初夏は雹に要注意の季節。その理由は?

「雹」というと、どんな季節に多いイメージがあるでしょうか?

雪のように白くて冷たい印象から、冬に降りやすいものだと思われるかもしれません。しかし、雹は夏の季語としても知られているとおり、暖かくなる初夏に多い現象です。

そもそも、雹とは、雲の中で成長した氷の塊のことです。霰(あられ)も氷の塊ですが、違いは大きさです。直径5㎜未満だと「霰」、5㎜以上になると「雹」と呼ばれます。

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雹は発達した積乱雲から降ります。

積乱雲は、空の高いところまでモクモクと盛り上がった雲で、巨大な綿菓子のような見た目をしています。夏が近づいて日差しによって地上の気温が高くなり始めると、上昇気流が強まり積乱雲が発生しやすくなります。

この積乱雲の中で、激しい上昇気流があると、雲をつくる氷の粒は周りの雲粒などとぶつかり合って大きな氷の塊に成長します。やがて上昇気流が支えきれなくなるほど大きく成長したら、地上に落下します。これが雹のできる仕組みです。

暖かくなると雲が発達しやすくなる。
暖かくなると雲が発達しやすくなる。

暑くなると積乱雲が発生しやすくなるなら、初夏よりも真夏の方が雹は多いのではないかと思われるかもしれません。

ところが、真夏は上空の気温が他の季節より高いため、雲の中で氷の粒が成長することは難しく、雹は少なくなります。また、冬など寒い季節は、雲が発達しにくいため、あまり降りません。

発達した積乱雲は雹をもたらすことも(写真=気象庁)。
発達した積乱雲は雹をもたらすことも(写真=気象庁)。

過去にはかぼちゃほどの大きさの雹が降った!?

氷の塊とはいっても、傘を差せばしのげるものだろうと思われるかもしれませんが、過去には信じがたい大きさの雹が降ったことがありました。

今から100年ほど前、大正時代には埼玉県で「かぼちゃサイズの雹が落下した」という記録が残っているのです。かぼちゃ大の雹は、直径29.5㎝、重さ約3400gもあり、直撃したらひとたまりもありません。

近年でも、2019年の5月4日、大型連休期間中に東京・府中市で3~4㎝ほどの雹が降りました。ビニールハウスや車のボンネットにいくつも打ち付け、損害があった地域もあります。『東京競馬場』では雹の影響でレースが中止になりました。

2000年5月24日に千葉県に降ったピンポン玉大の雹(写真=熊谷地方気象台)。
2000年5月24日に千葉県に降ったピンポン玉大の雹(写真=熊谷地方気象台)。

雹は大きくなるほど、落下するスピードが速まります。直径5㎜で時速約36㎞、直径50㎜になると時速約120㎞にもなるのです。これだけの速さで氷の塊が直撃したら、かぼちゃクラスのものでなくても大変危険です。特に頭の小さなお子さんやペットと一緒に散歩する時は十分に注意してください。

雹に注意したい気象条件って?

雹は発達した積乱雲から降りますが、積乱雲は雷をもたらすこともあります。このため「雷注意報」が出されている時は、落雷と同時に雹にも注意が必要です。

また、「大気の状態が不安定」ということばにも注意してください。天気予報やニュースの中で、このキーワードが含まれている時は、積乱雲が発達するおそれがあるというメッセージです。

このほか「ゴロゴロと雷の音が聞こえきた」、「真っ黒な雲が近づいて、あたりが急に暗くなってきた」、「急に冷たい風が吹いてきた」などの積乱雲が近づくサインも覚えておくと役立ちます。

 

 

積乱雲が近づくサイン(出典=ウェザーマップ)。
積乱雲が近づくサイン(出典=ウェザーマップ)。
暗い雲が見えたら急な雨に注意。
暗い雲が見えたら急な雨に注意。

お散歩中に突然、雹が降ってきたら、とにかくすぐに頑丈な建物の中に避難してください。どうしても近くに頑丈な建物がない場合は、頭をカバンや上着などで守ることが大事です。

最近は小さなバッグやスマホショルダーだけ持ってお散歩をする人も多いかもしれません。いざという時は、近くにある段ボールやごみ箱のふたなど何でもよいので頭を守ってください。

雹や落雷、急な雨など天気の急変に注意をして安全にお散歩を楽しみましょう!

 

文=片山美紀 写真=写真AC、気象庁、熊谷地方気象台、ウェザーマップ
参考
・熊谷地方気象台 かぼちゃの大きさの雹(ひょう)について
https://www.jma-net.go.jp/kumagaya/shosai/chishiki/hyou.html
・広島市江波山気象館 「ひょう」(雹)に注意
https://www.ebayama.jp/merumaga/20060502.html