サラリーマンだけでなくファミリーにとっても憩いの場に
大森という街は実ににぎやかだ。
ビジネス街らしく、改札を抜ければすぐにスーツを着たサラリーマン風の男性をよく見かけるが、同時に彼らがこよなく愛していた居酒屋も多く軒を連ねている。お店を除くと大ジョッキを力強く持ってグイグイと飲み干し、一日の疲れから解放されていく彼らの姿を見ることができる。
大森駅からほど近い『とり鉄』もそうしたサラリーマンたちの憩いの場のひとつ。黄色の看板を目印に地下の階段を下りてくると、そこには酒を愛する大森のサラリーマンたちにとっての楽園が開かれる。
「いらっしゃいませ!」と流ちょうな日本語で出迎えてくれたのは店長を務めるタパさん。コロナの感染がいまだ収まらないとはいえ、「客足は徐々に回復してきていますし、依然と比べるとサラリーマンのお客様だけでなく、ファミリー層の方たちや新規のお客様も増えてきている印象を受けます」と答えてくれた。
サラリーマンたちの憩いの場としてだけでなく、ファミリーにも愛される店……それが『とり鉄』の興味深いところかもしれない。
お店オリジナルの鶏肉の魅力を生かしたスペシャルメニュー
焼き鳥をはじめとした鶏肉料理の店である『とり鉄』。当然こだわっているのは使用する鶏肉の品質。『とり鉄』ではオリジナルブランド鶏にあたる「奥州美鶏」という品種の鶏肉を採用している。
「お店の料理に合うように鶏を見直しました。この品種はいわゆる地鶏よりも硬くなく、お年寄りの人でも食べやすいと思います。そして鶏の味わいが深いので、ぜひ食べてみてほしいです」と、タパさんも自信を込めて伝えてくれたお店自慢の料理たち。まずは「奥州美鶏のたたき 岩塩盛り」。ももと胸肉をそれぞれ軽く焙った状態でもってきては下にしかれている岩塩の塩とともに食べるという代物だ。
噛みごたえのある歯ざわりがうれしいもも肉にしっとりとした食感の胸肉など、部位によって味が変わるのでその違いをしっかりと堪能。そして間もなくやってきたのがお店自慢の6本セットである。
こそれぞれの部位ごとに異なる味付けがなされていて、その食感の違い楽しみながら飲む酒はまた格別。ビールはもちろん、焼酎や日本酒もグイグイと進んでいくこと間違いなしだ。
やって来るお客様に愛してもらえるように
『とり鉄』のシンボルとも言える鶏料理にマッチするお酒は常時20種類用意。最近では、女性にも喜んでもらえるようにオリジナルのサワーも用意しているのだという。
ニーズに応える営業姿勢から、大森の街の客から愛されてきたのだろう。
「まだまだコロナの影響があるとはいえ、客足は少しずつ戻ってきて回復傾向にありますね」と語ってくれたタパさん。最後にお店の魅力について伺ってみた。
「大森の街の中でも『ゆっくり、たっぷり飲めるのにリーズナブル』みたいなお店はあまり多くはないと思うんですが、うちの店ではたっぷり飲んでいただきたいです。大きい店ではないですが、お客様に愛してもらえるよう努力していますのでぜひ一度遊びに来てほしいですね」
取材を終えて、店を出た直後、サラリーマン風の男性2名組が筆者と入れ替わるように店内に入っていった。今年の夏もまた多くのサラリーマンたちがここで旨酒を酌み交わすのだろうか。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘