おいしいだけではない、こころに響く“音”があるお店
ラーメン激戦区といわれる北千住。ラーメン好きにとっては、おいしいラーメン店が多数存在する夢の街だ。今回訪問するのは北千住駅から徒歩5分のところにある『麺屋 音』。
店内に入ると、スタッフが明るい声と笑顔で迎えてくれる。左には食券機。正面には厨房とカウンター席、奥にはテーブル席が並ぶ。
お話を伺ったのはオーナーの原直樹さん。もともとはIT系の企業でサラリーマンをしていたそう。
「お客さまの癒やしになるような仕事がしたい、お客さまの声を直接聞けるような仕事がしたいと思い、会社を辞めて運送会社で働き、開店資金を貯めました」と原さん。その後、居酒屋で飲食の仕事を覚えて2003年に亀有でつけ麺店を開業、『麺屋 音』は2013年に開店した。
おいしいのは当たり前。原さんが大切にしているのはお客さまにラーメンのおいしさ以上の満足感を感じていただくこと。たとえば、席に座ったときに出されるのは居酒屋などで出される布タオル製のおしぼり。ラーメン店ではなかなかないサービスだが、このおしぼりを出されるとちょっとうれしい。
煮干しと鶏白湯のダブルスープの旨味と充実したトッピングの絶品中華そばをいただく
それでは原さんおすすめの特製濃厚煮干しそば1100円を注文。九十九里産の大型で油の少ない最高級のカタクチイワシの煮干しをふんだんに使っているそう。うーん、出来上がりが待ちどおしい!
5~6分で注文した一杯がテーブルに届く。見ただけでわかる濃厚スープに驚く。まずは、スープを一口。おっ、かなりしっかりとした煮干しの濃厚な味だが、苦みもえぐみもほとんど感じない。
「煮干しと鶏白湯のダブルスープなんです。鶏白湯スープが煮干しのやえぐみを消すので、煮干しの旨味だけを感じることができるんです」と原さん。
麺は自家製。低加水のストレート中細麺だ。低加水ならではの歯応えのある麺がスープとしっかり絡み合い、煮干しの旨味を口の中に運んでくれる。さっと広がる柚皮の香りも煮干しの味わいを引き立てている。
しっかりとした味付けのバラ肉チャーシューは、ほぐしチャーシューと巻きチャーシューの2種類。炙っているので、香ばしい風味も楽しめる。
「製麺やスープ、トッピングの調理はすべて北千住にある自社の工場で行っています。メンマの味付けも自社でやっているんです。」と原さん。
味変でおすすめなのが粒花山椒。ミルで挽きたてを振りかけるので山椒の香りが際立ち、煮干しの味わいに深い風味が加わる。
煮干しの味は濃厚なのにあっさりしているので、つい、つるつると食べ進んでしまうが、ここはちょっと我慢して、つぎのお楽しみのために具材とスープを残しておこう。
和え玉を追加して煮干しスープの旨味を最後までいただく
濃厚煮干しそばのアレンジとして原さんにすすめていただいたのが和え玉250円。「和え玉とは、味のついた替え玉のことです。ライス追加で雑炊も人気なんですが、煮干しそばはスープが濃厚なんで、和え玉の方が旨味を味わえるんです」とのこと。
もう1つの人気ラーメンである特製濃厚鶏塩そば1100円はあっさり系なので、ご飯にしっかりとスープの旨味を吸わせて雑炊にするのがおすすめだそう。
和え玉は味がついているので、そのまま混ぜ麺風にいただくのもいいし、替え玉としてスープに入れてもいいとのこと。まずはそのままでいただいてみた。混ぜて一口いただくと、ねぎと玉ねぎの甘み、煮干しの粉の味が混ざりあった味わいがストレートに口の中に広がる。
半分ほど食べたら残してある煮干しそばのスープへ和え玉を投入! しっかりとからめると、濃厚味付き替え玉そばのできあがり。追加された煮干しの粉でスープの旨味がさらに深まっていく。
濃厚だが煮干しの苦みやえぐみのないマイルドなスープ、スープと相性のいい低加水麺、こだわりの詰まったトッピング、煮干しスープを最後まで味わえる和え玉という、すべてに隙のない『麺屋 音』の特製濃厚煮干しそば。
食べ終わった瞬間に、また食べたいと思う、絶品の一杯でした。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎