無機質な外観から温もり感のある店内へ
環八通りから南に伸びる日の出銀座商店街の一角、無機質な外壁に掛かる店名看板は小さく、のれんが掛かっていなければ、ここがそば屋だと気づかないかもしれない。
店内は5人掛けのL字型カウンター席と、4人掛けテーブル席3卓。木や竹などを巧みに駆使した純和風の空間で、昼は格子窓から差し込む自然光が風雅な空間をつくり出し、夜は間接照明の明かりとBGMのジャズが落ち着いた雰囲気を演出する。
「昭和35年(1960)の創業です。かつてこのあたりには町工場が多く、出前などもする普通のそば屋でした。やがて町工場も減り、出前も少なくなったので、本格的な手打ちそばで勝負しようと平成14年に現在の形にリニューアルしました」と話してくれたのは2代目店主の小林隆徳さん。
店主の手作り肴で日本酒を傾ける至福のひととき
日本酒は常時5種類程度。酒の肴も多いので、日本酒を楽しむ客も多い。焼き味噌、山わさび、板わさといったそば屋らしいつまみに加えて、地鶏焼き、ゆばの天ぷら、そばがきの揚げだしなど手の込んだものもあり、そばを待つ時間に酒と肴を楽しみたい。
メニューを開くと、真っ先に飛び込んでくる次の言葉が、この店のスタンスをよく表しているので紹介しておこう。
「蕎麦屋で過ごす至福のひととき
旨い肴を抓んで小粋に酒を呑み
最後の締めはせいろを手繰る
ほんのささやかに微醺なる瞬間」
冷たいつゆはスッキリと、飲むつゆはコクを大事に!
そば粉は北海道産。つゆは冷たいそばには本枯節、温かいそばには鯖節を中心に出汁を取る。「冷たいつゆはスッキリと、飲むつゆはコクを大事にしています」。
この日オーダーしたのは、二八そばと白雪(更科そば)がセットになった、二色そば。白雪は、そばの実の芯だけを使った真っ白いそば。季節によって異なるが、この日は芥子(けし)の実を練り込んだ変わりそばだった。
つゆに絡めてそばをたぐれば、鰹節の香りが鼻をくすぐる。少し濃いめで辛口だから、ほんのちょっとだけつゆにつければよい。
『浅野屋』店舗詳細
取材・文・撮影=塙 広明