京王線多摩動物公園駅からすぐ
さて、『京王れーるランド』へは当然京王線が便利! 最寄り駅となる多摩動物公園駅へは新宿から特急で30分ちょっとの高幡不動駅で京王動物園線に乗り換えて1駅。高幡不動駅で列車を待つと、なんとピンク色の列車が入ってきた! 動物園線には専用のラッピングをした車両が運行されており、乗るだけでワクワク度を増大させてくれる! 車内外には京王のオリジナルキャラクターの「けい太くん」をはじめ、たくさんの動物や仲間たちが出迎えてくれるぞ!
『京王れーるランド』のエントランスは多摩動物公園駅を降りてすぐ左手。右手には『多摩動物公園』、『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』があり、一大レジャー拠点となっていて、この3施設をハシゴして遊ぶファミリーも多いそうです。
改札を出る前の右手にはおむつ替えベッドや子ども用トイレを備えた綺麗なだれでもトイレも完備しているのも、遊びに行く前にはとっても嬉しいポイント。こうした施設は実際に子どもと出かけるようになって、その重要性とありがたさ……身を持って知るようになりました。
スケルトン仕様の自動改札機からいざ入館
さあ、いよいよ『京王れーるランド』に入りましょう! 今回館内を案内していただいたのは、『京王れーるランド』の主任 秋田賢一郎さん。長らく車掌さんとして京王線に乗務されていたお方です。
秋田さんと共に館内に入ると、目の前には本物の券売機と自動改札機! どちらも実際に駅で使用されていたものを移設してきています。自動改札機は一部分がスケルトン仕様に改造されており、中の仕組みを観察することができます。しかも、『京王れーるランド』は一日中入退館自由! 何度でも心ゆくまで自動改札機を通ることができちゃいます!
実車の京王バスも展示。降車ボタンは押し放題。
『京王れーるランド』は2階建ての本館と屋外展示場、そしてアネックスの3部構成。まずは本館1階を見ていきましょう。自動改札機を抜けるとちっちゃな京王バスが展示されています。こちらの小さいバスももちろん実車で、1996年から2012年まで活躍した「超低床小型バス日産ディーゼルRN210CSN」という車両。
コンパクトなので小道でも進んでいけるため、地域により密着した路線で活躍しました。車内に入ることもでき、運転席にも座れちゃうし、「降車ボタン」も押し放題!! これはちびっ子にはたまりません! いや、僕も小さい時から車内いろいろなところに取り付けられた降車ボタンを押すのが大好きだったので、僕もたまりません!!
なんか、「え、こんなところにもボタンついてるの!?」って場所見つけるの、楽しくないですか!?
バスの向かいにはHOゲージの「ジオラマ展示」。 京王線の各列車が沿線を再現したジオラマの中を走ります!見ているだけでも楽しいですが、1回100円で5分間実際に使用されていた運転台の機器を使って模型を自由に運転することもできます。
実車カットモデルを使った、雰囲気マシマシの体験コーナーもあるぞ
そして並ぶようにしてあるのが、「運転体験」シミュレータと「車掌体験」のコーナー。どちらも6000系のカットモデルが使用されているのですが、このふたつは元々ひとつの編成だったもの。運転体験シミュレータの「6722」は新宿方、車掌体験の「6772」は京王八王子方の先頭車で、6000系で最後まで現役で活躍していた編成なのです。晩年は4両編成で動物園線で活躍していました。
「車掌体験」では実際の乗務員室に入り、ドアスイッチを操作し、乗降ドアを開閉することができます!もちろん、安全対策が施されているので小さな子どもでも安心して遊べます!
そして、お待ちかね「運転体験」シミュレータです! 150インチのスクリーンに映し出された映像を見ながら、信号、標識、制限速度を守って6000系を運転していきます。
現在の京王線では車内信号方式(ATC)が採用されていますが、この6000系シミュレータは線路側に備え付けられている信号機に従って運転する、ATS時代の京王線を運転することができます。ちなみに『れーるランド』には、ほかにも小型の運転体験シミュレータがあり、こちらは井の頭線1000系と京王線8000系、9000系の運転台計3台があります。こちらはどれも現役車両ということでATCが採用されているので、異なる2つの保安システムで運転体験をすることが可能です。
6000系シミュレータは1回300円。初級〜上級の3つのレベルに分かれています。運転に自信がないという方も、大丈夫。ここにも京王線の運転を知り尽くしたレジェンド係員さんが、優しく丁寧に運転動作を教えてくれます。
今回僕が体験したのは「中級」。元運転士さんの鈴木さんのご指導のもと、6000系を操作していくと……なんと100点が出ましたー!!でもこれは僕がすごいのではなくて、鈴木さんのご指導の賜物です。
運転中も「ここが昔の調布駅の名残で」、「この標識で62キロくらいになるので、ここで加速を止めますよ」と、きめ細かく豆知識込みで運転を教えてくれます。使われている映像はATS時代に実際に使用されていた運転士さんの訓練用のシミュレータ映像と同等のものだそうです!
対応力試される! 鉄道好きも唸る「上級編」。
「上級」は実際に他社の運転士さんがやりにくることもあるほどの本格派。シチュエーションが5つに分かれており、夜や雨、ラッシュ時間帯など、よりリアルな条件が体験できます。中でもコアなファンを楽しませているのが「回生失効」が発生する点。
これはモーターを発電機にして架線に電気を戻しつつ、ブレーキをかける「回生ブレーキ」時に、電力が発生しすぎた際などに発生する事象で、若干制動距離が伸びてしまうんです。これが上級では唐突に起こるそうで、その対応力が試されます。
「回生失効があると聞いて関西からやってきたお客さまもいらっしゃいました」というほどファン心をくすぐっているそう。 『京王れーるランド』はどちらかと言えばちびっこ向けのイメージでしたが、大人でもがっつり楽しむことができます!
フォトスポットが本物!?
一番奥には5000系の前面部を使ったフォトスポットがあるのですが、ここで秋田さんがボソリと一言。
「これ、本物なんです」
たしかにリアルだし、これまで見てきた6000系やバスも本物なので、なにも不思議ではないのですが、続けて秋田さんが発した言葉に思わず驚愕!
「実はこのパーツは展示品でありつつ実際の部品ストックでして……運行中の5000系に何かがあってこの部品を使うことになったら、このフォトスポットはなくなります」
って、えーっ、マジですか!! 確かにリアルだし、5000系は現役最新鋭車両なので、実車のカットモデルとかではないと思ってましたが、まさか実際の部品ストックを展示しちゃうとは……こんなの聞いたことないですよ、『京王れーるランド』さん!
2階にあがるエレベーターにも遊び心
続いて本館2階に上がりましょう。ここでも秋田さんのアドバイスが。「エレベーターにも階段にもちょっとしたお楽しみ要素があるので、それぞれを使って行き来してみてくださいね!」ここでその内容を書いてしまうとネタバレしちゃうので、気になる方は実際に行って確かめてくださいね! エレベーターは「音」に注目ですよ!!
親子でニッコリのコーナー充実、本館2階
2階は京王線と井の頭線の車両で遊べる「プラレールで遊ぼう」コーナーと「アスれーるチック」、休憩コーナーがあります。2021年9月現在、2階の両コーナーは整理券方式での入れ替え制になっています。整理券は1階のインフォメーションでもらうことができ、プラレールは40分、アスれーるは20分ずつの区分になっています。
どちらも無料で楽しめるということもあり、ちびっこたちに大人気。
「プラレールで遊ぼう」「アスれーるチック」「運転体験」はそれぞれ整理券制なので、入館したらまずインフォメーションで整理券をもらうのが吉。
「アスれーるチック」の奥には京王線にまつわる歴代のヘッドマークや制服などが展示されている「コレクションギャラリー」があり、こちらも見逃せません!! お手洗いや授乳スペースも2階にあり、男性側のトイレにもおむつ替え向けのベビーベッドが備えられています。
往年の名車が勢揃いの屋外展示場。ミニ電車にも乗車できるぞ
本館を後にして、やってきたのが屋外展示スペース。こちらには京王電鉄を支えてきた往年の名車がずらりと並んでいます。展示車両はデハ6400形(6000系)、クハ3700形(井の頭線3000系)、クハ5700形(5000系)、デハ2010形(2010系)、デハ2400形(2400形)の5車種。
デハ6400形、クハ3700形以外は車内に入ることもできます。展示中の5車種は京王電鉄からはすでに引退していますが、実はまだ運転されている形式もあるんです! 京王電鉄の5000系、2010系車両は全長が18mで、20mが主流のJRなどの車両に比べて若干小柄。これが、日本各地の中小私鉄のニーズにマッチして、全国で「第二の人生」を過ごしている車両が多いのが特徴なんです。富士急行に岳南鉄道、一畑電車など、多くの路線でまだまだ元気に活躍中で、銚子電鉄では製造から60年を迎える2000系も現役です。
そしてこの名車たちを取り囲むようにして走るのが1回100円で乗車できる「ミニ電車」。その時々で走行する列車が変わるのもユニークです。
さすが鉄道会社のミュージアムショップ。超本物志向グッズがぞろぞろ
さあ、最後にご紹介したいのが「アネックス」。こちらは「ミュージアムショップ」と7000系、8000系のカットモデルが展示されています。ミュージアムショップにはここでしか買えない商品が多く並び、特に人気なのは実際の運転士さんが業務用の時刻表に入れて使用する種別板(2000円税込)と車内路線図(800円税込)。
路線図は海側と山側の2種類があるこだわりよう。一見同じように見えますが、取り付け位置によって新宿が右に来るか、左に来るかが変わるため、2種類あるんです! なお、山側の方が若干人気とのこと。デザインは本物と全く一緒で持ち帰りに便利な専用のビニール袋も販売されています。これ持って京王線に乗って帰ったら、ちょっとシビれますね。
京王れーるランドからメッセージ
帰る前に秋田さんに改めて『京王れーるランドの魅力』について伺ってみた。
「小さなお子さまから京王電鉄を愛してくださるファンの方まで、お楽しみいただけるコンテンツが魅力かなと感じています。ぜひ小さなお子さまには、車掌体験やシミュレータで京王線の乗務員になりきって遊んでほしいですね(笑)。ご家族で来られて、多摩動物公園など周辺施設と合わせてお楽しみになられる方も多いです。平日は館内も比較的過ごしやすいですし、大人子ども(3歳以上)ペアでご利用いただける『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>との平日限定共通チケット(2400円)』も発売しています。イベントとして展示車両にヘッドマークを付けたりと、これからもいろいろ企画していきますのでお楽しみに!」
実は秋田さん、車掌として5000系の定期列車最終日に運良く乗務されていたそうで、5000系を筆頭に京王愛がかなり深いお方。これまでも、京王電鉄の鉄道系イベントを数々企画されてきた方だけに、これからの『京王れーるランド』の企画が楽しみすぎてしかたがない!
取材・撮影・文=村上悠太