西荻窪に読書のための場がオープン

西荻窪駅から上井草方面へ北進すること約12分。女子大通り沿いに、レンガ調のレトロな外観の集合住宅が見えてくる。その建物の半地下にあたる部分で、ひっそりと営業を行っているのが『fuzkue 西荻窪』だ。隠れ家風な雰囲気漂うこの店のドアを開けると、随所に木の温もりを感じられる空間が広がる。

この店は、店主の酒井正太さんがフランチャイズというかたちでオープンさせた店である。きっかけは、書店経営をしたいと考えていた酒井さんが『fuzkue』創業者である阿久津隆さんの著書『本の読める場所を求めて』と出合ったことだった。その本につづられた『fuzkue』開業の経緯や阿久津さんの考えなどに共感。当時、酒井さんは阿久津さんと一切面識がなかったが、自身の想いを本人に届けたことで、学生時代に古本を買うためによく訪れ、親しみを持っていた西荻窪での開業がかなったという。

既存の店舗と比べて、店の仕組みやルールなど営業スタイルの違いはないながらも、本棚に並ぶ本のセレクトをはじめ、内装やドリンクメニューに酒井さんの趣向をうかがい知ることができる。

内装を手掛けたのは、長野県諏訪市で建築建材のリサイクルショップを営む『リビルディングセンタージャパン』。彼らが取り扱う古材を活用してデザインされた店内は、都会にいながらもどこか自然を感じられるような落ち着いた空間となっている。カウンター席とソファ席、そして奥に隠れた特等席のような席と、気分に応じて選べる3タイプの座席が用意されている。『fuzkue 西荻窪』ならではの個性も感じられる内装だ。

読書のお供としてラインナップされたフード・ドリンクメニューも豊富。ドリンクはコーヒーや紅茶などのノンアルコールから、ビールやウイスキー、カクテルなどアルコール類も揃う。中でもラム酒は酒井さんが好きなお酒とあって、この店にしかない銘柄も揃えているようだ。また、自家製のシロップを使ったクラフトコーラなどのドリンクも、この店ならではのメニューとなっている。

ベイクドチーズケーキ550円、フヅクエ時間ブレンド(hot)770円。

フードは、スイーツやナッツなどの軽食から、定食やカレーなどしっかりと食べられる食事メニューまで用意。滞在時間や来店のタイミングに合わせて、お客さんが求めるものをしっかりとカバーしているのも人気の秘密なのだろう。

今回いただいたブレンドコーヒーは『fuzukue』オリジナルのブレンドで、三軒茶屋に本店を構える『OBSCURA COFFEE ROASTERS』の協力のもと作り上げたこだわりのコーヒーである。長時間滞在するお客さんが何杯でも飲めるよう、温度変化に伴って異なる表情を見せる味わいが特徴だという。

深みの中にさっぱり感も兼ね備え、チーズケーキとの相性も抜群だ。このブレンドコーヒーは、店頭でコーヒー豆とドリップバッグの販売も行っている。

読書に集中するために設けられた仕組み

一般的なカフェとは少々異なる独自の利用ルールを設けている同店。1号店のオープンから7年ほどが経ち、この店の利用方法などをすでにご存知の方もいるだろうが、ここからは簡単に利用方法について説明しようと思う。

先に触れたように、『fuzkue』は「本を読んで過ごすことに特化した店」である。そのため、ここでは会話はもちろんのこと、勉強やPC作業もNGとなっている。個々人が立てる作業音(ボールペンの使用音など)にも配慮し、集中して読書を楽しめる空間をみんなで作り上げていく意識が求められるのだ。

それだけ聞くと、少々窮屈に感じられるかもしれないが、この店はあくまで読書をするための場であることから、その目的で訪れる人にとっては最高の環境といえるはずだ。酒井さんは「同じ空間の中で同じことをしているというのは、見知らぬ人同士であっても、時に連帯感を感じられることがあります」と話す。

読書に集中できる場を提供するために、自由に使用できるスリッパやブランケットも用意。

そんな特別な時間を過ごせるこの店では、飲食のオーダーが必須ではないのも特徴だ。その代わり、席料というものを設けている。1時間以内の利用か、それ以上かで料金体系が異なっており、それぞれ飲食のオーダーに応じて席料が相殺されるような仕組みになっている。

初めて訪れる方は、ぜひ飲食メニューなども掲載されている小冊子にくまなく目を通していただければと思う(公式ホームページにも分かりやすい説明が掲載されている)。

ありそうでなかった読書に向き合う時間を提供してくれるカフェ。お気に入りの本を片手に、心ゆくまで読書を楽しんでみてはいかがだろうか?

『fuzkue 西荻窪』店舗詳細

住所:東京都杉並区善福寺1-2-1 シェモア西荻101号/営業時間:11:00~23:00/定休日:無/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩12分

取材・文・撮影=柿崎真英