ブーム到来前の豚骨ラーメンをお店独自にアップグレード!
今では全国区になっている豚骨ラーメン。白濁した濃厚スープに細麺を組み合わせた九州の名物は1990年代ごろから各地で広まり一大ブームを巻き起こしたが、それよりも先に東京で豚骨ラーメンを出しているというお店があった。それが『ラーメン道楽』である。
「先代がこの場所に店を開いたのは1986年だったんですが、当時はラーメン専門店が少ない時代で。それでもここでお店を開くなら、ラーメンが流行ると考えたみたいです」と、『ラーメン道楽』の鮫洲本店の店長はこう答えてくれた。
しかし、『ラーメン道楽』のラーメンのメニューを見ると、九州のものとはまた違う。濃厚そうなスープは確かに豚骨ラーメンのそれだが、白濁したスープにどこか深みのある色合いをしているように思う。これが『ラーメン道楽』最大のこだわりと言えるスープである。
豚骨ラーメンを独自にアレンジした『ラーメン道楽』の豚骨スープだが、お店のポスターには「この豚骨、圧倒的にクセになる」という紹介がされている。果たしてそのスープの秘密とはどんなところにあるのだろうか?
毎日、厳選された豚骨を丸一日炊きこむ!
「『ラーメン道楽』の命」と店長さんが語ってくれたのはスープ。詳細をお伝えすることはできないが、相当な労力がかかるという。しかし店長さんは苦しい顔を見せずにこう話してくれた。
「手間暇はかかるけれど、僕たちはそれでもおいしいものを作ってお客様に届けたい。だから手間は惜しみたくないんですよ」
そんな思いから生まれたのがこの店の看板メニューである、道楽ラーメン950円だ。
まず、スープをひと口飲むと……豚骨ベースのラーメンとは思えないくらいにまろやかな味わい。豚骨特有の嫌なニオイもなければ、ギトギトとした脂っぽさも皆無。長時間かけてじっくり炊き込んだことで、フレッシュでクリーミーなスープが生まれた。
次に麺をすする。豚骨ラーメンよりも太く、同じ豚骨ラーメンから発展した横浜家系ラーメンの麺よりも細いというストレート麺は強い腰を保ちながらもスルスルと喉を通っていく。かん水を使わずに卵を使用したことで、スープのフレッシュさを阻害しない優しい味わいになった。
そして道楽ラーメンに盛られたトッピングも忘れられない。醤油ダレがじっくりとしみ込んだチャーシューは濃厚な旨味で存在感を発揮。そしてたっぷりと盛られたネギがうれしい。シャキシャキとした食感は麺とは違うもので、食べていてバリエーションが楽しめる。
「このネギはトッピングでも1番人気なんです。シャキシャキになるように仕上げているのと、最後にネギに特製のたれをかけて和えるんです。するとネギのおいしさが引き立っていいトッピングに変わるんです」
通常、ラーメン屋さんでのネギトッピングと言えば、ラー油などで和えてピリ辛になっていることが多いが、『ラーメン道楽』のネギはネギ特有の辛さが薄れ、むしろラーメンを引き立たせるものに。これなら子どもでも喜んで食べるというのが頷ける。
「一番いい状態でラーメンを食べて欲しいから」
「東京での豚骨ラーメン」を確立し、創業から2021年で35年が経過した『ラーメン道楽』。長い月日の営業により、常連のお客さんも数知れず。気が付けば親子二代、三代でやって来るファミリーもいるという。週末になるとテーブル席が用意された2階は家族連れでにぎわうという。
そんな人気に胡坐をかくことなく『ラーメン道楽』は日々進化。看板メニューの「道楽ラーメン」もより最上の味を求めて進化を繰り返してきたという。それと同時にお客さんへの感謝も忘れない。
「ラーメンを食べた時、スープが最後まで冷めなかったですよね? 実は『最後までスープをおいしく飲んでもらいたい』ということで、どんぶりをあらかじめ温めているんです。最後までじっくりとこの1杯を楽しんでもらえればうれしいです」
飽くなき探求心にお客さんへの尽きない想い……これがある限り、『ラーメン道楽』の進化はまだまだ続いていくことだろう。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌 弘