果物専門店『セキモト』とフルーツパーラー『プチモンド』
店長の関元さんは、果物専門店『セキモト』の2代目。初代である関元さんの父が、当時とても高級品だったバナナの専門店を開いたことが店の始まりだ。戦前から戦後と移り変わる時代の中、変わらずフルーツを扱ってきた。
戦後、フルーツの種類にも変化が訪れる。柿や桃などといった国産のフルーツだけでなく、グレープフルーツやパイナップルといった輸入品種が手に入るようになり、種類はどんどん増えていった。
そして約40年前。「フルーツパーラーをやりたかった」という関元さんは、東北新幹線の開業に伴う店舗の移転をきっかけに一念発起。果物専門店『セキモト』の中にフルーツパーラー『プチモンド』をオープン。赤羽唯一のフルーツパーラーは大人気となったのだ。
朝4時に起きて、毎日キラキラのフルーツを仕入れる
どちらの店にとっても要になるのは「おいしいフルーツ」。子供の頃からフルーツの目利きを叩き込まれたという関元さんは、毎日4時に起きて巣鴨の市場に向かい、実際に手にとって品質を確かめる。同じ素材でも日によって産地を変えたり、旬のものを仕入れられること、そして直接仕入れることで価格をリーズナブルに抑えられることがメリットだ。
「銀座とかだったら料金は倍くらいになるかもしれませんね」と関元さん。
店頭に並ぶフルーツは見るからにみずみずしく、そしてキラキラ輝いている。ああ、これを使ったスイーツは、さぞおいしいに違いない…。期待がふくらむ。
オーダーが入ってからカットするフルーツと手で立てるホイップクリーム
さて、満を持してオーダー。すぐにフルーツのカットが始まった。通常のパフェに入るフルーツとは一線を画す大きさに揃えられていく。オレンジのいい香りが漂った。と、そのとき。
おお。生クリームは手動で立てるんですね……。
「オーダーごとに作るから一回の分量は少量ですし、手で立てるほうがおいしくできるんですよ」とさらり。いくら少量ずつとはいえ、合計で毎日3リットル以上ホイップするという。それが電動泡立て器でないなんて……。あまりの驚きと素早い動作により、ホイップする現場を撮影できなかった。本当に悔やまれる。
いよいよ!フルーツのおいしさを味わうフルーツパフェ
先程カットされたフルーツがグラスの下にごろりと入っている。その上にアイスクリーム、そしてホイップクリーム、さらにフルーツがこんもり。カラフルなフルーツの色がアイスクリームやホイップクリームの白に映える。
こぼれ落ちそうに盛られたフルーツは約10種類で、仕入れによって毎日変化する。その日に食べごろのものを一番いい状態で味わえるのがうれしい。
グラスから落ちてきそうなので、ちょっと指で支えながらパイナップルをフォークで刺し、ホイップクリームといっしょにいただく。一口噛むと、パイナップルがじゅわっ!強い甘みと酸味、それでいてさわやかなみずみずしさ。同時にホイップクリームのふんわりやさしい甘さが交わる。生クリームは、45〜47%という乳脂肪分高めのものだが、思った以上に軽くなめらかだ。
じゅわっ。かりっ。しゃりっ。とろっ。
グラスを掘れば掘るほど出合えるフルーツは、さながら宝物のよう。見つけるヨロコビと、それぞれの食感と味がホイップクリームやアイスクリームと合わさるヨロコビ。鼻に抜けるフレッシュなさわやかさと甘みは、なんと贅沢なものだろうか。
定番のフルーツサンドはテイクアウトもおすすめ
定番のフルーツサンドはテイクアウトする人や、予約して取りに来る人も多く見られる人気商品だ。オーダーが入ってから作り始めるのはパフェと変わらないが、ホイップクリームを少し固めに立てるという。
作りたてのフルーツサンドは、しっとりした食パンとふんわりとしたホイップクリーム、そして食べやすい大きさにカットされたフルーツの味と食感の違いがとても楽しい。食パンの塩気でフルーツの甘味がさらに引き立つ。
フルーツのおいしさはもちろんのこと、なるべくリーズナブルな料金で、しゃれたフルーツパーラーを楽しんでもらいたい。そんな気持ちは、ガラス張りのしゃれた外観や、お冷に入ったレモン、白いシャツに黒いボウタイというシックな制服など、随所に感じられる。丁寧な手仕事が作ってきた長い歴史を感じる名店だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ