様々なスープを味わえる、豊富なメニュー
お店に入ると、まずこの広々とした店内が目に飛び込む。ラーメン屋というよりは、どこか定食屋さんに近く、どの客層も気兼ねなく入店できそうだ。
実際に「女性のお客様もたくさんいらっしゃいますが、テーブル席も用意しているので家族連れも頻繁にいらっしゃいます」と店長の谷口さんは話す。
『威風堂道』では、鯖、鰯、烏賊(イカ)、鯵、喉黒と複数のスープを提供しており、さらにそれを釜揚げつけ麺、中華そば、つけ麺の3種類から選ぶことができる。
この釜揚げつけ麺という他に見ないメニューは、通常の中華そばとは違う形にすることで、同じ魚種、スープでも違った味わいが感じられるのではないか、と考え、提供に至ったそうだ。
複数あるスープの特徴はそれぞれ下記の通り。
・鯖 : 炭・魚・出汁の風味を存分に活かした一番人気の中華そば
・鰯: 強くストレートにイワシを感じることができる、やみつきになる味わい
・烏賊: イカの身肉がたっぷり入ったパンチの効いた味わい
・鯵: 旨味と濃厚さがありながら、あっさりした後味でバランスの取れた仕上がり
・喉黒: 炭火で焼いたノドグロの香ばしさと油の旨味が後を引く一品
これだけ魅力的なメニューがたくさんあると、全制覇したくなる衝動に駆られるが、今回は一番人気商品である鯖スープの釜揚げつけ麺1100円を注文することにした。
魚を余すことなく使った超濃厚スープ
一瞬うどんと見間違えてしまいそうな釜揚げつけ麺は、届いた瞬間に魚の濃厚な香りが広がる。麺の上にちょこんと乗せられている昆布もアクセントになっていて、かわいらしい。
通常のつけ麺だと、時間が経つごとにスープの温度も下がってしまうが、釜揚げならば食べるスピードを気にせずゆっくりと味わうことができる。最初から最後まで変わらぬおいしさを楽しめるのはうれしいポイントだ。
写真から魚がすり潰されて使われていることがわかるように、メニューの「鯖」であれば、サバまるごと一匹をペースト状にし、スープとして使われている。
スープを口に運ぶと、魚の骨の食感をしっかりと感じられるだけでなく、釜揚げされたもちもちの麺は、つけ麺とはまた違った食感が楽しめる。これはおいしい。
さらにトッピング単品追加も可能。筆者は岩中豚ローストポークを注文した。このローストポークは、そのまま食べても良いとのことだが、釜揚げのスープにしゃぶしゃぶして食べると、よりジューシーさが増す。
お客さんの要望も反映! より多くの方に炭火焼き濃厚スープを。
完食する前から思わずスープ割りの有無を尋ねると、「あります。最初はなかったんですが、お客さんからの要望ですぐ作りました!」と教えてくれた。
元々は未利用魚や雑魚を使用し、フードロスに向き合う「もったいないプロジェクト」の新たな形として、“どんな魚も無駄なくすする”というコンセプトのもとオープンしたという『威風堂道』。
それら未利用魚を使用した「海富(しーふー)」という看板メニューがあったのだが、現在は残念ながら工場などの関係で行っていない。しかし他のメニューもコンセプト通り、骨、内臓、全てを無駄なくスープとして使用している。
この一杯の釜揚げつけ麺に「より多くの方に炭火焼き濃厚スープや、廃棄されている魚たちの魅力を伝えたい」という想いが詰まっているのだ。
最後に、谷口さんは『威風堂道』と同じグループの居酒屋で働いていたことがあるそうで「この店ではお上品な感じを出さなきゃいけないのに、つい居酒屋のノリで声出ししてしまう時があります」と冗談を交えて話してくれた。味はもちろん、店内の過ごしやすさは店長の明るいキャラクターも大いに貢献していることだろう。
他では食べられない、新感覚なつけ麺を追い求めている方はもちろんのこと、味だけでなく、魚にも、すすり方にもこだわりを持っている『威風堂道』に、一度訪れてみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影=SUI