この味わい深さ手間をかけた証し『Rose & M』
タルトタタンは一日に数回、数を分けて焼くので、時間が合えば出来たてを食べられる。色濃くしっかりキャラメリゼされ、口の中を漂う甘み、酸味をサクサクのパイ生地、生クリームが増幅する。レモンケーキは国産レモンを手搾りし、果汁をたっぷり使用。爽やかな香りが鼻腔(びこう)を通り、目の前がパッと明るくなるよう。ショーケースには『佐藤洋菓子店』が間借り。「若い才能も応援したい」と店主の江口睦子さん。
『ROSE & M』店舗詳細
時代の栄枯盛衰を眺めてきた老舗『リスボン』
三鷹といえばはずせないこの店、純喫茶『リスボン』だ。昭和33年創業とその歴史は長く、親子2代にわたり営む。見逃せない「あなたのわがままに応える」というサービス、なんとトッピングの追加、サイズの大小など、できる限りのことを店主が叶えてくれるというのだからこれはうれしい。
サイフォンで丁寧に入れた王道の喫茶店の味ブレンドコーヒー、おともに注文したいモーニングやランチバスケットは創業当時のまま、据え置き価格。いつまでも純喫茶を愛して欲しいと願う心優しい店主の懐の深さが滲み出ている。
太宰ファンがはずせない古本カフェの先駆店『古本カフェ フォスフォレッセンス』
三鷹といえば太宰治のゆかりの地として名高い。そんな歴史のある街で、大の”太宰好き”という店主が一念発起して開業したのが、古本カフェ『フォスフォレッセンス』だ。
当時はまだあまりなかった「コーヒーを飲みながらゆっくりと本を読む」という豊かな経験が味わえる店ゆえ、全国から多くのファンが訪れる。必ず注文したいのは、太宰のイラストが愛らしい太宰ラテ。ぎっしり古書が山積みの店内には通称「太宰棚」と呼ばれる貴重な初版本が並ぶコーナーも。古書ビギナーから玄人まで太宰ワールドを濃厚に堪能できる。
厳選コーヒーに合わせて試行錯誤した、オリジナルケーキは至高『カフェシュヌルバルツ』
1階に店を構えるカフェが多いなか、あえてビルの2階に店をオープンするのは『カフェシュヌルバルツ』。人目につきにくい場所に広がる空間は、雑踏や喧騒から離れ、心地がよい。読書を楽しむ人、書き物をする人、時間を楽しむひとり客が多く訪れる。
店のおすすめはコーヒーメニュー。店主夫婦が日本の各地を旅して「これ」と厳選した複数のコーヒーを丁寧にドリップして淹れる。コーヒーに合うようにと、何度も試行錯誤して作り上げた自家製ケーキとの相性は抜群で、訪れる客の心地よさと長居を促している。
からだに優しい素材をたっぷり使ったメニューでホッと一息『yomo-羊毛-』
多くのカフェがあっても、女性が気軽にふらっと訪れるお店が少ない。暮らす街・三鷹にそんな思いを抱いていた店主が、自身の理想を描いて開店したのがここ『yomo-羊毛-』だ。ホッと一息つく夜カフェ時間も味わって欲しいと、昼の営業をメインに週に一度だけ夜の時間にも営業する。「なるべくからだによいものを」とこだわったオーガニックな素材で作るメニューは、ハッとするほどクセのない忘れられない味わいだ。
/定休日:日・祝/アクセス:JR三鷹駅から徒歩13分
憩いを求める女性の隠れ家『ちいさいパンカフェ よつば舎』
カフェはコーヒーが主役の店だけではない。ベーカリーカフェも外せないスポットだ。三鷹駅南口の裏路地にある『ちいさなパンカフェよつば舎』は、隠れ家ともいえる小さなお店。
一人で切り盛りする10席ほどの店内には、アルミフリーのベーキングパウダーや北海道産国産小麦、有機豆乳、ビーガン食材など、体に優しく自然な味わいのパンや焼菓子がぎっしりと並ぶ。鮮やかなパステルブルーが印象的な店舗は、つい足を伸ばして長居したくなる居心地の良いあたたかみのある雰囲気。数々の作家さんの雑貨もあちらこちらに点在し、手にとって眺める時間も楽しい。
ハンモックに寝そべれば、あっという間にリゾート気分『Cafe hammock』
日常を忘れたくなった人にぜひ足を伸ばして欲しい『Cafe hammock』。「大好きなアウトドアを取り入れた自由に遊べる変幻自在の空間を作りたい」と、店主がセルフビルドで作り上げたカフェは、入店すると無数のハンモックに迎えられる。
自家製のカレーやお粥といったフードメニューをはじめとして、産地を厳選して調達したコーヒーや抹茶、ほうじ茶などのドリンク、30種類以上揃うアルコールが魅力的。フードやドリンクを片手にハンモックに揺られる時間、仕事に読書にと、過ごす時間、訪れる人それぞれに自由な時間を堪能することができる。
繊細な伝統菓子からフランス文化を伝える 『Patisserie A.K Labo』
三鷹駅北口から徒歩18分と、駅からやや離れた距離にありながらも多くの客が集うのが知る人ぞ知るパティスリー&カフェ『Patisserie A.K Labo』だ。フランス菓子にこだわっている当店は、まるで海外のパティスリーのような雰囲気。古き良きフランス菓子の素朴な味わいはそのままに、遊び心のあるデザインをエッセンスとして加えて菓子を製造。ブリオッシュやクロワッサンには、現地産の発酵バターを使用するなど、異国の文化を伝えることを大切にしている。
サイフォンコーヒーに心躍る!自家焙煎珈琲店『ニンカフェ NING’S COFFEE』
中国北京で開店し、三鷹に場所を移してオープンした『ニンカフェ NING’S COFFEE』。
店主・長谷川夫妻の海外経験をもとに、「日本の文化」を意識して焙煎機は国産メーカーを使用。コーヒーはサイフォンにて抽出をし、コーヒー豆は厳選した8種類を用意、さらにシーズナルメニューも導入している。
今では珍しくなった日本の古き良きスタイルは、昔を懐かしむ客、新たな文化を興味深く思う客と、幅広い世代に受け入れられている。
珈琲のある「情景」を大切にしたロースタリー&カフェ『go café and coffee rostary』
珈琲店が少ないエリアに、新たにオープンした『go café and coffee rostary』は、注目したい1店。2階建ての店内は、1階は珈琲スタンド仕様、2階ではゆったりと席でくつろぎながら時を味わうことができる。
世界各国から厳選した珈琲豆は、常時10種類以上。ハンドソーティングで選別し、手廻しの直火式焙煎機で焙る豆は、それぞれに個性豊かな味わい。どれも口当たり爽やかでありながら、余韻が感じられるラインナップだ。
街の憩いの場として賑わうコーヒースタンド『Rowans coffee』
こちらも注目したいニューフェイスの1店。三鷹駅北口の三谷通り商店街の中にあるコーヒースタンド『Rowans coffee』だ。女性の店主Yukoさんが一人で店を切り盛りする店内は、ナチュラルなウッドテイストの内装に、明るく開放的な店構え。道をゆくご近所の人がふらりと訪れる姿が印象的だ。
店で提供するのは、尾山台の『AO COFFEE ROASTER』と共同開発したコーヒー。1杯1杯丁寧にハンドドリップで淹れる「ロワンズブレンド」のほか、コーヒースタンドらしい一品であるエスプレッソメニューが人気。
すべて手づくり、妥協しないメニューへのこだわり『フジヤコーヒー』
三鷹の地で10年ほどに渡って親しまれていたカフェ「横森珈琲」が、2022年10月に『フジヤコーヒー』と名前を変えた。新たな店主は、これまで「横森珈琲」で店長を務めていた藤谷奈都美さん。
再スタートをきったこの店は、物件はもちろん、これまで使用していた家具や機材などもそのまま引き継いでいる。また、「横森珈琲のいいところは踏襲しよう」という考えから、サービスの多くや店の雰囲気もそのままだ。
石川県金沢市の焙煎工場で製造されているコーヒーは一杯ずつ丁寧にハンドドリップで提供し、スイーツや料理メニューは小鉢の一品まですべて手作りにこだわる。
「今後はよりお客さんの声を聞きながら、目に見えないホスピタリティを充実させていきたいと思っています」と藤谷さん。
『フジヤコーヒー』店舗詳細
ペット同伴可のオアシス空間!『カフェ海猫山猫』
三鷹駅と吉祥寺駅のちょうど中間地点で、2019年に創業した『カフェ海猫山猫』。店主の堀薫さんは、夫である泰彰さんの建築設計事務所の移転を機に、このカフェをオープンした。
提供するのは、たっぷり野菜が摂れるオープンサンドやスムージー、玄米や野菜を使ったランチなど健康を考えたメニューが中心。そこには、エステティシャンの経験を持つ堀さんの美容や健康への関心が表れている。
また、独特の苦みとスモーキーな風味が特徴の山ブレンドと、華やかでほんのりフルーティーな風味の海ブレンドの2種類から選べるオリジナルブレンドも人気が高い。
2022年11月末からは、火曜と木曜(最終週のみ火曜と金曜)のみで夜営業もスタートし、昼夜を問わず訪れる人に充実した時間を与えている。
『カフェ海猫山猫』店舗詳細
三鷹の“コミュニティセンター”を目指す、ブルワリーカフェ『OGA BREWING CAFE』
三鷹駅から10分ほど歩いた場所にある連雀仲町商店街の一角で営業を行う『OGA BREWING CAFE』。味が変化しやすいビールを最高の状態で飲んでもらおうと、マイクロブルワリーを併設したカフェだ。
現在のようなカフェとしてリニューアルしたのは2019年のこと。それまで営んでいたバーから形態を変更した背景には、地域のコミュニティセンターを目指したいという店主の小笠原恵助さんの想いがあった。
欧米ではすでに、時間やビールを飲む・飲まないに関係なく、ブルワリーカフェが地元の人々の憩いの場として活用されている現状を知り、日本にもそのような文化を定着させたいと感じたと話す。そのため、この店にはビール以外のドリンクも用意し、いろんな人が利用できるようにしている。
『OGA BREWING CAFE』店舗詳細
レトロビルの一室に生まれたハイセンスなカフェ『319』
三鷹駅南口の一角に、2022年7月にオープンした『319』。築60年という歴史あるビルの一室には、どこか殺風景な印象を醸していた内廊下からは想像できないような洗練された空間が広がる。
フランスやベルギーなど海外各地から取り寄せた家具を中心に彩られた店内は、無国籍な雰囲気を表現しているという。「一見カフェが入っているか分からないようなところに、想像もしていなかった空間が広がっている……。そのギャップを表現できたらおもしろいなと思ったんです」と店長の伊藤さん。
そんな非日常を感じられる空間で楽しめるのが、丁寧に作られた料理とスイーツ、そしてドリンクだ。週末にはモーニングの提供も行っており、それを目当てに訪れるお客さんで朝から賑わいを見せている。
『319』店舗詳細
パーラーも併設する『果実店canvas 吉祥寺』で果物のおいしさを再発見
三鷹駅と吉祥寺駅の中間地点に2022年1月にオープンした『果実店canvas』。元和菓子職人の店主がいちご大福をきっかけに果物の魅力に惹かれ、代々木上原に開業した同名店の2号店だ。
店頭のショーケースには旬の果物のほか、きらびやかな断面が美しいサンドイッチが並ぶ。「果物が持つ本来の味わいを知ってもらいたい」と、店主の佐藤圭太さん。
日々市場に通うことで培った目利きに必要な知恵と情報を駆使して厳選された果物は、併設のパーラーでパフェやパンケーキなどイートイン限定のデザートとしても提供されている。果物それぞれが持つ色や、酸味・甘味といった味わいを活かしたデザートは、見た目にも美しく、まるで芸術品のようだ。
『果実店canvas 吉祥寺』店舗詳細
テイクアウトも!
知る人ぞ知る三鷹の隠れた焼き菓子の名店『焼き菓子co-ttie』
三鷹駅から少し離れた、住宅地に隣接する商店街で営業を行う『焼き菓子co-ttie(コティ)』は、地元の人のみならず、遠方にもファンが多い隠れた焼き菓子の名店。店主の小笠原朋子さんは、OLから製菓業界への転身を決意し、お菓子屋さんやレストランでの修業を経て、2008年にこの店をオープンした。
「着飾ってはいないんだけれども、しみじみ温もりのようなものを感じられる焼き菓子をお出ししたいなと思っています」と小笠原さん。
お客さんが二人も入ればいっぱいになってしまうような、こぢんまりとした店内には、看板商品のフィナンシェをはじめ、パウンドケーキやクッキー、季節の果物を使ったタルトなど、種類豊富なお菓子が並ぶ。
『焼き菓子co-ttie』店舗詳細
取材・文=信藤舞子、永見薫、柿崎真英 撮影=佐藤侑治、永見薫、柿崎真英