『パンピーポー』パンを楽しむ人々のための店[新河岸]
惜しまれつつ閉店した新河岸の人気店「Boulanger Lunettes(ブーランジェ リュネット)」。その店主・若松大輔さんの店が、2022年9月に『パンピーポー』として帰ってきた。
「ひと区切りしたけれど、やっぱりまたパンをやりたくなって」。
そんな若松さんの焼くパンの特徴は、なんといっても埼玉県産小麦のハナマンテンだ。2008年頃から埼玉での栽培が始まった品種で、若松さんはハナマンテン使いの第一人者として知られるパン職人。
「ひとくせもふたくせもある品種で、最初は全然おいしく焼けませんでした」。
試行錯誤を経て、とある製法がはまり、「こんなにおいしいのか!」と驚くパンが完成。現在、この店で焼く多くのパンにハナマンテンを使っており、噛むほどに広がる独特のうまみと香ばしさを味わえる。
「買って帰ったパンで、ぜひ遊んでもらいたいです。シンプルなパンに色々なおかずをのせたりつけたり、思い思いの食べ方で食卓が楽しくなるかなって」。
自身も旅先で見つけた食材やワインと組み合わせた食事を作るという若松さん。その提案は徐々に浸透し、パンのある食卓をSNSに上げてくれるお客さんも。パンを楽しむ“パンピーポー”は、ここを起点にますます増えていくだろう。
『パンピーポー』店舗詳細
『Bäckerei Terutake (ベッカライ テルタケ)』初心者でも挑戦しやすいドイツパン[ふじみ野]
四国お遍路でパン屋開業を決意した鳥飼照剛(とりがい てるたけ)さん。シェフの言葉に共感し直接手紙を書いたという世田谷の名店『ベッカライブロートハイム』での修業を経て、2018年に地元でオープンした。ショーウィンドウの中にはパンそれぞれの特徴が書き添えられ、食べ方の説明書も渡してくれる。どっしりとした伝統的なライ麦パン・プンパニッケルはクセになる味。お客さんの話にヒントを得たラスクなど焼き菓子も並ぶ。
『Bäckerei Terutake 』店舗詳細
『ベーカリークレープ』懐かしさも驚きもある[新河岸]
1978年開業の老舗が2021年に現在の場所へ移転、その頃から2代目の野口健さんに代替わりした。店内の入り口側の棚に先代、奥の棚に野口さん考案のメニューが並び、昔ながらの顔ぶれからハード系まで勢揃い。
「おいしいだけではなく、衝撃があるものを目指しています」と野口さん。話題の生ドーナツをパン職人としてアレンジするなど、得た情報を自身で咀嚼し形にしているというパンは、どれも記憶に残る味だ。
『ベーカリークレープ』店舗詳細
『ベーカリーゴトー』地元に寄り添い、毎日を支える[ふじみ野]
「食に関わる仕事をしたくて」と開店のきっかけを話す店主の後藤昭哉さん。脱サラし2軒のベーカリーで修業した後、2010年にこの店をオープンした。
お客さんからのリクエストもあり、ハード系や自家製酵母を使ったものが増えてきたという。「毎日食べる、基本のパンを作りたい」と話すように、食パンやフランスパンは香り高くも食べ飽きない味。具材も、鉄板の組み合わせと絶妙なバランスがくせになる。
『ベーカリーゴトー』店舗詳細
『ベーカリーオモシェ』創意工夫が光る、予想できない味[新河岸]
常連さんが入店早々「あ、知らないパンがある!」とうれしそうな声を上げる。ずらりと並ぶパン達は、生地や具材の組み合わせが斬新でひとひねり効いたものばかり。店主・井上大輔さんの出身地である山形県の方言で「おもしろい」を意味する店名通りのラインナップだ。
「経験は多くないけれど、だからこそアイデアで勝負したいんです」と井上さん。今日はどんなパンがあるかな?
『ベーカリーオモシェ』店舗詳細
取材・文=中村こより 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2023年10月号より