散歩中の見学も楽しい博物館
池袋の「造幣局東京支局」の移転により、さいたま新都心に2016年に開局した『造幣局さいたま支局』。新都心の駅付近からは、デカデカと「造幣局」と書かれた建物が見えるため、存在が気になっていた人も多いはずだ。
施設内には自由見学できる『造幣さいたま博物館』もあり、貨幣セットや各種おみやげも販売。隣接する製造工場もガラス張りの通路から見学可能で、実は散歩中に立ち寄っても楽しい施設なのだ!
お金の山を目の前に大興奮
工場見学→博物館の順で巡る取材では、まず「製造途中のお金」を見られて興奮!
上写真の金属は5円玉の模様がつく前のもの(円形=えんぎょう)。ツルッツルで金ピカだ。磨かれた円形がジャラジャラ出てくるさまを目にしたときは、カジノで大当たりしたような錯覚に襲われた。ちなみに新500円貨幣を造っている日もあるが、何がどこまで見られるかはタイミング次第。
なお、さいたま支局が主に製造しているのは通常の貨幣ではなく、収集家向けの「プルーフ貨幣」。より鮮明な模様と、半永久的に続く美しい輝きが特徴で、職員が1枚ごとに圧印と目視検査を繰り返す様子を見て、「ここまで手間をかけるのか!」と驚いた。同じく工場内で行われる勲章の製造も職人の手作業が多め。「現代の名工」による作業も見ることができた!
博物館内では、1枚10万円の記念貨幣や、江戸時代の大判、きらびやかな勲章などにまた興奮。勲章の受章者の面々を見て「自分は縁がなさそう」と落ち込んだが、職員の方が「公益のために500万円以上の私財を寄付をすれば紺綬褒章の対象になりますよ」と教えてくれた。
「なら自分も可能性がある」と気を取り直し(完全に錯覚)、帰りには館内のショップで600円(取材当時)の「造幣せんべい」を購入。ちなみに工場見学も博物館の入館も料金は無料だ。お金に関する施設なのに、お金をかけずに楽しめるのも『造幣さいたま博物館』の魅力なのだ。
博物館ゾーン
貨幣の製造工程や精巧な製造技術、歴史を学べるほか、古銭から現代の記念貨幣までさまざまな貨幣を展示。1945年に造られたものの粉砕処分された幻の「陶貨幣」など珍しいものも多い。地方自治法施行60周年記念貨幣やアニメキャラクターの貨幣セットは見た目もカラフルだ。勲章や国民栄誉賞の盾も展示する。手持ちの貨幣の摩耗・劣化具合を診断できる「貨幣の健康診断機」も楽しい!
工場見学ゾーン
博物館休館日を除く平日の開館時間には、工場も見学可能。さいたま支局が製造するのは主にプルーフ貨幣。担当工程は円形の洗浄、模様やギザをつける圧印と検査、計数・袋詰めなどだ。そして勲章の製造工程はより手作業が多く、釉薬(ゆうやく)を盛り付けて焼き付ける七宝の作業も見られる。なお12時~12時45分は昼休み。業務都合で見学不可の日もあるので注意だ。
『造幣さいたま博物館(造幣局さいたま支局)』詳細
取材・文=古澤誠一郎 撮影=山出高士
『散歩の達人』2022年3月号より