現代においては、「純喫茶=昔ながらのレトロな喫茶店」の意味で使われることが多いかと思いますが、そもそも「純喫茶」とは、昭和初期に存在した「不純」な喫茶店との区別のために生まれた呼び名です。

日本で本格的な喫茶店/カフェーが発展し始めたのは、明治後期〜大正初期のこと。当初は作家や芸術家たちの溜まり場、交流サロンのような立ち位置でしたが、関東大震災を境に個人経営の小さな店が増えていくにつれ、女給(ウエイトレス)が隣に座って接待するサービスをウリにする店が増えていきます。

その後、風紀の乱れが問題視され、女給の接待サービスを提供している店は規制を受けます。その際、「酒類を提供し、女給が接待をする店=特殊喫茶」という扱いになりました。そして、「酒を出さず女給の接待もない店=純喫茶」と呼ばれるようになったのです。

「不純喫茶ドープ」は、「酒類を提供する」の意味で「不純」を使っています。女給さんの接待はありませんので(当たり前ですが)、お間違いなきよう。

近年、「新しくオープンしたお店だけど、昔懐かしいレトロな雰囲気がある喫茶店」が「ネオ喫茶(ネオレトロ喫茶)」として話題にのぼることも多いですが(下北沢の喫茶ネグラなど)、不純喫茶ドープはまさに「ネオ喫茶」です。

こちらは、もともと「カフェ ヴェルデ」という喫茶店だったそうで、店内の内装は、その当時のものをほとんどそのまま使用しているようです。

内装はしっかりレトロですが、店員さんやお客さんは比較的若い方が多く、かかっている音楽もポップな感じ。そして、お会計は現金不可・キャッシュレス決済のみ。このハイブリッドなところがまさに「ネオ喫茶」なんだろうな、と。

17時以降の「喫茶酒場タイム」には、ビールやサワーなどのお酒も提供。喫茶店の定番メニュー・クリームソーダにも、お酒バージョンの「クリームソーダハイ」があるんです。

こちらはナポリタン(580円)。たまねぎとベーコンとケチャップにこしょうがぱらり、というシンプルな味つけです。太麺のやわらかめの食感が、なんだか郷愁を誘います。

たまごサンド(580円)は、ゆで卵をつぶしてマヨネーズであえたものではなく、だし巻きたまごが挟んであるタイプ。パンに塗られたからしマヨネーズが、ピリリと味にアクセントを加えています。

どちらも量は少なめなので、一人前のつもりで頼むと「あれ?」となるかも。
同じメニューでも昼間の「喫茶タイム」と夜の時間帯の「喫茶酒場タイム」では値段や量が違っていて、「喫茶酒場タイム」のフードはどれも量が少なめのようです。何種類か頼んでお酒と一緒につまむ想定なんでしょうね。

お酒の提供がストップしていた時期に伺ったので、クリームソーダ(580円)はノンアルバージョン。
クリームソーダは、ソーダ(青)、メロン(緑)、はちみつレモン(黄)、いちご(ピンク)の4色展開です。

「不純喫茶ドープ」のコンセプトは、「せつない気持ちのゴミ捨て場 夜になると開きたくなる扉」。夜にしっぽりと過ごすのにぴったりなお店です。

ちなみに「ドープ(dope)」は、「不純物を添加すること」、またスラングで「最高、やみつき」という意味なんだとか。“レトロだけど新しい”なんとも不思議な空間は、たしかにやみつきになりそう。

今度伺った際には、お酒片手に不純な夜を過ごしてみたいものです。