪田正孝、二階堂ふみらの演技が多くの人の心を掴んだ。今回は『エール』の舞台となった大正時代の福島と、昭和の国立競技場を妄想散歩。今現在の街の景色と合わせ紹介する。
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半沢ロスに陥ったあなたのための『半沢直樹』妄想散歩。彼も駆け回ったはずの、ゼロ年代の六本木と羽田を歩く
2013年放送の第1シーズンで視聴率40%越えを成し遂げた、平成最高視聴率ドラマ『半沢直樹』(TBS系)。堺雅人演じる東京中央銀行のバンカー半沢直樹が正義を貫き巨悪を倒す姿が共感を呼び、伝説的な作品となった。あれから7年、ついに放送された第2シーズンでもその熱は収まらず、全話で視聴率20%オーバーと大ヒット。香川照之らおなじみの顔ぶれに加えて、賀来賢人をはじめとした新キャストもドラマを盛り上げた。“現代の水戸黄門”ともいわれる本作は、いわずもがな、半沢が悪をやっつける「倍返し」こそが最大のクライマックスだ。第2シーズンでも胸がスッとするようなシーンがたくさん用意されていて、池井戸潤による原作ファンはもちろんのこと第1シーズンからの視聴者も虜になった。一方で、この先どうなる? と展開を考察するファンも続出。SNSではたびたび「半沢考察」が行われ話題となった。かくいう私も半沢考察を楽しみ、今まさに半沢ロスに陥っている人間の一人だ。今回は実に面白かった第2シーズンに思いを馳せながら、半沢直樹が訪れたであろう東京の街々を妄想散歩してみたい。
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『まんぷく』ロケ地歩き。福子と歩くカップヌードルができる前の戦中~戦後【朝ドラ妄想散歩】
おうち時間が増える中、アレにお世話になっているという人も多いだろう。チキンラーメンにカップヌードル。日本が生んだ奇跡のインスタント飯は、2018年10月から2019年3月にかけて放送された朝ドラ『まんぷく』で今まで以上に注目されることとなった。このドラマは日清創業者、安藤百福(ももふく)・仁子(まさこ)夫妻がモデルだったのだ。『まんぷく』は連続テレビ小説の第99作として放たれた話題作にして意欲作。今回はヒロイン、福子とともに『まんぷく』に思いを馳せながら、その舞台を振り返ってみる。まずはそのストーリーを一気見しよう。
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日本アニメ草創期、1950〜70年代の東京を、朝ドラ『なつぞら』なつと歩く【朝ドラ妄想散歩】
「ついに朝ドラ100作目!」と、大騒ぎしたのは2019年4月のこと。もはや日本人の朝の風景に取り込まれているといってよいNHK「連続テレビ小説」が、広瀬すず主演の『なつぞら』で通算100作目を迎えたのだ。この記念作の題材に選ばれたのは「アニメ」だ。漫画映画と呼ばれた時代からアニメ草創期を見事に描いた作品だった。今回は、なつ(広瀬すず)たちが過ごした1950年代〜70年代前半の東京、そしてアニメの歴史を妄想散歩する。
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朝ドラ『あまちゃん』の天野アキと歩く、2000年代アイドルブーム真っ只中の東京【朝ドラ妄想散歩】
2013年はドラマの当たり年だった。『半沢直樹』(TBS系)が最高視聴率40%越えを果たし、大いに話題に。国産ドラマがいつも以上に注目されたのだ。しかし『半沢直樹』以上に社会現象を生んだドラマがある。それが連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)だ。今回は、のんが演じた『あまちゃん』のヒロイン・天野アキと朝ドラ妄想散歩。一大ブームを巻き起こした朝ドラ『あまちゃん』の舞台となった地を、ともに歩んでみたい。
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【朝ドラ妄想散歩】1960年代 高度経済成長まっただなかの東京を、朝ドラ『ひよっこ』みね子と歩く
NHKの朝ドラ、正式名称は「連続テレビ小説」。昨年(2019年上半期)放送の『なつぞら』で100作目を迎えた国民的ドラマは今なお高い視聴率を誇り、多くの人々の生活のルーティンに取り込まれている。東京と大阪の放送局が交互にドラマを制作することから半年に一度は東京近辺が舞台となることが多い。現在放送中の『エール』も東京が舞台だが、今回は夕方にNHK総合で再放送中の『ひよっこ』(2016年上半期放送)に描かれた1960年代の東京に思いを馳せてみよう。
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