アート空間に生まれた一期一会の楽しい“ブレ”『BUoY Cafe』
コンクリートがむき出しの廃墟のような店内は、実はボウリング場跡地。2018年、ステージや稽古場、ギャラリーを備えたアート空間『BUoY』として生まれ変わった中の一部だ。だから店員さんも役者や作家などアートに関わる人が日替わりで店に立つ。「コンセプトは“ブレるカフェ”。人によって得意が違うから出すメニューも味も変わったりするんです」と店長の若藤さん。一期一会のブレを楽しみたい。
『BUoY Cafe』店舗詳細
ジュースと音楽でエナジー充塡『Juice Bar Rocket』
元々洋服の仕事をしていた高橋さんが、買い付けにニューヨーク通いを続けるうち、街角にあふれるジュースバーと音楽の魅力にノックアウト。本場の味にアレンジを加えたパワフルなジュースと、いかすヒップホップが流れるバーをオープン。一方で10代半ばからラッパーとして活動し、VIKN(ヴァイケン)の名で音楽活動も続けるツワモノ。
『Juice Bar Rocket』店舗詳細
さまざまな和文化に出合えるリノベカフェ『路地裏寺子屋 rojicoya』
壁や天井を取り払い、梁(はり)や柱を生かした日本茶カフェが2020年10月に開店。書や花で彩られ、着物姿のスタッフが客人をもてなしている。「千住は和文化の担い手が多く暮らす街なんです」とは、代表で書道家の米本芳佳さん。日本茶を扱う榎本龍晃さん、華道家の采女栖佳(うねめせいか)さんたちと日本文化を継承する活動をするなか、古民家を再生し、芸術家たちに貸す活動を行う「千住芸術村」と知り合った。拠点として借りた家屋でカフェを営む傍ら、妖怪バーに侍バー、落語会、ワークショップ、和楽器ライブなども催し、音が小路を伝って道行く人を誘惑。下校途中の子供たちも顔を出す敷居の低さ、心和む気楽さも相まって、和文化ファンを増やし続けている。
『路地裏寺子屋 rojicoya』店舗詳細
建物の来歴にじっくり思いを馳せる『喫茶 蔵』
大正12年に「大倉屋質店」として創業。帳場だった場所をカウンターにし、その中で和服姿の女将、この質屋の娘である大和田公子さんがコーヒーを淹れる様子は粋だ。常連客が多い時はとりとめもない話題に花が咲く。漏れ聞こえる会話に、こちらも心の中でうんうんと頷(うなず)いたり、感心したり、まるで落語でも聞きに来た気分。壁掛け時計や電話機など骨董品はどれもいただきものだそう。「私以外の古いものはみんな人からもらったの」なんて所々にオチがついて素敵。
『喫茶 蔵』店舗詳細
あえてカフェという肩の力が抜けた選択『cafe・わかば堂』
数人のグループで訪れ、楽しい時間をみんなで共有する。あるいは一人で訪れ、五感を稼働してじっくり味わう。幅広い客層を受け入れてくれる、それがカフェ。とはいえここのキッシュはしっかりしたレストラン級だ。ずっしりしたパイ生地は側面サクサクで、口の中でほろりと崩れる。ちなみに時折店内の建具を変えたり、ペンキを塗ったり、スタッフ自ら日曜大工を施すのだそう。だから親しみやすいのか。レストランではなく、カフェであってくれるのがうれしい。
『cafe・わかば堂』店舗詳細
自家焙煎店でマスター一家とコーヒー談義『Coffee Work Shop Shanty』
「同じマンデリンでも各自こだわりがあるので違う味に仕上がります」と、父娘で焙煎を行う宮本順一さんとあい子さん。順一さんは豆の野性味を生かし、あい子さんはキレのいい苦みが理想だ。「淹れる人の人柄も味に出る気がして」と展開すると、順一さんと並んでサイフォンを操る妻のふさ子さんも会話に参戦。味わい深く、かつ口当たりが軽いアチェをおかわりしてたっぷりおしゃべりしたい。正統派純喫茶ながら気取りがないのも千住流。
『Coffee Work Shop Shanty』店舗詳細
ここでしか飲めない自家焙煎珈琲『千住宿 珈琲物語』
北千住駅西口から駅前通りを進み、日光街道へ出る少し手前の右手にあるハッピーロード商店会にある、店内で焙煎するこだわりのコーヒーを提供する喫茶店。
お店に入ると店の奥の一角に焙煎機、そして、カウンターの後ろにずらりと並んだ約300客の有田焼のコーヒーカップに目を奪われる。焙煎全部手作業なので、マニュアルはないという。焙煎前と焙煎後に丁寧にピッキングを行い、その日の天候や豆の様子を見ながら火加減や焙煎時間を調整するそう。
『千住宿 珈琲物語』には、全部で6種類のオリジナルブレンドコーヒーがある。コーヒーの種類によって淹れ方も変えるという。お店の名前のついた“物語ブレンド”は、深煎りのしっかりとした苦みと同時にまろやかさも感じるコーヒー。サイドメニューのケーキも自家製だ。そして、カップも陶芸が趣味である店主の手作り。今では40客ほど店主作のカップが並んでいるそう。オリジナルのカップで、ここでしか飲めない1杯をぜひ堪能したい。
『千住宿 珈琲物語』店舗詳細
コーヒーはフルーツであることを実感できるコーヒー豆屋『マメココロ』
千住本町商店街の真ん中あたりにあるコーヒー豆屋さん。50種類以上ものコーヒーを生豆の状態で取りそろえている。お店に入るとまず、ぎっしりと並ぶ白いコーヒー豆に圧倒される。購入した豆はその場で焙煎。3~4分程度で焼きあがる。
店の奥にはカフェスペースがあり、コーヒーをゆっくり楽しむことができる。焙煎したてのオリジナルブレンドのドリップコーヒーが260円と、かなりリーズナブルなお値段だ。『マメココロ』のオリジナルブレンドコーヒーは、まろやかでやさしい苦み。お店で出しているカフェオレのベースもこのブレンドなんだそう。
オリジナルブレンドのメインはインドネシアの高級銘柄・ガヨマウンテン。あまり個性を出しすぎず誰もが飲みやすいコーヒーを目指して作られた、オープン当初から変わらない味だ。コーヒーの知識がまったくなくても、スタッフが教えてくれるので、ぜひ気軽に立ち寄りたい。
『マメココロ』店舗詳細
毎日飲みたくなるコーヒーとラテアート『SLOW JET COFFEE』
北千住駅から徒歩10分ちょっと、墨堤通り沿いにある『SLOW JET COFFEE』。ガレージを改修して建てられた店舗は天井が高く、正面はガラス張りでテラス席もあり、とにかく開放的でこの一角だけ欧米の街角のような雰囲気が漂う。店内には巨大な焙煎機が置かれ、毎日コーヒーの焙煎を行っている。
店内ではWi-Fiと電源が使えるため、パソコンを持ち込んで仕事をしている人の姿も見られる。長居しても全然気にならない、のんびりとした空気が流れている。
時間をかけて丁寧に淹れてくれるドリップコーヒーと、かわいいラテアートが人気。店長のコーヒーのこだわりは、「毎日飲みたくなる、おかわりしたくなる、飽きないコーヒー」を近隣の人に毎日淹れること。モーニングはコーヒーのおかわりが自由。安心してゆっくりコーヒーを飲める空間だ。
『SLOW JET COFFEE』店舗詳細
散歩の途中に立ち寄りたい荒川土手近くのカフェ『Organic Coffee Stand WAN』
JR北千住駅西口を出て北千住駅前通り沿いにアーケードが続くきたろーど1010を真っすぐ進み、日光街道(国道4号線)に突き当たったら右折して荒川方面へ。そのまま通り沿いを道なりに5~6分進んだ千住新橋のたもとに突然現れるおしゃれなカフェが『Organic Coffee Stand WAN』だ。
12オンスのカップでたっぷりと供されるコーヒーは、クイックコーヒーを除いてすべてオーダーを受けてから1杯ずつハンドドリップで淹れられる。北海道産の生クリームをたっぷり使用したこっくりと濃厚なクレミアソフトクリームは、店主こだわりのソフトクリーム。そのクレミアソフトクリームを使って作られるシェイクも絶品だ。地元の人はもちろん、荒川の土手を散歩する人やサイクリングの途中に立ち寄る人も多い。
オーガニックコーヒーやスペシャルティコーヒーまで、ほぼすべてのメニューがワンコインという驚きのコスパ。ソファーの置かれた居心地のいい店内で味わうのもいいが、テイクアウトして荒川の土手で楽しむのもありだ。
『Organic Coffee Stand WAN』店舗詳細
喧騒を離れた路地で27年続く正統派喫茶店。『炭火焙煎珈琲 利休』
店主の秋山千鶴子さんがこの店をオープンしたのは、今から27年前の1995年のこと。もともとは夫婦で米屋を営んでいたのだが、ご主人の病をきっかけに喫茶店に業種替えをすることにしたのだそうだ。しかし、喫茶店開業の3年前にご主人を亡くされ、千鶴子さんお一人で『利休』を始められた。
ヨーロッパ・アンティーク調の店内は、高級感あふれる雰囲気。なかでも圧巻は、カウンター奥の棚にずらりと並ぶハイブランドのコーヒーカップ。ウエッジウッド、マイセン、ミントンなどなど。それが今も現役で使われている。
さて、『利休』にはちょっと変わった名物がある。来店すると出される手作りの羊羹とゼリーのお通し(無料!)だ。「うちではお客様が来たらとりあえずお菓子をお出ししてるんです。これが結構評判良くて、これを食べに来てくださる方も多いんです」と千鶴子さん。来店してくれるお客様をおもてなしする心づくしのプチスイーツだ。
『炭火焙煎珈琲 利休』店舗詳細
かわいくて不思議な雰囲気のカフェでいただく絶品の紅茶と自家製スコーン『CAFÉ Kova Garden』
北千住駅西口から線路沿いを歩いて5~6分、千住警察の並びにある『CAFÉ Kova Garden』は、まるでおとぎ話の中から飛び出してきたような入り口のカフェ。そこだけ異空間のよう。
そっと扉を開くと、内側にあったのは、漆喰の壁に使い込まれた木のカウンターとテーブル、ところどころ色褪せた板張りの床、アンティークっぽいインテリアなど、まるでおとぎ話の中に迷い込んでしまったようなメルヘンな空間。
そんな店内で真っ先に目に入るのは、そこだけひときわ明るく照らされているカウンター奥の棚に並ぶ美しいカップとソーサーだ。20年前にこのカフェがオープンする前は、50年続いた陶器店だったという。その名残のこだわりのコレクション。この素敵なカップたちは飾りではなく、実際に使われているものだ。
ここでは、炭火焙煎コーヒーもいただけるが、日本紅茶協会認定ティーインストラクターでもある店主の小林千恵さんが淹れる格別な紅茶がいただける。日替わりで並ぶ自家製スコーンやケーキと一緒にぜひ、楽しみたい。
『CAFÉ Kova Garden』店舗詳細
取材・文=信藤舞子、京澤洋子・丸山美紀(アート・サプライ)、下里康子、高野ひろし、佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=内田年泰、京澤洋子・丸山美紀(アート・サプライ)、鈴木奈保子、オカダタカオ、高野尚人