齋藤シェフ考案の絶品汁なし辣醤麺
これが『大三元』の汁なし辣醤麺だ。通常の辣醤麺(スープのあるタイプ)をアレンジして、齋藤シェフが考案したオリジナルメニューなので、ここでしか味わうことができない。このビジュアル、どこから見ても美しい。「嵐にしやがれ」など数々のメディアで紹介され、この料理目当てに遠方から足を運ぶ客も多いのだ。
達筆の迫力あるメニューから目当ての汁なし辣醤麺をチョイスする。通常の“汁あり”の辣醤麺もあるので、汁なし辣醤麺を食べたいときは、間違えないように注意だ。
辛さは「辛さ抑え目、普通、辛さ増し」など好みにあわせて選べる。普通でも、そこそこの辛さと痺れはあるので、辛さを増すときは気をつけて欲しい。とはいえ、まずは普通を味わってみる。
まずは熱いうちにスープをいただこう。『大三元』のスープは、まろやかな口当たり、コクのある味わい、鼻から抜ける心地よい香りが三位一体となって、食欲を引き出していくようだ。
丁寧に炒められた麺は、麺全体にタレが絡んでいて見ているだけで食欲が刺激される。辛いまぜ麺というと、汁なし担々麺をイメージする人もいるかもしれないが、汁なし担々麵は食べながら麺をタレに絡ませながら食べるのでその点が異なる。何よりも『大三元』の汁なし辣醤麺の特徴は、何といってもこの山盛りのカイワレ大根だろう。
極上の旨味と香り!見た目とのギャップに驚く味わい
カイワレ大根をかき分けて、一気に麺を引き上げたら、タレが絡みついた美味そうな麺が姿を表す。ひき肉が餡のようになって麺に絡みついているのが分かる。
食べてみると、ガッツリとした見た目とギャップのある味わいに驚く。最初は甘みが感じられて、咀嚼するたびにジューシーな旨味がくる。見た目はソース焼きそばのようだが、複雑な味わいが口内に広がりつつ、最後には山椒の香りが鼻から抜ける。心地よい余韻と絶妙にコントロールされた辛みと痺れで箸が止まらなくなる。
カイワレ大根は豊洲市場から仕入れられている特別なもので、我々がよく食べる馴染み深いものとはわけが違った。太くて瑞々しさを感じる上質なカイワレ大根には白髪ねぎがブレンドされているが、汁なし辣醤麺が開発された当時は、カイワレ大根は使用しておらず、全てが白髪ねぎだったという。
齋藤シェフ曰く「全てが白髪ねぎだと、辛みが強かったので、カイワレ大根に変えた」とのこと。
全体をガシガシ混ぜて食べていくと、濃い味の麺とフレッシュなカイワレ大根がとても合う。味わいだけなく、食感にも多様性が加わり、口の中が楽しくなる。
麺を食べ終わったあと、皿に残ったひき肉とカイワレ大根をレンゲですくって食べてほしい。お腹に余裕があるならライスを頼んでも良いだろう。
そして、スパイシーでコクのあるひき肉は、お酒のつまみとしても最高だ。
「40年前の錦糸町北口はここまで栄えてなかった」齋藤シェフが見てきた錦糸町
『大三元』の創業者でありオーナーの齋藤シェフは、2015年に酸辣湯麺の「街の巨匠」として、テレビ番組「新チューボーですよ!」に出演した伝説の料理人だ。
40年以上にわたって中華鍋を振るい、東京都の下町・錦糸町の人たちに美味しい中華を作り続けている。齋藤シェフは、中華レストランでの修行を経て、26歳の頃に独立、現在の場所で『大三元』を開店させた。
「創業当時、錦糸町の北口は今のように栄えてはなかったんです」
齋藤シェフがそう話すように、錦糸町駅北側の再開発が進み始めたのは1983年(昭和58)になってからであり、かつての北側は業者向けの問屋が多く、今のような飲食店が並んでいるようなエリアではなかった。そもそも1978年(昭和53)まで、JR錦糸町駅には北口改札がなく、駅の北側には南口改札から迂回してくるしかなかったのだ。
「東京メトロ半蔵門線が開業してから、錦糸町の活気が増してきた気がします。ラーメン屋さんや中華屋さんが増え始めたのはここ最近のことです」と齋藤シェフが話す。
錦糸町の北側は住宅地なので、『大三元』は錦糸町北口がまだ栄えていなかった頃から40年間以上、近隣住民とともに生きてきた。
今回、紹介した汁なし辣醤麺はディナータイムでも提供されているので、是非とも中華コースをいただいたあとの〆としても食べてほしい。
ディナータイムは連日満席なので、事前に予約しておくのがおすすめ。ランチタイムも、日によっては店外に行列ができていることもあるので、時間に余裕をもって訪れたい。
取材・文・撮影=KijiLife