「坂下」飯田橋方面は、「坂上」に比べ、注目スポットがJR線路沿いに広がっている印象がある。そこで、飯田橋駅前から水道橋方面に迂回(うかい)し、リニューアルした西口駅舎駅を経て、神楽坂の袂(たもと)へ向かってみることにした。
出発は飯田橋駅の東側。できれば大江戸線で訪れ、駅構内からC3出口に至るアートな構内を観賞したい。ついで神田川沿いに出て水道橋方向へ進み、新進気鋭の 『トグルホテル』 の最上階カフェへ。周囲の絶景にひたる。
飯田橋駅周辺は散歩の穴場がそろってる
その後、ホテル脇のダイナミックな陸橋交差点に目を見張り、飯田橋駅の東側をゆるり散策。JR高架線の石垣をはじめ、散見される古い風景や飯田橋プラーノのモニュメントが興味深い。
小腹がすいてきたところでサクラテラス内の『貝殻荘』へもぐりこみ、カキフライ食べ放題に舌鼓。
真近にある、スタイリッシュに生まれ変わったJR飯田橋駅西口に歩を進め、お堀の緑を一望できる2階ラウンジへ。神楽坂を代表する甘味店『梅花亭』の白あんのもなかと、白ワインで食後のデザートとしゃれてみる。まずまずの取り合わせなり。
区境ホールを通り抜け、元花柳界の粋な空気がかすかに漂う神楽坂の裏筋へ、通りかかった豆腐店のオリジナル豆腐スイーツを持ち帰り。ゆるゆる坂を上り、兵庫横丁方面に進む。神楽坂といえばイメージされる石畳の路地をさまよう。石畳はそう長くはないが、迷路状の坂道こそこの街の魅力。歩くほどに発見があり、魅力がいや増す。
新・絶景ポイントと花柳界の華やぎ残る路地
アルパカ製の衣類小物専門店、手焼き煎餅の自販機などで思わず立ち止まり、牛込神楽坂駅近くのボリューミーなホットドッグでお疲れさま。
神楽坂の王道ゾーンを軸に、両端で新しい顔をのぞくコースとなったとさ。
(1)おもしろ換気塔
利用者の少ない方の出口に隠し球!
大江戸線飯田橋駅は数々の賞に輝く名建築。改札内の天井を緑のパイプが植物の根のように伸び、C3出口脇で換気塔が葉を広げるオブジェと化している様は正にアート。
(2)トグルホテル水道橋
攻めのホテルで街並みをかぶりつき
高速道路脇の敷地に今春オープンした斬新なホテル。館内は異なる2色で鮮やかに塗り分けられ、非日常的な宿泊体験が味わえる。最上階のカフェは一般利用も可。周囲の街を一望できるのが何より魅力。
(3)陸橋交差点
時代の痕跡が手つかずで残る穴場
トグルホテル脇で首都高・日本橋川・歩道・JRの線路がダイナミックに交差、都市ならではの風景を堪能できる。ガード下のディテールなど、古い時代をしのばせる断片が残っていて、見飽きない。
(4)飯田橋のミニ富士山
小さな黒い突起は富士山なり
複合施設「飯田橋プラーノ」の角に立つ1本のクスノキはシンボルツリーで、周囲を囲む敷石にこの地にまつわる様々な歴史的由来が図表にして刻まれている。見過ごすのはもったいない。
(5)牡蠣ビストロ貝殻荘
カキフライ食べ放題ランチですと!?
カキ料理の専門店。オーストラリアの漁港をイメージした広い店内で、国内外の新鮮なカキや様々な洋食を堪能できる。ランチ牡蠣フライ食べ放題プレートは1300円(土・日・祝は1518円)はかなりお得。
(7)区境ホール
実は珍しい視覚化された区界
飯田橋駅周辺は区境的にも興味深い。新宿区・文京区・千代田区の交差点があれば(表示ナシ)、駅ビルのラムラには新宿区と千代田区の区境が走っていて、境を示すプレートを床に埋め込んだ広場があり、さまざまな催事が開かれている。
(8)神楽坂かつのとうふ
頑張る街豆腐屋の新スイーツ
創業約70年、同じ場所で営み続ける街の豆腐屋。豆腐屋を文化として若い世代に伝えたいと、店主の佳以さんが始めたのはヴィーガンな豆腐スイーツ。豆乳プリンからはじまり、おからボール、豆腐白玉など。時代に合わせ生き残りを模索する。
(9)アルパカハウス神楽坂
知られざる魅惑のモフモフワールド
アルパカの純毛素材を使った人形や小物、衣類の専門店。防寒性能が高く感触抜群の高級素材ながら本場ペルーから直送して安く提供。店長の伊藤紫音さん着用のショール1万5400円、ジャンパー9900円、ニット帽3850円。
(10)地蔵屋の煎餅自販機
高級手焼き煎餅店の自販機が登場!
地蔵屋は手焼き煎餠の名店。神楽坂沿いに店舗があるが、本店前の自販機でも購入できる。オススメは割れ煎餠の詰め合わせ、こわれ久助500円。廉価版ゆえ手焼きではないが、それでも一枚上を行くうまさ。
(11)homeys HOTDOG STAND
ビールも豊富な大人ホットドッグ
高田馬場のハンバーガー店が手掛けるホットドッグ店。ドッグ18種類×パン3種類と多彩。写真は黒いライ麦パン+ポテト計930円×パブストブルーリボン880円。ソーセージの焼き加減が絶妙。
取材・文=奥谷道草 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2021年12月号より