別名‟あじさい寺”。ヒメアジサイが境内を青色に染める『明月院』
鎌倉でアジサイといえば、真っ先に名があがるのがココ。境内に植えられたアジサイは約2500株あり、その多くが日本古来のヒメアジサイ。明月院ブルーと称される花が咲くと、境内は青色に染まる。もっとも花が多いのが総門から中門まで一直線に伸びる石段の参道両側。「あじさい寺」の異名にふさわしい見事な導入部になっている。開山堂前に鎮座する花想い地蔵が抱える鉢にもアジサイが添えられ、映えスポットになっている。
静寂の中、寺と花の風情を楽しめる『東慶寺』
女性から離縁をできなかった江戸時代に、この寺に駆け込めば離縁できたことから「縁切り寺」と呼ばれる。まずは、茅葺き屋根の山門前の石段脇でアジサイに迎えられる。鐘楼周辺、石畳の参道脇、本堂周辺など、境内でも随所でアジサイが咲き、庭園やお堂と一体となった風情のある花景色を見せてくれる。現在、境内では自然の豊かさを取り戻すため大地の再生を進めているので、今後のアジサイの景観も一層趣深いものになるだろう。
江ノ電とアジサイのコラボが美しき『御霊神社』
後三年の役(1083~1087)に活躍した鎌倉権五郎景正を祀る神社で、「権五郎神社」とも呼ばれる。普段は静かな境内だが、アジサイの時季は参拝者が増える。社殿の周辺にアジサイが咲くが、12基の庚申塔を見守るように咲くアジサイは、花の数は少ないが風情がある。そして、ここでぜひ見てもらいたいのが、神社のすぐ前を走る江ノ電とアジサイが一体となった絶景だ。
原種のアジサイが多く楽しめるツウな『光則寺』
日蓮聖人が佐渡へ流された際に弟子の日朗上人が幽閉されていた寺で、境内の裏山には土牢が残っている。鎌倉一の大樹といわれる本堂前のカイドウが有名だが、日本古来のアジサイの原種が多いことはあまり知られていないようだ。光則寺で栽培されるアジサイは400種類を超すというから驚き。多くは鉢植えで栽培され、花が咲くと境内に展示される。品種や自生地などを書いたラベルを掲げているので鑑賞の助けになる。
歴史的建造物とともに愛でる花景色『円覚寺』
鎌倉五山第二位の格式をもち、国宝の舎利殿をはじめ、壮大な三門や仏殿など多くの歴史的建造物が立ち並ぶ境内は見ごたえがある。6月になると、横須賀線線路脇の白鷺池周辺をはじめ、山門、仏殿脇、法堂跡、方丈に向かう参道沿い、佛日庵などでアジサイが色づきはじめ、花を目的に訪れる参拝者が増える。境内全域では約2500株といわれ、品種も多いので、堂宇と一体となった花景色は見る者を魅了する。
烏天狗の像に迎えられ半僧坊の道にアジサイが咲く『建長寺』
鎌倉五山第一位の格式をもつ、日本最初の禅宗専門道場。法堂天井の雲龍図をはじめ、国宝の梵鐘、国の名勝史跡の方丈庭園など見どころが多い。三門、仏殿、法堂、方丈など、広い境内の随所でアジサイが咲くが、ここでぜひ訪ねてほしいのが、総門から徒歩15分ほどのところにある半僧坊への道。沿道に咲くアジサイは、西洋アジサイやガクアジサイ、ヤマアジサイなどさまざまな品種があり、同じ頃、イワタバコも見られる。
起伏のある花の散策路でアジサイに埋もれる『長谷寺』
観音山の中腹から裾野にかけて広がる境内は起伏があり、境内は山門や書院がある下部と、本尊の十一面観世音菩薩像を安置する本堂がある上部に分かれる。「花の寺」として知られ、一年を通じてさまざまな花が咲くが、なかでも規模が大きいのがアジサイで、上部境内の眺望散策路沿いに約40種約2500株が咲き誇る。花を縫うように設けられた散策路からは由比ヶ浜が望め、花と海とお堂が一体となった見事な景観を楽しめる。
ちょっと遅咲きのアジサイ。最盛期を見逃した人は『妙本寺』へ
市街地からさほど離れていないが、比企谷と呼ばれるこのあたりは多くの自然があふれている。春のサクラとカイドウ、秋の紅葉が有名だが、夏の花景色も訪れる価値がある。方丈に向かう階段脇、二天門に続く参道、本堂前、鐘楼や日蓮聖人像周辺など、さまざまなところでアジサイが咲く。鎌倉のなかでは開花が遅いほうなので、7月中旬くらいまで花を楽しめる。アジサイに続いて咲くノウゼンカズラも見事だ。
観光客はまばら。地元の人しか知らない穴場の『白山神社』
源頼朝が京都の鞍馬寺から賜った毘沙門天像を安置するために建立したと伝わる古社。今泉地域の氏神様になっている。バス通りから奥まったところにある石段を上ると、参道を紫やピンクに染めるアジサイに迎えられる。アジサイは氏子たちが管理しているもので、花が終わると剪定をして次の年に備えるのだという。鎌倉市街とはアクセス路が異なる地にあるため訪れる人も少ない穴場だ。
竹林とアジサイのコラボが楽しめる『報国寺』
竹の庭で知られるが、庭園を彩るアジサイの美しさも印象深い。鎌倉街道から脇道を進むと、山門前の植え込みに咲くアジサイに迎えられる。寺を囲む竹垣近くでもアジサイが見られ、あたりには和の情緒が漂う。竹林に向かう小径や、石塔と数体の石仏が並ぶ庭園の一角など、咲いている場所によって趣が異なるので、ゆっくり庭園散策を楽しもう。竹林とアジサイのコラボは、ぜひ撮影しておきたい映え構図だ。
カフェや茶寮を併設した境内に白いアナベルが咲く『浄妙寺』
鎌倉五山第五位の格式をもち、ウメ、ボタン、フジなどが咲く花の寺としても知られる。境内随所でアジサイを見られるが、カフェレストラン『石窯ガーデンテラス』前に咲くアナベルの白い花群落は見ごたえがある。裏山には「山あじさい小径」と名付けられヤマアジサイの散策路(見頃は5月)もある。花観賞の後は、『石窯ガーデンテラス』で紅茶を。『喜泉庵』では抹茶も味わえる。
市民が挿し木を持ち寄り、ボランティアでつくった花の道『二階堂』
鎌倉宮から瑞泉寺に向かう道は、緑が多い静かな住宅地。通玄橋を渡るとすぐに、崖の斜面を埋め尽くすようにアジサイが咲いている。このあたりは、かつて観光客が捨てるゴミで荒廃していたという。見かねた地元の人々が、アジサイの挿し木を持ち寄り、環境美化のために植えたもので、今では400株を数える花名所になっている。青、紫、白、ピンクなどさまざまな色や品種があるのも市民たちが持ち寄ったことを物語っているといえよう。
縁結びの神社の参道を飾る色とりどりの大輪の花『葛原岡神社』
鎌倉幕府倒幕で活躍した日野俊基を祭神とする神社。縁結びや恋愛成就の御利益があるといわれ、境内に置かれた2つの縁結びの石をつなぐ赤い糸には、「ご縁」の願いを込めた5円玉が結ばれている。アジサイが植えられているのは鳥居から本殿に続く石畳の参道沿いで、青、紫、ピンクなど色とりどりの花に包まれる。アジサイの名所としては、まだ知名度が低いが、この美しさを知ったら来年もまた来たくなるのでは……。
アジサイと海と江の島と富士山をまとめて楽しめる『稲村ガ崎公園』
由比ケ浜と七里ケ浜を分ける岬にある公園。園内随所にアジサイが植えられているが、数が多いのが公園奥の展望広場周辺。天気が良い日にはアジサイとともに海と江の島と富士山を一望することができるビューポイントだ。鎌倉に住み、この地を愛したドイツの細菌学者ロベルト・コッホの記念碑もアジサイに囲まれている。
構成=アドグリーン