新井薬師前駅の「薬師丸長」でらーめん。
久しぶりにここの麺が食べたくなり降り立つ新井薬師前。南口改札を抜けてそこ。年季を伝える色褪せた黄色のテントに黒字の「中華そば」と「丸に長」のマークに添い「薬師丸長」。1954年創業の丸長のれん会のお店。
11時16分で埋まる5席のカウンター。雷紋踊るえんじの暖簾から覗くガラスの扉越しに忙しく調理する店主を眺めて外で待つ。
少し待ち入れ替わりでお店の中へ。カウンターに座り見上げる壁に貼られるA4のコピー用紙に印刷されたひらがなとカタカナと少し交じる漢字のバランスがほのぼのとするメニュー。
その中でも目を引く同じ案内が3枚ずつ6枚並ぶ「塩らーゆつけそば」。薬師丸長オリジナルの平成28年5月から提供開始したさっぱりスープにマイルドなラー油が特徴のと謳いぐいぐいと推すコピー用紙。
昭和40年代から提供されている「つけそば」と「らーめん」にそれぞれ「ちゃーしゅう」に「やさい」と「ヤキソバ(ソース)」と「チャーハン」に「ビール」。麺を茹でてそれからソースで炒める「ヤキソバ」もずっと気になっているけれど今日はらーめんな日。
「らーめん」とお願いする。
鮮やかな青のタイルの壁の使い込まれた厨房で手際良く鍋を振り野菜を炒め、丼にタレと合わせてスープを作り、洗い物をして、予備のお冷をペットボトルに汲み冷蔵庫にしまい、茹であがる麺を平ザルでチャッチャッチャと上げ、素早く具をのせて提供する無駄の無い所作の寡黙な店主。
頃合いで「いらっしゃい」、「ありがとうございました」と織り交ざる丁寧な顔。
何度かよそ様に手渡される麺を見送る後に「らーめん」。茶の汁に詰まる黄色の麺。桃色のチャーシューに濃く茶に染まるメンマと粒々と黒胡椒が浮くしっとり濡れそぼつソソる麺顔にしばらく見惚れる。
いただきますとレンゲを持ちそっと啜るスープは角がほんのり立つ切れのいい醤油のスープ。ふわりと魚が薫り、ほどよく散る粒の胡椒のスパイシーの刺激が口に広がり鼻を抜けてく。うん、沁みる。
持ち上げて箸にかかる重みが期待に変わる太めで平打ちのストレートでブルんブルんな瑞々しい麺。勢いよく啜ると駆け落ちる喉越しに噛みしめてパツンの歯切れとモチムニのみっちりと小麦が詰まる歯応え。
噛み締めるほどに旨みが出る肉をこれでもかと噛み締めてその旨みを存分に味わい、味染むが目でわかる濃い茶の柔らかなメンマをクニクニと弄ぶ。
ただ麺を啜るしあわせ。最強だと思うここの麺。ずっと啜っていたいと心から思う。満足。平らげてすこし余韻に浸り脳に焼き付けてお会計をして駅に戻る。
ごちそうさまでした。