日光街道を荒川に向かいお散歩気分でカフェまで

JR北千住駅西口を出て、北千住駅前通り沿いにアーケードが続くきたろーど1010を日光街道に向かって歩く。途中右手には、旧日光街道の千住宿がそのまま商店街になった「宿場町商店街」がある。ここには往時を偲ぶ古い商家も今なお残る。

北千住駅西口から千住駅前通りを望む。両側はアーケードが続くきたろーど1010(北千住西口美観商店街)。この通り沿いだけでもほかに3つの商店街の入り口がある。
北千住駅西口から千住駅前通りを望む。両側はアーケードが続くきたろーど1010(北千住西口美観商店街)。この通り沿いだけでもほかに3つの商店街の入り口がある。
宿場町商店街に残る横山住宅は、江戸時代から続く裕福な商家で地すき紙問屋を営んでいたという。江戸後期の建物で、足立区登録有形民俗文化財に指定されている。
宿場町商店街に残る横山住宅は、江戸時代から続く裕福な商家で地すき紙問屋を営んでいたという。江戸後期の建物で、足立区登録有形民俗文化財に指定されている。
千住駅前商店街の途中、このステキな眼科医院(現在は閉院)の部分だけアーケードが途切れる。おとぎ話の家のようなレトロな洋風建築にトキめいて思わずパチリ。
千住駅前商店街の途中、このステキな眼科医院(現在は閉院)の部分だけアーケードが途切れる。おとぎ話の家のようなレトロな洋風建築にトキめいて思わずパチリ。

駅からちょっと離れたカフェまでしばしお散歩気分。目に飛び込んでくるユニークな建物や商店を眺め歩くうち、いつの間にか『Organic Coffee Stand WAN』に辿り着く。駅からぶらぶらゆっくり歩いても15分ほどだろうか。ほどよい距離だ。

オーガニックコーヒーが毎日飲みたくて

住まいの引越しを機にこのカフェを始めたという店主は、もともと銀座でバーを営む。こだわりは、すべてがオーガニックコーヒーであること。

「コーヒーが好きで、自分で始めれば毎日オーガニックコーヒーが飲めると思って」と店主は笑う。

日光街道沿い、新千住大橋の手前の歩道橋のたもとにシンプルな外観のカフェが突然現れる。この店の先を真っすぐ進めば荒川の土手はすぐ。
日光街道沿い、新千住大橋の手前の歩道橋のたもとにシンプルな外観のカフェが突然現れる。この店の先を真っすぐ進めば荒川の土手はすぐ。
テイクアウト用の小窓。ここでコーヒーを買って荒川の土手で飲んだり、土手の散歩帰りに店内で休憩するお客さんも多いとか。
テイクアウト用の小窓。ここでコーヒーを買って荒川の土手で飲んだり、土手の散歩帰りに店内で休憩するお客さんも多いとか。

しかし、メニューに並ぶコーヒーもそのほかのラインナップも、そこに添えられた丁寧な添え書きも、これは自分が毎日飲みたいからではなく、カフェに来るお客さんにこそ気軽にオーガニックコーヒーを飲んでもらいからなのでは!? と筆者は思った。

なぜなら、どれも驚くほど安い。「ほぼ利益なしです」とまた店主は笑った。オーガニックコーヒー、スペシャルティコーヒー、フレッシュフルーツシェイクなどなど、どれもコスパ高すぎくんだ。

スペシャルティコーヒーも、収穫が1年に3日だけという幻のお茶も550円!
スペシャルティコーヒーも、収穫が1年に3日だけという幻のお茶も550円!

ペルーとクリミアソフトクリーム、バナナシェイクをオーダーする

12オンスのカップでたっぷりと提供される『Organic Coffee Stand WAN』のコーヒーは、クイックコーヒーを除いてすべてオーダーを受けてから1杯ずつハンドドリップで淹れられる。コーヒーを待つ間に漂う香りが心地よい。

ペルー550円。豆を天日と釜で乾燥させ、2度焙煎したペルー豆100%のハンドドリップコーヒーは、香りよくスッキリとした味わい。
ペルー550円。豆を天日と釜で乾燥させ、2度焙煎したペルー豆100%のハンドドリップコーヒーは、香りよくスッキリとした味わい。

スイーツ代わりに、北海道産生クリームをたっぷり使用したこっくりと濃厚なクレミアソフトクリームをコーヒーと一緒に。絶対クレミアと決めていたという店主こだわりのソフトクリームは、シェイクやホットドックにもなる。

クレミアソフトクリーム 550円。ラングドシャクッキー部分を食べる際はちょいとテクニックを要するが、サクサクとトロリの美食を愉しめる。
クレミアソフトクリーム 550円。ラングドシャクッキー部分を食べる際はちょいとテクニックを要するが、サクサクとトロリの美食を愉しめる。

そして、バナナシェイク。実はこれ、かなり人気だそうで店主のおすすめ。バナナまるまる1本と、牛乳とクレミアソフトクリームのみで作られている。なんと贅沢な。ほかにイチゴもあるが、こちらは凍らせたフレッシュイチゴで作るという。それも絶対おいしいに違いない。次回、飲もうと心に決めた。

バナナシェイク550円。フレッシュバナナの味がしっかりして濃厚なのになめらか。シェイクにありがちなひと口目の“かたッ!”がなく、最初からスムーズに吸い込める。
バナナシェイク550円。フレッシュバナナの味がしっかりして濃厚なのになめらか。シェイクにありがちなひと口目の“かたッ!”がなく、最初からスムーズに吸い込める。

宿場町千住のおしゃれで居心地いい現代版茶屋

駅前の商店街から外れた日光街道沿いにあるこのカフェを訪れるお客さんには、地元の人はもちろん、荒川を散歩する人やサイクリング途中に立ち寄る人が多いと店主。

それぞれがしばし休息し、また出発する。江戸時代の旅人が団子とお茶でワラジを休めたように。さながらここは、かつての宿場町千住の現代の茶屋みたいだ。

店主の高松ひとみさんと娘のこはくちゃん。今はひとみさんのおばさんがお店を切り盛りするが、母娘でお店に顔を出す。こはくちゃんは常連さんたちのアイドルだ。
店主の高松ひとみさんと娘のこはくちゃん。今はひとみさんのおばさんがお店を切り盛りするが、母娘でお店に顔を出す。こはくちゃんは常連さんたちのアイドルだ。
壁に飾られた写真はカメラマンである従妹の旦那さんの作品。子連れのお客さんのために、カウンター下に小さな子供用の椅子が置かれていた。母である店主の心遣い。
壁に飾られた写真はカメラマンである従妹の旦那さんの作品。子連れのお客さんのために、カウンター下に小さな子供用の椅子が置かれていた。母である店主の心遣い。

世界中を旅するひとみさんの従妹が内装をしたという店内には、海外から持ち帰ったインテリアが置かれ、旅した地で撮った写真が飾られている。この居心地のいい空間を、奇しくも旅人が作っていた。

ゆっくりくつろげるソファーで写真を眺めつつコーヒーを飲み、ちりばめられた旅の余韻の中にいるとつい長居がしたくなる。

コーヒーを持って荒川の土手へ。ドラマ「3年B組金八先生」のオープニングで金八先生が歩いた土手だ。
コーヒーを持って荒川の土手へ。ドラマ「3年B組金八先生」のオープニングで金八先生が歩いた土手だ。

しかし、旅の茶屋にそうそう長居するわけにはいかない。残りのコーヒーを持って散歩を続けることにした。そして再び、このカフェで休息をとりに戻るために。『Organic Coffee Stand WAN』はそんな気持ちになるカフェだ。

住所:東京都足立区千住5-1-12 1F/営業時間:9:00~18:00/定休日:火/アクセス:JR・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩9分

取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)