地元民に支持される鶏料理が自慢の居酒屋
神楽坂駅から歩いて1分。『とり酒場 わや』は神楽坂通り沿いのビルの2階にある。階段を上がって店に入ると、スタッフが明るい笑顔で迎えてくれる。
奥に細長いつくりの店内は、入ってすぐのところにカウンター席が並び、その先にはテーブル席。ゆったりと落ち着いた雰囲気だ。1人で静かに飲むときはカウンター席、仕事帰りに職場の仲間や友人と飲むときには半個室や掘りごたつのテーブル席を利用したい。
オーナーの長部茂樹さんは、チェーンの居酒屋で鶏料理を中心に10年ほど修行した鶏料理のエキスパート。2009年、神楽坂に念願の自分の店『とり酒場 わや』を開業。もちろん鶏料理をメインとした居酒屋だ。2011年には四谷三丁目店を開業した。
「たくさんの人が集まって話をしながら、食べて飲んで楽しんでいただく店にしたいんです」と長部さん。店名の『わや』とは、多くの人が集まってわいわい騒ぐという意味の北海道地方の方言「わやわや」からとったそう。妥協のない料理と懐にやさしい価格、居心地のいいお店の雰囲気で、多くの常連客に支持されている。
低価格なのにボリューム満点! 大満足のランチをいただく
今回いただくのは、多くの常連さんが注文するというランチメニュー、鶏から揚げ定食750円。人気No.1というチキン南蛮定食800円にするか迷ったが、まずは定番料理ということで鶏から揚げ定食に決定。
今や国民食と言ってもいい鶏のから揚げは、居酒屋をはじめ定食屋さんや町中華、最近よく見かけるようになったチェーンの専門店など、多くの店で提供される。まさに鶏から戦国時代だ。“とり酒場”を名乗る『わや』のから揚げに期待が高まる。
さっそく注文する。鶏を揚げる音をききながらしばし待つと、揚げたてであつあつの鶏から揚げ定食が運ばれてくる。テーブルに出されてまず驚いたのが、おかずの品数と量。お店のスタッフが「すごいボリュームでしょ」とニコリ。
メインは大きめの鶏のから揚げが4つ。これだけでも十分満足できる量だ。さらに、ご飯とお味噌汁、納豆、冷奴、切り干し大根、お漬物とサラダがつく。これだけ充実したランチが750円ということに驚きとオーナーの努力に感謝の気持ちを感じる。
まず、から揚げをあつあつのうちにいただく。外はカリカリ、中はジューシーという、まさにから揚げはこうあるべき、という正統派の食感。ほどよい柔らかさの鶏肉の旨味が口の中に広がる。衣にブラックペッパーが加えてあるが、決してスパイス感は強すぎない。オーソドックスな味わいはだれでもおいしくいただけるだろう。期待を裏切らない一品だ。
何かレシピに秘密があるのかと思い聞いてみると、「既製品のタレなどは使わず、すべてオリジナルで調合していますが、特別なことはしていません。毎日食べていただいても飽きない味付けにしています」と長部さん。
切り干し大根はしっかりとした味付け。冷奴は揚げ物を食べるときにはうれしい付け合せだ。納豆は、オクラが添えられているのが高ポイント。オクラのねばねば感とほのかな苦味がいいアクセントになる。長部さんは「ちょっと思いついて納豆にオクラを入れてみただけなんですよ」と話すが、メニューに変化を持たせ、お客さんに食事を楽しんでいただきたいというオーナーの思いからだろう。
ごはんとお味噌汁はおかわり無料。これだけのおかずのボリュームで、ごはんとお味噌汁が好きなだけおかわりできるのはうれしい。お客さんに満足してもらいたいというオーナーの気持ちが伝わってくる。
夜メニューも充実。こだわりの鶏料理はランチだけではもったいない
ボリュームあるランチを低価格で提供しているのは、「サラリーマンの皆さんはお小遣いも少ない人も多いと聞くので、おいしいランチを少しでも安い値段で食べていただきたいから」と長部さん。また、多くの人に『わや』を知ってもらいたいという思いもあるそう。
仕事帰りに1人でお酒を飲みながら夕食をいただくという人のために、夜も定食が用意されている。ランチメニューと同様に鶏から揚げやチキン南蛮などのメニューが楽しめる。夜定食はアルコールセットとソフトドリンクセットが用意されていて、飲み目的だけではなく、家族で夕食といった使い方もできるだろう。
酒の肴も鶏料理を中心に充実している。岩塩と自家製タレを選べる自慢の焼き鳥は毎朝1本ずつ丁寧に串に刺しているそう。寒い時期には鶏の水炊き鍋もおすすめだ。時間をかけて、じっくりと煮こんだ鶏白湯仕立ての鍋はまさに絶品。定食では1人ずつ鍋で出している。
鶏料理に真摯に向き合う長部さんがつくる、おいしくてボリュームいっぱい、さらに低価格のランチは神楽坂で働く人たちに大人気。でも、『わや』はランチだけで使うのはもったいない気もしてきた。次回は夜に訪れ、自慢の焼き鳥と日本酒をゆっくりと時間をかけて楽しもうと思う。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎