緻密でさりげない絶品料理の数々。『三献』(旧店名「畔家」)
鎌倉駅西口、通称“裏駅”至近。3階まで続く長い階段の先には、粋な料理と酒を気負わずに楽しめる空間が待っている。提供するのはコシの強い徳島の手延素麺「半田麺」を中心に、旬の魚介類や鎌倉野菜を使った一品料理。地ダコとトマトの香味和えを出して「ただ和えただけ」と店主・石松邦雄さんは謙遜するが、薬味どっさりでごちそう感がある。横須賀線のホームを眺めつつ、ちびちびやりたい。
『三献』店舗詳細
ソムリエ夫婦が営む深夜のワイン食堂。『TRES』
深夜24時まで開いているため、仕事を終えた飲食店関係者もふらりと訪れる。12席の小さな店内のワインセラーには、国内外の少量生産ものを中心に500本ほど並んでいる。「オススメは北海道のワイン。毎年10月に収穫のお手伝いをしています」と、ともにソムリエの田沼誠さん、美和子さんご夫妻。おつまみには一番人気の特製水餃子600円を。手作りの皮がもっちり、中身はぎっしりで食べごたえあり。
『TRES』店舗詳細
熟練の技×日本一の地鶏の最強コラボ。『鳥料理ごとう』
銀座にある鳥料理の名店で腕を磨き、2018年10月“あえて”材木座の住宅地に店を構えた。使うのは最高級の比内地鶏のみ。しかも通常より長い180日という日本一の品質のものにこだわる。直送される鶏をその日のうちに捌いて提供するから、鮮度は抜群。備長炭でじっくり焼いた串焼きを頬張ると、その弾力と濃厚な味わいに驚く。定番の日本酒は10種、限定仕入れは約20種とその充実ぶりにも心が躍る。
『鳥料理ごとう』店舗詳細
ソロ飲みデビューをするならココ!『山本餃子』
店の雰囲気を一言で表すと、和気あいあい。ひとり静かにグラスを傾けていても、いつしか隣の人と会話を交わす間柄になっているからおもしろい。女性客が入りやすいのもこの店ならでは。店主・山本理央さんがニラやニンニクを使わず、女性でも匂いを気にせずに食べられる餃子を、と思って店を始めたことによるのかもしれない。スタンダードな餃子のほか、水餃子500円や新たに始めたという蒸したてのシウマイ500円も人気だ。
『山本餃子』店舗詳細
夜だけでなく、朝も昼も寄りたい。『小町 よしろう』
女将・姫田あかねさんの手料理を求める客で夜な夜なにぎわう、創業から約30年を迎える名店。カウンターのみで常連客が多く集うものの「誰だって最初は一見さん」と、分け隔てなく接してくれる。場の雰囲気になじんだころ、常連さんが「煮あずきがおいしいのよ」と。聞けば、昼間は「甘処あかね」として店を開けていて、甘味好きには有名な存在だとか。金~日は朝7時~9時30分LOで焼き魚定食も。いつ訪ねてもおいしいものが待っている。
『小町 よしろう』店舗詳細
毎日の楽しい晩酌が元気の源。『萬屋商店』
大正初期の創業で、現在の建物は築約100年。角打ちスペースがあり、18時ごろになると続々と人が集まってくる。店で販売している酒やつまみは何でも買って食べて飲んでOK。この日は、週3回来るという川島さんとじいじの仲良しコンビが主役。腕相撲の後はご機嫌なじいじの歌が飛び出し、みんなも手拍子をとって一緒に歌って和気あいあい。お客さんの一人曰く「毎晩バカ言って笑ってね、もう一つの家族だよ」。あぁ、なんて楽しい生活!
『萬屋商店』店舗詳細
愉快な空間と絶品料理にバンザイ!『Rendez-Vous DES Amis』
レストランのコンサルティング、ケータリング、執筆など多岐にわたって活躍している料理家・副島モウさんが営む立ち飲みビストロ。料理は300円、500円、800円の価格のほか、スペシャルメニューが加わる。イチオシメニューのポルケッタはたった800円で「安すぎる!」と驚くと、副島さんは「バカでしょ」とうれしそう。このコストパフォーマンスの高さなら、リピートは確実。常連客が増え続けるというわけだ。
『Rendez-Vous DES Amis』店舗詳細
鎌倉ディープのんべの玄関口。『天昇』
入店するや否や自分で冷蔵庫を開けてホッピーとグラスを取り出す常連、天昇が好きすぎて週4回串打ちを手伝いに来る女性客。そんな地元愛され酒場を仕切るのは「店を広げるんじゃなく狭くディープにやっていきたい」と語る店主の山下貴大さん。炭火で焼く焼きとりや地元漁師から仕入れる日もある地魚の刺し身で杯を傾けていると、いい感じで常連さんが絡んでくれた。「ここを1軒目に裏小町へ繰り出すのが、鎌倉ゴールデンコースだよ」。
『天昇』店舗詳細
客同士が“横”でつながれる心地よさ。『昭和スウイング立飲みバアル テンスケ』
舞台女優のマリコママが、鎌倉のゴールデン街ともいわれる大谷ビルで店を開いた。「店をはじめて大正解。うちは本当にいいお客様ばっかりでね、お店が楽し過ぎちゃうの!」と言うように、お店に入る人は和気藹々。鎌倉に増えてきた立ち飲みのある居酒屋の中でも特徴的なのは深夜営業。深夜に開いている食堂が皆無に近い鎌倉で午前までしっかり食事ができる地元民の深夜食堂としても機能している。お酒のちょっとしたおつまみから、炭水化物がっつりの食事までメニューの豊富さはレストラン並みだ。しかも安い。
『昭和スウイング立飲みバアル テンスケ』店舗詳細
長谷で飲むって、こういうことっしょ『立呑処まごころ(した心)』
納豆オムレツなど人気のつまみもあるけれど、ここで料理云々(うんぬん)を語るのは野暮。目の前が由比ガ浜という空気に酔い、そしてオーナー兼皿洗いの虎さん、元常連でいつの間にか店に居ついた店長マッキーさんの最高にゆるいロン毛コンビの人柄に酔えばいい。「ここは長谷の人間交差点。ウチは2回目から常連さんだよ」という虎さんの笑顔に惹かれ、夜な夜な長谷のジモティが集い、時折ある音楽ライブを肴に深酒していくのだ。
『立呑処まごころ(した心)』店舗詳細
取材・文=林加奈子、井島加恵、鈴木健太 撮影=逢坂聡、丸毛透、yOU(河崎夕子)、小澤義人、高野尚人