温かなランプの光がほっと落ち着かせる。洞窟をイメージしたダイニングカフェ
地下鉄恵比寿駅4番出口から徒歩2分、駒沢通りから一本入った路地の雑居ビルに『cafe&dining nurikabe』がある。ビルにはエレベーターがなく階段を昇っていく必要があるが、おいしいものを食べる前のエクササイズと思えばなんてことはない。
上階になるにつれてどんどん呼吸が荒くなるが、各階の踊り場に店のインフォメーションやちょっとしたコメントが書かれており、もうすぐだと思うと頑張れる。
店に着いたのはランチ終了間際。まどろみの空気に包まれた店内は穏やかな午後の風景だ。女子大生のグループが、溶けたアイスコーヒーの氷をつつきながらおしゃべりにふけっていた。学生時代、こうやって何時間も話しができる喫茶店が貴重だったな……、なんて考えていたら、ディナーの仕込みを始めていた店長の福地進さんが対応してくれた。
2014年10月にオープンしたこの店。まずは『nurikabe』という店名の由来を聞いてみた。
「社長から聞いたところによると、うちの店の内装は洞窟をイメージしていて、洞窟を英語で“cave(ケイブ)”といい、オープン時にスタッフみんなで壁を塗ったので“塗りケイブ”となり、それを文字って“nurikabe(ヌリカベ)”になったそうです(笑)」。
よく見ると壁が切り出した岩窟のようにザラザラとした質感になっている。薄暗い空間に柔らかい光のランプが灯っていて落ち着ける。
「ランチはナポリタンやオムライス、ポークジンジャーといった懐かし系のメニューを、イマっぽくアレンジして提供しています」。
ご飯、卵、ソースまでみ〜んな真っ白!トリュフが香る白いオムライス
カウンターに案内され、ランチメニューを選ぶ。定番人気は岩手県産銘柄 岩中豚の肉厚ポークジンジャー、nurikabe特製“逆”アルデンテのナポリタン、そしてトリュフ香る“白い”オムライスだ。そのほかスパゲティやご飯もののメニューも揃う。
「けっこうボリュームがあるので、平日のランチは近所に勤める男性の方も多いんですよ」と福地さん。
真っ先に興味を惹かれたトリュフ香る“白い”オムライス1400円を注文した。昭和のオムライスは、黄色い卵に真っ赤なケチャップなのだが、令和になったら白く進化するのか。どんな味なのか楽しみだ。
土台のバターライスには赤ワインとシーズニングソースを煮詰めたものとオニオンソテーを混ぜ込んでいる。卵を焼く前にソースの準備。サワークリーム、生クリーム、醤油などを合わせたもので濃厚なテイストだ。
調理をしながら福地さんがこう語る。「最初は黄色い卵とデミグラスソースのオムライスだったんですよ。それが2018、2019年ごろ“白い○○”みたいな食べ物が流行っていて、ちょうど白い卵があるらしいからやってみようということで誕生したのがこのオムライスなんです」。
ふわっふわの白い卵だけで食べると淡白でクセがなく、主張の強いご飯や濃厚な生クリームソースをつなぐまとめ役になっている。学校で例えるなら口数は少ないが、やるときゃやる学級委員長とでも言おうか。
一方、個性が際立つ豚肩ロースの白ワイン煮は、ホロホロと柔らかく、脂身までトロトロ〜。ミルキーな要素が強いオムライスに、ワインがふんわり香る豚肉は味と食感に変化をくれる。
また、サラダのドレッシングも手作り。この日は、はちみつとマスタードのドレッシング。福地さんは、「季節の食材を取り入れています。今日はサツマイモに合うドレッシングにしました」と語る。
スイーツの名物は、香るチーズケーキ。店頭でお土産用も販売中!
『cafe&dining nurikabe』では、2019年に登場したスイーツが話題を呼んでいる。平日はもちろんのこと、土、日、祝日は女の子たちがこぞって店に押しかける。目指してくるのは目の前で仕上げをしてくれる香るチーズケーキだ。
福地さんは「下はベイクド、上はレアになっているチーズケーキで、お客様の目の前でブラウンシュガーをかけ、バーナーで炙って提供しています。シュガーがキャラメリゼされた香りと、チーズケーキの中に入っているバニラビーンズやレモンの甘くさわやかな香りがするんですよ」と解説してくれた。定番はオリジナルと宇治抹茶、加えて季節限定メニューがあり、取材当日はお芋が用意されていた。
お腹の余地がゆるすならオーダーしたかったけれど、カワイイふりしてけっこうボリューミーだった白いオムライス。今日は諦めるかと思いつつレジへ向かうと、お土産用があるではないか!
バーナーでなくても、トースターで軽くチンでも可能だ。ランチからデザートまで至れり尽くせりの『cafe&dining nurikabe』。まったり過ごしたい恵比寿の昼下がりにはぴったりの店である。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢