カラーバリエーションやトレンドアイテムもチャレンジしやすい価格設定
『SHINTO』が高円寺にオープンしたのは2016年だが、店主の戸井隆義さんは、それ以前、同じ場所にあった古着店に勤務していた。戸井さんは10代の頃からの古着好き。地元静岡の古着店で働き、今『SHINTO』がある場所の系列店に異動。8年ほどスタッフとして務めたあと店の閉店が決まり、それをきっかけとして独立の夢を同じ場所で叶えた。
店内をぐるりと巡ってみると、ミッキーマウスやトムとジェリーなど、懐かしさもあるキャラクターのプリントTシャツや、独特な色合いが興味深いヨーロッパのミリタリーアイテムなど、ポップなアイテムを見つけることができる。
『SHINTO』の品揃えは1990年代から2000年代のメンズ古着が中心。よくファッションのトレンドは繰り返されると言われるが、今若い世代は90年代から2000年代のファッションを取り入れている。ヒップホップやスケーターといったストリートカルチャーを反映していて、全体的にゆったりしたシルエットが好まれている。
主な客層は大学生など20代前半。お小遣いやバイト代で手が出やすいリーズナブルな価格帯のものを揃えている。「今はメンズアイテムを取り入れる女性も多いので、人気のアイテムは男女関係なく売れています」と戸井さん。女性客は全体の3割ほどとのこと。カジュアルファッションの世界では、気に入ったアイテムをジェンダーレスに楽しむ人が増えている。女性客はニットやスウェットのほか、キャップやハット、ヴィンテージのスカーフなど小物を買っていくことも多い。
古着とコーディネートしやすい新品も『SHINTO』が得意としているジャンルだ。古着で人気のデザインを意識した新品を揃えるようにしている。「そうすると自然と明るい色のものが増えていきます。古着がブームになってきたここ数年で、希望のカラーが揃いやすくなってきました」と明るいカラーのアイテムもおすすめだ。
どうやら古着の流行は世界的な傾向のようだ。「実は新品の方が古着より値段が安いんですよね。コロナも関係していますが、古着が流行しているのは日本だけではないこともあって、探している古着がなかなか見つからなくなっています」とも話してくれた。
そんな中『SHINTO』では、オリジナルアイテムも展開を始めた。Tシャツやバッグのほかに、あまり他店で見かけない色のパンツも作っている。「新品のメーカーさんでは探せなかったカラーのものをオリジナルで作ることにしました」とやはりカラー展開にこだわりがある。
巨大な鉛筆に、天井のドライフラワー。ディスプレイは店主の趣味も反映
店内のオブジェやディスプレイには戸井さんの趣味が反映されている。さりげなく飾られているが、気になるのが巨大な鉛筆だ。1970年代のアメリカで販促用に使われていたもので180センチもある。この鉛筆をきっかけに、他にも巨大なカトラリーのセットもディスプレイに加えた。「店に入った瞬間、トリックアートの中に入りこんだかのような錯覚を感じてもらうのが目標」と話す戸井さんは、エッシャーのトリックアートも好きで、店内にも飾っている。
天井から吊り下げられたドライフラワーも存在感を放っている。このドライフラワーはただのディスプレイではなく、オープンから1年ほど経ってから扱い始めた商品でもある。植物好きな戸井さんは店で観葉植物を取り扱えないかと考えたが、どうしても枯れてしまう。そこで目をつけたのがドライフラワーだった。
「ドライフラワーを販売している古着屋は、今では珍しくなくなりましたが、僕が始めた頃は扱っている店を他に知りませんでした。ディスプレイ的にもいいし、ドライフラワーだけを買いに来る常連のお客さんもいるんですよ」。ドライフラワーがあることで店内にはやさしいナチュラルな雰囲気も漂い、足を踏み入れやすい。
店内で男女問わず取り入れられるアイテムが古着と新品どちらも探せる『SHINTO』。ふらりと立ち寄ると、流行する古着ファッションのエッセンスを気軽に取り入れたくなる店といえそうだ。
取材・撮影・文=野崎さおり