花園、動物園、見世物小屋を経て、ゆるくレトロな遊園地へ
江戸時代のお屋敷のようなエントランスを抜けてすぐ、メリーゴーランドとスワンが並ぶ遊園地らしい風景が現れ、子供はもちろん大人だってうきうきしてしまう。
この地で嘉永6年に開園した花園も、「花を観て楽しんでほしい」という思いがはじまり。その後、動物園、見世物小屋など、時代に合わせて楽しみ方が変化したが、訪れる人を笑顔にしてくれるのは昔も今も変わらない。
広報の髙知尾有美さんは、「戦後の経営はアトラクションメーカーだったので、試作機や各地の遊園地で使われなくなったものが空きスペースに置かれていったそうです」と話す。
現状のゆる〜いレトロな空間ができあがったのは、狙いではなくなりゆきというのが「花やしき」のすごいところだ。
家族連れでにぎわうが、実は大人向けだった!?
大人になると、遊園地やテーマパークで丸1日過ごすのはおっくうになりがち。「花やしき」はコンパクトな敷地がデメリットに思えるけど、だからこそサクッと遊べて歩き疲れないという点では、子供だけじゃなく、実は大人にも向いていると言える。
一歩足を踏み入れたら、やはり挑戦したくなるのが絶叫系。「ぜんぜんへっちゃらですよ〜」なんて、編集担当と2人で豪語していたが、ディスク・オーとローラーコースターは大人らしく涼しい顔で乗れたものの、リトルスターで撃沈。予想できない回転技が押し寄せ、必死の形相で叫び声を上げてしまった。
ひと休みしようと向かったのは、スカイプラザ。屋上から園内全景とスカイツリー、浅草寺の五重塔も見渡せる穴場のビュースポットだ。幸せいっぱいの風景が広がっていて、大人の汚れた心が洗われるようだ。
片隅には、花園つながりで球根の形をしたブラ坊神の社が。隣には、女力士のボヨノ花のオブジェ。シュール過ぎる! ふざけてるのか本気なのか、「花やしき」の独特のセンスがさく裂していた。
2023年には170周年として新エリアが誕生。開園当時の江戸時代に原点回帰したお化け屋敷や花景色のプロジェクションマッピングなどが仲間入りした。
「新しいものを取り入れながら大切にしてきた『花やしき』らしさ全開です」と、髙知尾さん。花園時代から続く思いを改めて実感。
ぜひ視点を変えて、大人だからこそわかる「花やしき」の醍醐味を謳歌(おうか)したい。
「花やしき」らしさあふれる、レトロかわいいアトラクションたち
恥ずかしがらずに大人も乗ってね! 【パンダカー(R)】
試作機として「花やしき」に置かれたことが始まりといわれるメロディペット。かわいさを追求してパンダに行き着いたとか。パンダカーは「花やしき」の登録商標だ。今では、パンダカーをモチーフにしたお土産も人気。
回転と上昇と左右の動きが合体! 【ディスク・オー】
「花やしき」三大絶叫マシンの一つ。円盤が回転しながらバイキング船のように左右に上昇。グーっと引っ張られる遠心力に揺さぶられる。上がったときの高さと風の気持ちよさを同時に味わえて、ドキドキするけど気分も爽快!
ドキドキポイントはレールのガタガタ音 【ローラーコースター】
昭和28年(1953)に誕生した、現存する日本最古のローラーコースター。2020年に初代に近いシルバーボディに塗り替えられた。1分30秒で園内を一周し、建物の横ギリギリを走ったり、80年代のお茶の間を通り抜けたりするのがおもしろい。
かわいい顔して想像以上にハード! 【リトルスター】
「花やしき」の中で最もスリリングなアトラクションはこれ。
洗濯機のようにグルグル回転し、何度も「これはやばい!」を連発。不覚にもキャーと叫び、しまいには「うー」といううなり声も。乗るなら食事前がベター。
のんびり空中散歩。何周もしたくなる! 【スカイシップ&ヘリコプター】
地上7.5mから園内を見下ろせる2つのアトラクション。ヘリコプターは自分たちでペダルをこぐから速度を変えられる。スカイシップは自動で進むからラクラク!
優雅な音楽でしばしの時間旅行へ 【メリーゴーランド】
日本国内でも少なくなってきているクラシカルなデザインで、入園して最初に出迎えてくれる。これを目指してくる若い女子も多く、ウェディングフォトでも人気だとか。夜のライトアップもロマンチック!
毎回の点検は体力勝負です! 【カーニバル】
車型の乗り物がグルグル回転。2歳からOKで、傾斜角12度は小さな子供にとってはスリル満点。遠心力もあるので大人は外側に乗るのが決まりだ。さらに、毎回急坂を上り下りする過酷な点検作業にも注目したい。
園内最古だからぜひ体験を! 【ビックリハウス(R)】
戦後の再開時に置かれたアトラクション。2023年に昭和50年代頃の外観デザインによみがえった。中に入ってかわいい部屋だと思って油断をしていると痛い目に遭う。これが70年以上前に考えられたなんてすごい。
《2023年オープンの新エリア》 歩くお化け屋敷がパワーアップ 【お化け屋敷~江戸の肝試し~】
昔ながらの歩いて回るお化け屋敷。入場前に江戸時代に流行った怪談話で恐怖をあおる。余裕だなあなんて思っても、最後まで油断は禁物! 代々使われ続けている「お化け屋敷」の看板にも注目を。
こちらも押さえておきたい
お土産も忘れずに!
パンダカーのほか、パンダカー焼きのグッズも狙い目。ローラーコースターのレトロなデザインも人気。
取材・文=井島加恵 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2023年12月号より