東京メトロ三越駅。地上へと続く階段を、後ろから煽られるように駆け上がれば、半袖から覗く二の腕と頭皮に容赦なく突き刺さる7月の日差し。
日曜日の中山通はショッピングを楽しむ人たちも多く、人の波を避けるようにむろまち小路へと避難。
日傘をさそうとベルトをほどいた瞬間、目に飛び込んできたのは小麦色のソフトクリームが鮮やかな看板。

日差しに背中を押されたのか、それとも私の意思か、もしくはどちらもなのか、ほどいた日傘のベルトを戻しながらいつもより大股で足が進みます。
「ミカド珈琲 日本橋本店」さんへと。
「いらっしゃいませー!」の爽やかな声と冷たいのに優しいエアコンの心地よさに出迎えられ、メニューも見ずに本能のまま
「すみません、モカゼリーをお願いします。」
とオーダー。

手際よく仕上げられていくモカゼリーは、湿気と日差しに虐げられた(ほんの数分なのに)私にとってまさにオアシスの聖杯のよう。
1階スタンド席には、初老の紳士がワイシャツ&スラックス姿でソフトクリームを召し上がりながら休憩中。スペースは十分なのに、あえて左端の隅っこを選ぶのもまた贅沢でしょうか。
マスクを外し、崩れかけたファンデーションとグロスも気にせず
「いただきます。」

心地よい冷気と香ばしさ楽しんだあと、すぐに駆けつけてくるソフトクリームのあまーいコク。ほろ苦さも加わり、暑い日でもすいすいスプーンが進む。
ちょっと気を逸らすとバランスが崩れてくる、危ない危ない。

大人の女性が真剣な面持ちで角度を吟味しながら、ソフトクリームを食べてる姿はどう映るのでしょうか。
気づけば私のみでしたが、ぐるりと張り巡らされた鏡を意識に姿勢を立て直す。

バランスに余裕が出てきてプルーンをぱくり。
ぷちんと皮が弾ける微かな抵抗を楽しみ、ねっとりとした果実の甘味を楽しみます。

そしてお待ちかねコーヒーゼリー。
フルーティーで軽やかなコーヒーゼリーは、ソフトクリームのまろやかさをアシストしてくれる。
かといって脇役ではなく、私だって美味しいでしょ?という主張が伝わってきます。
ちょっと甘みがほしくなり、備え付けのアガペシロップをたらり。
これもまた格別。

名残惜しくも最後のひとさじを喉に流し込み、ふぅっとひと息。チラリと視線を走らせると、ミカドコーヒーさんや日本橋の歴史がモノクロの写真と共に紹介されているではありませんか。時間が許されるのなら、ケーキを頼んでもう少しゆっくりと眺めていたいほど充実しておりました。

2階からの賑やかな声、涼に胃も心も満たされた私。
「ご馳走様でした、美味しかったです。」とありのままの感想を伝え、手加減を知らずに照りつける日差しの元へ。

独り占めの優越感に味を占めると、また次もそのタイミングがいいなと願ってしまうのは我儘でしょうか。
3歩進んでUターンしたくなる衝動を堪え、再訪を誓うのでした。