アドバイスをおさらい
ここで、新垣教授のアドバイスをおさらいしましょう。
- 「地図」と「現実の景色」を照合するとき、目印は2つ以上
- 地図もしくはストリートビューで予習
- 地図はまわしていい
- 地図の上に立っているイメージを持つ
- 東西南北は家に対応させて覚える
- グーグルマップの設定やデバイスの大きさを工夫する
- 視点を上に移動させ、街を俯瞰で見るイメージを持つ
※詳しくはこちら!
夫に話したら「それ、教えられなくても自然とやってた」と言われました。マウンティングか?
アドバイスを活かして迷わず歩けるか?
やってきたのはJR御茶ノ水駅。
集合場所に御茶ノ水駅を選んだのは担当編集の中村嬢ですが、実は私、このあたりは少し土地勘がありまして。というのも、通っていた専門学校が御茶ノ水だったんです。
ふふ、御茶ノ水でいいのかな? 難なく行けちゃうかもしれませんよ。
中村嬢と合流し、今日の目的地を知らされます。
目的地はここから徒歩10分の『みますや』という居酒屋。昼間から一杯やれるのかと思いきや、店の前がゴールだそう。
しかも、御茶ノ水じゃなくて淡路町駅の近くでした。ぜんぜん土地勘ないや。
新垣教授に教わったとおり、歩き始める前に地図を予習。経路検索のあとすぐにナビを開始せず、スタートからゴールまで、地図をざっと見ておきます。
道や目印をぜんぶ覚えるのは無理なので、本当にざっと見るだけですが、今まではそれすらしていませんでした。これ、レシピを最後まで読んでから料理に取り掛かったほうがスムーズにいくのと似ていますね。
過去の散歩チャレンジの結果、私はグーグルマップのナビ機能を使ったほうが迷いやすいようです。なので、今回はナビを使わず、俯瞰の地図で目的地を目指します。
最大の難関、はじめの一歩。
たった今地図を予習したのに、さっそく方向がわかりません。地図だけ見ていて、リアルの景色をまったく見ていませんでした。
地図によると、「薬局の前の通り」を進むよう。しかし、薬局が角にあるため、「薬局の前の通り」が2本あるんですね。どっちを行けばいいのやら……。
しかし、ここで新垣教授のアドバイスを思い出します。それは「地図と現実の景色を照合するとき、目印は2つ以上」というもの。
そっか、薬局だけを目印にしちゃダメなんだ。
地図を拡大してカレー屋さんを見つけ、薬局とカレー屋さんの位置関係から、進行方向を判断しました。
聖橋口へ移動し、ニコライ堂のほうへ歩きます。
地図によると、この先、カフェのある角で曲がります。つまり、カフェまでは道なりでいいんだな。
こんなふうに地図の「少し先」を見ながら歩くようになったのは、私にとって大きな変化。今までは現在地しか見ていませんでした……。
目印のカフェまで来ました。
ここで道路を渡るはずなのですが、現在地に合わせて地図をくるくる回しているうちに、どっちに渡ればいいのかわからなくなりました。目印が角にある場合、面している通りが2本あるので混乱します。
またもや「目印は2つ以上」という教えを思い出し、渡った先のビルの名称を見て判断しました。
この路地の突き当たりはダイニングバーのはず……と進むと、ありました。しかも看板に「卓球バー」とあります。楽しそう!
しかし、卓球バーに気をとられたせいか道を間違え、「あれ? 地図と違うぞ?」と卓球バーまで戻りました。
気づいたのですが、この卓球バーも角にあるんですよね。どうやら私は「角にある建物」を目印にしたとき、道を間違えやすいようです。
そのあとは広い道路に突き当たり、右にまっすぐ。
この写真、私は「外堀通り」の看板を見ているようですが、実際は看板に気づいていませんでした。なぜか目に入らないんですよね。
目印にしていたドミノピザの角を曲がると……
あった! 『みますや』です。
徒歩10分のところ、27分かかってしまいました。はじめの一歩をどっちに踏み出すかで悩んだのと、途中で2回迷いかけたせい。
……って、方向音痴ぜんぜん治ってなくない?
でも、私としてはすごく「知らない街の歩き方がわかってきた」実感があるんですよね。
その証拠に、スタート地点の御茶ノ水駅からここまでの道順を空中に描き、
「……ということは、あっちが御茶ノ水ですね?」
と指差したら、合っていました!
地図を描くために、来た道を記憶しながら歩いた成果です。たぶん思い込みですが、脳の使ったことのない部位が活性化している気がします。
地図を見ないで歩いたら、どうなる?
さて、ここからは地図を見ないで歩きます。
と言っても、中村嬢が先導してくれるので迷子になることはありません。人に連れられて歩いた場合、道は記憶できるのでしょうか?
行き先は御茶ノ水駅の近く、さんたつ編集部が入っているビルです。神保町の喫茶店に寄り道してから行くことに。まずは、『みますや』から靖国通りに出て、神保町を目指します。
この時点で、「あっちが御茶ノ水ですよね」と指差したら、「いえ、あっちです」と違う方向を示されました。スタートからずっと御茶ノ水を意識してたのに……。集中力が途切れたのかも。
神保町の純喫茶が多い通り。この辺は学生時代によく来ていたから、地図なしでも歩けます。
入ったのは、このあたりでは有名な老舗の純喫茶『さぼうる』。
忘れないうちにメモしようと、“御茶ノ水橋口→聖橋口→眼科→ニコライ堂……”と通ってきた目印を文字で書き出していたら、中村嬢に「よく覚えてますね!」と驚かれました。
へへへ。記憶力は悪くないんです。ただ、これらを図に描くとなると、まったく自信がありません。
さて、喫茶店を出たあとは御茶ノ水を目指します。神保町から御茶ノ水まで、「明大通り」なら地図を見なくても歩けるのですが、中村嬢は別の道を行きます。歩いたことあるような気もするけどわからない……。
取材時は12月で、まだイチョウの葉が残っていました。
「夏にここ通っても、街路樹がイチョウだって気づきませんでした」と中村嬢。
そういうことってあるよなぁ。私も、街路樹や季節の移ろいを気にかけるようになったのは最近の気がします。
横断歩道を渡り、細い道をしばらく歩いて左折。右側が高台になっていて、フェンス越しに学校のような建物が見えます。さらに歩くと……
急な石段。男坂というそうです。
ここで急に記憶が呼び起こされ、「ここって錦華公園の近くじゃないですか?」と言ったらそのとおりでした。錦華公園は学生時代によく缶チューハイを飲んだ公園です。
男坂を上りきるといきなり、自分がどこにいるのかわかりました。この道は……母校のある通りだ! なんていうか、脳内で映像の断片同士がつながった感じです。
「知ってる場所同士がつながると、街が広がりますよね」と中村嬢。今までそんな感覚になったことがないけれど、はじめてわかりました。これが土地勘というやつか……!
これ、楽しいかも。こんなふうに歩けたら、どの街にも愛着が湧きそうです。
母校の跡地。今は学校ではありません。
本当に余談ですが、この時期にここで別れ話を切り出されたことを思い出しました。校門前で話すことなくない?
この辺を歩いているといろいろな思い出がよみがえってきて、
「あそこのロッテリア、放課後に友達とよく行ってました」
「ここで犬を拾って交番に届けたことあります」
などと、どうでもいい話ばかりしていました。そういうエッセイも書きたいな。
ここまで来れば御茶ノ水駅はすぐ。さんたつ編集部のある建物も、御茶ノ水駅からまっすぐで非常にわかりやすい場所でした。
はたして地図は描けるのか?
無事に散歩を終え、地図描きチャレンジ!
まずは前半の、「地図を見ながら歩いた道」を描きます。御茶ノ水駅~『みますや』です。
ここまでは、なんとか描けました。
次は、後半の「地図を見ないで歩いた道」も入れて、全体を描いてみます。
……ダメだ!
『さぼうる』から男坂がどうしてもつながりません。景色は覚えてるのに、位置関係がわからない。
では、正解を見てみましょう。
おっ!
なんと、地図を見ながら歩いた前半部分はだいたい合ってます! だけど、何も見ずに歩いた後半はボロボロ。
総合的には50点くらいだと思うのですが……どうでしょう?
まとめ
はっきり言って、方向音痴が克服されつつあると感じます。
まだ道を間違えそうになるし、時間もかかるけど、目的地には到着できるようになりました!
一方で、「街を知る」「土地勘を得る」というのはまだまだ難しいですね。もっと街全体を把握できたら、街歩きの楽しみ方も変わってくるのかも……?
そんなわけで、次回は地図が大好きな“達人”に会いに行きます!
2020年も、この連載をよろしくお願いいたします。
文=吉玉サキ(@saki_yoshidama)