神楽坂通りを坂下の飯田橋駅側から上がっていき、左右にいくつも枝分かれしている横丁を気ままにぶらぶらします。
 
神楽坂のひとつ西側の小道に入り、銭湯「熱海湯」の脇にある細く螺旋状の階段路地である芸者小道を登っていきます。まるで猫道。上がりきると見番横丁に出ます。その目の前にあるのが今も花街である神楽坂の見番の建物です。見番は芸伎さんの手配などを管理する組織。この建物は芸伎さんの稽古場ともなっており、運が良ければ三味線の弦を弾く音が聞こえてくることもあります。
 
見番横丁から神楽坂通りに戻ります。ふたたび坂を上がっていくと毘沙門天を祀る善國寺が右手に現れます。もともと神楽坂はこのお寺さんの門前として栄え始めたそうです。お堂の両脇に立つ石像が狛犬ではなく虎であるところが特徴的です。

坂を挟んで善國寺の向かい側にある兵庫横丁に入ります。神楽坂の印象では石畳の道と黒板塀の料亭の建物という映像的なイメージが強いかと思います。この兵庫横丁はもっともその雰囲気が色濃い場所かもしれません。

細い路地が入り組み、両脇は高い塀で囲まれているのでちょっとこの先を進んでいいものか気後れするような雰囲気。おそらくごく普通の民家らしき建物もあります。あまりずかずかと遠慮せずにうろついたり写真を撮影するのもちょっと憚れる気がしました。騒がずにそっと、猫になった気分で道を進みます。
 
兵庫横丁の一角にかつて営業していた「和可菜」は数多くの文人や作家が投宿した料理旅館として有名でした。10年ほど前に惜しまれつつ廃業。そのあと隈研吾建築都市設計事務所が加わりリノベーションされたそうですが、いまはどのように活用されているのでしょうか。和可菜の看板は残されたままなのですが、気になります。

この日は芸者小道の途中に建つ鳥茶屋さんで昼食をいただきました。ランチの名物の親子丼です。鶏肉とトロトロの玉子と出汁のバランスが絶妙だなーという印象。どれかひとつが突出せずにそれぞれの良さをお互いに引き立てている感じでしょうか。特別に個性的ではありませんがハイクオリティ。飽きることなくいつも美味しくいただけます。個人的にはその日次第(?)のデザートも嬉しいです。
 
神楽坂は現在でも続く花街。いまも30人ほどの芸伎さんがいらっしゃるそうです。以前、神楽坂の近くで働いていたことがあり、神楽坂へはランチや夕食に立ち寄ることもたまに。残業続きで疲れたときは銭湯の熱海湯さん(お湯が熱い! さすが下町?)でひと風呂あびてから食事を軽くとってから帰宅するようなことも何度かありました。再開発の波がどこにも打ち寄せて古い町並みが消えていく昨今ですが、同じく新宿の荒木町などともに今後もこの街の雰囲気が残されていくといいなーと感慨にふけて神楽坂を後にしました。
 
<概要>
神楽坂通り (かぐらざかどおり)
所在地: 東京都新宿区
早稲田通りの一部で、大久保通りとの神楽坂上交差点から外堀通りとの神楽坂下交差点までの坂路区間が新宿区により呼称されている。
地名の由来は近辺にある神社から神楽が聞こえてきたから、この地に神楽殿があったからなど諸説あり。
日曜日と休日の正午から19時までは歩行者天国になる。
アクセス:
JR・東京メトロ・都営地下鉄「飯田橋駅」、都営地下鉄大江戸線「牛込神楽坂駅」または東京メトロ東西線「神楽坂駅」
 
(2025/03/05 上町嵩広)