三鷹の老舗果実店が作る渾身(こんしん)の一皿『Café Ichifuji』【三鷹】
まもなく70周年の果実店『一富士』によるカフェ。目利きが選んだフルーツを、さらに食べ頃を見極めてとっておきの一皿に仕立てる。「プリン・ア・ラ・モードは、一枚のプレートのうえに果物屋さんがあるの」とうれしそうに語る、店主の田中眞紀子さん。素朴かつ品の良いプリンが、個性あふれるフルーツたちと甘み、酸味のハーモニーを奏でる。「メロンは静岡産のクラウンメロン」など、スタッフの解説を聞くのもわくわくする。
『Café Ichifuji』店舗詳細
朗らかな甘みにホッと和むひととき『Café Sadiiq(サディーク)』【三鷹】
「店を始める前からパンケーキが好きで」と笑う、店主の藤澤さん。試行錯誤しながら細かいところまでレシピを調整し、自分ならではのパンケーキを手掛ける。あむっと頬張ると、まず訪れるのはバターミルクのコクのある甘みで、噛(か)み締めると小麦のうまみがじわじわ。生地を混ぜる際に加えた隠し味の塩が、かすかな、それでいて絶妙なアクセントとなり、シンプルだが奥深い、印象に残る後味を生む。ベーコンと目玉焼きをのせた食事系もおすすめ。
『Café Sadiiq』店舗詳細
風味豊かな焼き立てをお届けします『Baked up kyoko』【武蔵境】
店名の「Baked up」は焼きたてという意味。足を踏み入れた途端、漂う香ばしさにふわりと鼻先をくすぐられ、気持ちが上がる。繊細で美しいりんごの薄焼きパイは、旬のリンゴをスライスし、パイ生地に重ねて焼き上げた一品。薄焼きだからこそのサクッとした歯触りと、果肉の食感、滲(にじ)み出る果汁が口の中で出合い、ときめきが止まらない。リンゴは、甘みと酸味のバランスが良い紅玉を長野県の善積農園を中心に、青森県などの農家から直接仕入れる。
『Baked up kyoko』店舗詳細
和と洋の幸せ。どっちにする?『chikori』【武蔵小金井】
本場・スペインにならい表面をしっかり焦がしたバスクチーズケーキは、こんがりとした香りや、芳醇(ほうじゅん)なクリームチーズのしっとり、なめらかな舌触りのコントラストが秀逸。店主の入江充臣さんは「パティシエの妻が作るケーキは本当においしい」と言い、自身は粒あんを手作りする。豆感を感じられるハリのある粒あんで、善哉(ぜんざい)、いとこ煮(日本各地に伝わる郷土料理。こちらは山口県のものをアレンジしたchikori風)も好評。夫婦二人三脚で幸せを運ぶ。
『chikori』店舗詳細
毎日でも飽きないサクモチ食感『Saint-Denis Cafe』【三鷹】
フランスのレストランで修業していた、『Saint-Denis Cafe(サンドニ カフェ)』店主の矢作三郎さん。「当時はお金がなくてほとんどクレープに生かされてました」。街のクレープ屋はどこも安価で、大衆的なおやつだったとか。そんな、子供も気軽に来られるようなクレープリーを目指し、手作りにこだわる。フランス菓子のレシピをベースにしたリッチな配合の生地を、極限まで薄く広げながら焼くのが肝心。かじるとサクモチッ! 小麦の風味と自家製クリームの甘みが穏やかに、大きく広がる。
『Saint-Denis Cafe』店舗詳細
アートを食べるという甘い快感『319』【三鷹】
独創的なデザインは、まるで一つのアート作品のよう。それを崩しながら食べるのはほんの少し背徳感があり、それでいてたまらなく楽しい。鳥の巣というのは元々メレンゲを使った北欧のお菓子で、こちらではその下にブルーベリーやグラノーラを混ぜたヌガーグラッセ(アイス菓子)、上にカダイフ(細麺状にした小麦の生地)で作った鳥の巣を重ねてアレンジ。食べ進めるうちに異なる甘みが複雑に絡み合い、立体的な味わいを醸す。
『319』店舗参照
取材・文=信藤舞子 撮影=鈴木愛子、山出高士(Baked up Kyoko)
『散歩の達人』2025年2月号より