汐留駅から空中散歩スタート
まず降り立ったのは地下鉄汐留駅。散歩コースへ繰り出そうと気持ちを高めている私のかたわらを、何人かが足早に通り過ぎていく。まさか、私のようにペデストリアンデッキ愛好家で、これから空中散歩に打って出ようとする強者(つわもの)だろうか……。
そんなわけはなく、人々が吸い込まれていったのは複合型商業施設「カレッタ汐留」内にある『電通四季劇場[海]』。華やいだ服装からそんな気もしていた。観劇好きでもある私としては、うらやましさもありつつ、気持ちを切り替えて歩き出すことにした。
あ、観劇後の余韻に浸りながら少し歩きたい、という方にも、今回の散歩コースはおすすめですよ~!
「はまかぜの階段」という素敵な名前の階段を上り、空中散歩スタート。駅と建物をつないでいるデッキに頬が緩む。
周辺の街並み、行き交う車や人を見渡しながら進むと、すぐにゆりかもめの汐留駅に到着。浜松町駅まではゆりかもめと並走するように歩ける。
イタリアと大名庭園に寄り道
「空中散歩」と銘打っておいてなんだが、ここでデッキを下りて寄り道のすすめ。魅力的なスポットがいくつもあるエリアなので、立ち寄り先として自由に組み合わせてみてほしい。
デッキを降りて、東海道新幹線や在来線が走る線路を挟んで反対側へ。ほどなく、ヨーロッパのおしゃれな街並みの中に足を踏み入れる。
イタリア人建築家監修のもと造られたこの一画は、複合都市「汐留シオサイト」の区画のひとつ「イタリア街」で、とにかく絵になる。
広場のベンチに腰掛けていたら、それこそイタリアの街中に迷い込んだような気持ちになれ、心地良かった。
また、場外馬券場『ウインズ汐留』も隣接していて、神殿のような外観が目を引く。
再び、線路を挟んで反対側へ。海沿いへ向かって歩を進めると現れるのは『浜離宮恩賜庭園』。江戸時代の代表的な大名庭園で、国の特別名勝・特別史跡に指定されている。
三百年の松、潮の満ち引きによって水位が変わる「潮入の池」、御茶屋などが風雅な景観をつくり、春には菜の花畑も見られる。
浜松町駅周辺で鉄道と東京タワーの競演
さて、空中散歩に戻ろう。
木漏れ日の道を抜け、やがて現れたのは「イタリア公園」。
本格的なイタリア式庭園の外観で、イタリア製の彫刻、噴水が特徴的だ。
ゆりかもめや新幹線を眺めながらくつろげる、ほっと一息付けるスポット。季節によって景観も変わりそうだ。
イタリア公園を後にし、さらに進むと浜松町駅周辺が視界に入ってきた。東京の観光名所と島嶼(しょ)への玄関口・浜松町駅は今日も多くの人でにぎわう。
浜松町駅近くまで来たら、竹芝駅方面へ左折する。デッキは現在、浜松町駅と直結ではないが、将来的には橋上改札とデッキがつながり、より移動しやすくなるらしい。
約500mの長いデッキを抜けるとベイエリアであった
竹芝駅方面へ歩き出すと、近代的なデザインの歩行者デッキがずっと続いている。全長約500mにわたるペデストリアンデッキに、心を洗われたような心地すらする。
このデッキの魅力は空中回廊を散歩できる浮遊感と、東京タワーや『旧芝離宮恩賜庭園』、やがて海が見えてくるなど、短い中でめまぐるしく目に映る景色が変わることだ。これほどノンストレスで街中を突っ切れる場所はそうないだろう。
さあ、海が見えてきたらゴールだ。この日は残暑厳しい中だったが、竹芝ふ頭公園にたどり着くと吹き抜ける海風が気持ちよく、コースを踏破した達成感と爽快感を得られた。
手をつないで歩くカップル、家族連れ、ぼんやりと海を見つめるおひとりさままで、老若男女が思い思いに過ごしている。
レインボーブリッジやお台場エリア、築地大橋、東京スカイツリーを眺められるこの場所で今回の散歩を締めくくってももちろんいい。
……ふと、喉の渇きを覚えた。ショートコースではあったが、寄り道もしてたくさん歩いたし、何より暑くてたくさん汗をかいた。一杯、やりたい気持ち。
ちょっくら浜松町駅周辺で喉を潤してくるとしますか! まずは『秋田屋』をのぞいてみよう。
文・写真=阿部修作(さんたつ編集部)