飯田橋から神楽坂にいたる丘陵地帯は、ビジネスマンや観光客が足しげく訪れる繁華街。江戸にさかのぼる渋い街並みと、新たな絶景ポイントとの取り合わせが楽しい。

奥神楽坂と呼ばれる江戸川橋方面の開拓が止まらない!

神楽坂駅は赤城神社寄り1b出口にエスカレーターをついに設置! 景観も整備された。「神社の向こうは急な下り坂。神楽坂歩きの醍醐味だねっ」
神楽坂駅は赤城神社寄り1b出口にエスカレーターをついに設置! 景観も整備された。「神社の向こうは急な下り坂。神楽坂歩きの醍醐味だねっ」

坂上さんぽの出発点は地下鉄東西線神楽坂駅。メインストリートをまたいで路地に入り、往年の街の姿をとどめる「一水寮」の周辺を観賞。続けて赤城神社の参道で神社に一礼、脇の道を経て『ドーナツもり』でおみやげを購入。なりゆきで店前の長くゆるい坂道を下っていく。この細い坂、近年オモシロい店がこっそり増加中。今後が楽しみ。途中であかぎ児童遊園に入りこみ、勢いでゾウさんすべり台ひとすべり。

この辺りの路地はこういった古い建物がピンポイントで残っている。「見た目くたびれているけど、しっかり手入れされてるね」
この辺りの路地はこういった古い建物がピンポイントで残っている。「見た目くたびれているけど、しっかり手入れされてるね」
『ドーナツもり』近くで異彩を放つ、元銭湯のアパート兼シェアハウス。ちょい迷ってオモシロ物件を発見!
『ドーナツもり』近くで異彩を放つ、元銭湯のアパート兼シェアハウス。ちょい迷ってオモシロ物件を発見!

住宅地に潜む『おはぎと大福』がすぐ先に。またも買い物の手が伸びる。
江戸川橋通りをまたいで『swing by coffee』でヌケの良いコーヒーを立ち飲み、近くにできた『八百(やお)食堂』で豚汁めしをいただく。おおこりゃアタリだ。

意外と庶民的な顔も隠し持っている神楽坂

昔の町内地図を発見。印刷製本工場でびっしり。
昔の町内地図を発見。印刷製本工場でびっしり。
シブさ半端ない古い印刷工場。赤城神社の裏手~江戸川橋あたりが印刷製本関係の工場地帯だった名残だ。
シブさ半端ない古い印刷工場。赤城神社の裏手~江戸川橋あたりが印刷製本関係の工場地帯だった名残だ。
アンティークな造型がしゃれたレトロ階段。使いたくなるのが人情だ。
アンティークな造型がしゃれたレトロ階段。使いたくなるのが人情だ。

満足して腹ごなしに地蔵通り商店街の、神楽坂とは異なる庶民的な道筋を進み、年季の入った渋ビルの隠れ地帯を散策。筑土八幡神社と長い石段中腹にあるプチ児童公園や、その先のレトロな手すりの急階段なんて渋いポイントを巡り、メインストリートへ復帰。 ふるさとに戻った気分(おおげさ)も束の間、また脇道に入り、『フラスコギャラリー』をのぞく。

今日は何やってるかな、ふふ。白金公園向かいの『jokogumo(よこぐも)』が折よく開いていたので物色後、『カド』の門を潜り、立ち飲みで〆の1杯。これで帰宅もいいけど神楽坂を飯田橋まで下るのもおすすめ。飴色の街灯が連なる夕暮れの風景も見物なのだ。

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(1)一水寮

昭和にタイムスリップする路地の顔

渋い路地に忽然(こつぜん)と現れる、トタンに覆われたレトロな建物は、地元の建築家高橋博氏が終戦直後、大工の寮として建てた2階屋。アパート等に転用された後、耐震補強を含めた改修工事が行われ、今はスタジオ・事務所として使用中。登録有形文化財。

良いアジを出している立てかけたリヤカー。映画のセットみたい!
良いアジを出している立てかけたリヤカー。映画のセットみたい!

(2)ドーナツもり

高級ケーキと同格の本格ドーナツ

リノベ古民家で、フランス菓子のクオリティーを持ち込んだドーナツ10数種を販売。生地作りに3日、食材はオーガニック、トランス脂肪酸フリーの最高品質の油で揚げて仕上げるドーナツは、胃もたれなくペロリといける。

店主の森敬之さんは旬の食材にもこだわる。客層は30~40歳代がメインだとか。
店主の森敬之さんは旬の食材にもこだわる。客層は30~40歳代がメインだとか。
思わず立ち寄りたくなる外観。閉店前に売り切れることもしばしば。
思わず立ち寄りたくなる外観。閉店前に売り切れることもしばしば。
住所:東京都新宿区赤城下町3丁目9 /営業時間:11:00~18:00/定休日:月・火

(3)あかぎ児童遊園

閉園時間付きで街の安全にも配慮

住宅地に挟まれた細道にひそむ公園。表情豊かな2頭のゾウが連なる独特なすべり台は地形の高低差を利用したもの。南北に出入り口があり、江戸川橋への通路としても利用できる。

住所:東京都新宿区赤城下町21

(4)おはぎと大福

見つけるまでも楽しい隠れんぼ小店

おはぎ好きが高じて店開きした立原則明さん(写真奥)。場所もここだ! と、古い住宅地をあえて選んだ。木箱に並ぶおはぎは、定番4種と日替わり2種。ほどよい甘みと硬めのもち米が持ち味。全部手作りなのに値段も手ごろ。

住所:東京都新宿区天神町35/営業時間:11:30~18:00/定休日:月・金

(5)swing by coffee

神社脇に潜む自家焙煎コーヒーの名店

「コーヒーに合う焼き菓子、え、奥さんの手作りなの?」
「コーヒーに合う焼き菓子、え、奥さんの手作りなの?」

大通り一本裏の静かな風情が気に入りこの地に開店したそう。吟味した豆を中煎り~深煎りでクリアな味に仕上げる。飲んだ後のさっぱり加減が見事。テイクアウトメインだが、1杯370円~で淹れたてを立ち飲みできる。

住所:東京都新宿区天神町78/営業時間:10:00~18:00/定休日:火・水

(6)八百食堂

つまりは庶民派の和風シチューなのだ

2021年10月開店、珍しい豚汁めしの専門店。味噌の配合を工夫、こってり仕上げた汁は具沢山。埼玉県産「とねのめぐみ」使用のメシがまた美味で食が進む。小皿付きで並580円。サイドメニューも豊富で、リピート必至。

住所:東京都新宿区山吹町293/営業時間:11:00~22:00/定休日:無

(7)江戸川橋地蔵通り商店街

現役バリバリの頼れる庶民派商店街

入り口の近年整えられた立派な地蔵堂がシンボル。昔ながらの肉屋、八百屋、煎餠、和菓子屋など約80店舗。最近はカフェなども登場し、通りに新しい風が吹きはじめている。

(8)筑土八幡神社

一歩引いて街を見守っております

あまり目立たないが、建立9世紀に溯る古刹。新宿区内最古の石の鳥居を有し、その脇に小さな公園。高台の斜面を利用した遊具は、小型ながら見通しよすぎて結構こわい。

(9)フラスコギャラリー

街のおもしろ実験スペース

ご近所の雑貨店『貞』が手がけるギャラリー。奥に上がりかまちがあるのが神楽坂っぽい。ちょっとした料理や演奏も可で、イベントや個展が開かれている。この日は平和をテーマにした女性作家4人の作品展が開かれていた。

住所:東京都新宿区神楽坂丁6目16/営業時間:03-3260-9055

(10)jokogumo

狭い敷地に厳選した日常雑貨が静かに並ぶ

「2階で色々試着できるんですよね」
「2階で色々試着できるんですよね」

人気の雑貨店が規模を縮小し、店開きした場所に戻ってきた。「お客様との距離感がちょうどいい」と店主の小池梨江さん。通好みの手工芸品を始め生活を彩る品々が揃う。久留米絣(がすり)の今風もんぺ1万2100円~の品揃えは東京一。

住所:東京都新宿区神楽坂6-22/営業時間:12:00~17:00/定休日:日・月・水・金

(11)カド

角打ちでちょいと立ち飲みもできる居酒屋

古民家を改装した居酒屋。肩肘はらぬ雰囲気がいい。入って右手の土間は立ち飲みコーナーで、開店当初からあったが近年人が集まりだした。おつまみ基本300円。神楽坂なのに、一杯飲んで1000円でオツリ!

風格ある外観ながらお手頃価格。これからの時季はドジョウ鍋がおすすめ。
風格ある外観ながらお手頃価格。これからの時季はドジョウ鍋がおすすめ。
住所:東京都新宿区赤城元町1-32/営業時間: 16:00〜23:00(土・日は12:00〜)/定休日:不定/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩2分

取材・文=奥谷道草 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2021年12号より