味の秘訣は強力な火力
調理の様子を厨房で見せてもらうと、大ぶりの中華鍋で、まず野菜を炒めはじめた。時折上がる炎に火力の強さがうかがえる。鍋を覆い尽くすような炎は、こちらまで熱が伝わってくるようだ。
野菜を手早く炒めた後は、味噌を入れ、これも強火で火を入れていく。この時点で味噌が焼ける香ばしい匂いが漂い、食欲が刺激される。最後にスープを投入。
「味噌らーめんは、中華鍋で炒める札幌味噌ラーメンの手法ですね」と店主の伊藤良介さん。注文ごとに調理しているため、提供には少し時間がかかることもあるそう。この火力で次々と注文が入り、毎回火を入れていたら、真夏は猛烈な暑さになることが想像される。
あの室外機の数は、夏場のエアコンのためだったのだ。鍋のそばにも送風機のパイプが伸びていた。
鶏・豚・野菜を17時間炊いたスープ
味噌ダレは3種類の味噌をブレンド、スープは鶏・豚・数種類の野菜を17時間炊いて作り上げている。非常に手間暇をかけた一品なのだ。
食べてみると芳ばしい味噌の香りが広がり、野菜まで旨味が染み込んでいる。濃厚だけれどもシャキシャキの白髪ネギと、ピリリとしたラー油の辛さがアクセントになり、するすると食べられてしまう。スープとよく絡む中太麺は『三河屋製麺』の多加水麺。
さらに辛さを追加したい時には、店内にある辛子もやしをトッピングしてもいい。食べ放題なので、小皿に盛っておつまみとしても楽しめる。
一方、つけ麺の麺はつるつるの表面で、歯応えのあるモチモチの太麺。スープは濃厚でトロみがあり、コクのある甘めの味噌味。太麺とよく絡む、パンチの効いた味だ。こちらも白髪ネギがほどよいアクセントになっている。
さらに味噌ダレの旨味をダイレクトに味わいたいのなら、濃厚な味噌まぜそば1000円がおすすめ。やみつきになる一杯だ。
店主は元プロボクサー
店主の伊藤さんは元Sフライ級のプロボクサー。引退後は二郎系の名店『らーめん陸』、味噌ラーメンの名店『麺処 花田』で修業した後、独立した。蒲田に店を構えたのは2016年の11月。今では三軒茶屋にも支店がある。店内には所属ジムの選手のポスターが貼られていた。
そんな伊藤さんに蒲田の街の魅力も聞いてみた。「蒲田にはたくさん飲食店がありますが、皆さん意外と横のつながりがあるんですよ。ラーメン屋店主が集まってトークイベントも開催されたりもします。下町的な感じですかね」。昔ながらの人情味がある街なのだ。
おつまみのメニューもある「飲める」ラーメン店
この店の魅力がもう一つ。飲めるラーメン店という点だ。メニューを見ると生ビールにハイボール、焼酎とアルコールのメニューもそろう。チャーシューや鶏モモ肉の唐揚げなどおつまみのメニューも豊富に用意されている。おつまみは1品350円とお手頃な価格。ラーメンの麺を半分で注文できるので、締めにもちょうどいい。
ビールとおつまみで一杯やってから、締めのラーメンまで食べることができる。おいしくて使い勝手のいい『らーめん蓮』、蒲田に訪れた際にはぜひ試してみてはいかがだろうか。
取材・⽂・撮影=新井鏡子 構成=アド・グリーン