2021年5月 「アップリンク渋谷」
アップリンクならではの尖ったプログラム
3スクリーンを擁する渋谷のミニシアター「アップリンク渋谷」が、5月20日をもって閉館した。1995年にスタートしたイベントスペ-スを皮切りに、2004年、現在の宇田川町に移転し、以来「日本一小さな映画館」として定着。カフェやギャラリー、物販も備え、渋谷のインディペンデントカルチャーの発信地として存在感を増していた。しかし、施設や機材の老朽化に加え、コロナが追い打ちをかけて閉館を余儀なくされた。マニアックな作品から渋いドキュメンタリーまで、アップリンクならではの尖った編成でファンも多く、愛された劇場だった。
緊急事態宣言で都内のほとんどのシネコンが休館する中、最後まで営業を続け、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス 4K修復版』を最後に観ることができた。最後の新作上映は、竹中直人、山田孝之、斉藤工監督の『ゾッキ』の舞台裏を描いた『裏ゾッキ』。ラストまでアップリンクらしいプログラムだ。渋谷は無くなっても、『アップリンク吉祥寺』は今後も営業を続けてゆくので、アップリンクの灯は引き継がれてゆく。
2021年5月 「ピーコックストア自由が丘店」
トモエ学園小学校の跡地としても知られた場所
自由が丘で50年以上営業を続けてきたスーパーマーケット「ピーコックストア自由が丘店」が5月31日に閉店した。4階建ての大型スーパーで、おしゃれな街・自由が丘の変遷を見つめ続け、長年にわたって住民の暮らしを支えてきた老舗スーパーだった。もともとこの場所は、黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」の舞台となったトモエ学園小学校の跡地として知られ、(1945年の東京大空襲で焼失)、1988年には店の前に記念碑が建てられ、黒柳さんも訪れている。店内には大型のメッセージボードが置かれ、黒柳さんからのメッセージも紹介されていた。1968年にオープンしたこの店も、閉店後建て直して再出店するという。
2021年6月 九段下「ホテルグランドパレス」
「金大中事件」の現場。ドラフト会議にも使用された
1972年にパレスホテルのチェーンとして開業、地上24階で、7つのレストランを持つホテル。50年近い歴史を重ねてきたが、コロナの影響で業績が悪化し、6月30日営業を終了した。1973年には、後に韓国大統領となる金大中氏がこのホテルから拉致される「金大中事件」の現場となった。1976~1988年と1996年の14回、ドラフト会議の会場として使用された。後楽園に近いこともあってボクシングの世界タイトルマッチの記者会見もここで行われることが多かった。かつては九段下近辺に店が少なかったので、武道館のコンサート終わりに、ここのコーヒーハウスでライブの余韻に浸りながら食事したものだ。派手さは無いが、静かで落ちついたいいホテルだった。
2021年7月 新宿「紀伊國屋ビル地下名店街」
「モンスナック」「ジンジン」は思い出の味
紀伊國屋書店新宿本店地下1階の「紀伊國屋ビル地下名店街」にある9店舗が7月15日に閉店した。ビルの耐震補強工事のためだそうである。
1964年創業の老舗カレー店「モンスナック」や、1970年創業の生パスタの老舗「ジンジン」は、新宿で青春を過ごした人なら一度は訪れたことのある有名店。さらにうどんの「水山」や「ファーストキッチン」なども姿を消す。このビル自体、建築家の前山國男氏が設計して1964年に竣工、東京都の選定歴史的建造物に選ばれている。「モンスナック」もビル完成以来続いている老舗であり、この地下街も70年代から変わらない風景だった。「モンスナック」のカレーや、「ジンジン」のスパゲティは、私も学生の頃からカウンターに座って食べた思い出の味である。2022年度には、リニューアルして生まれ変わるらしい。
2021年8月 「池袋マルイ」
池袋らしい個性的な部分も
「池袋マルイ」が、8月29日、44年の歴史に幕を下ろした。1977年開店。地上8階建ての店舗だが、収益性の悪化と建物の老朽化で閉店することになった。池袋駅の西口から徒歩4分、立教大学に向かう途中にあり、池袋の中心部からは少し離れていた。7階には池袋らしくアニメやキャラクターの売り場が広がり、個性的な店舗でもあった。最後は「さよなら大感謝祭、ありがとうセール」を開いて有終の美を飾った。