同じ年月を支え合ってきたマキと本堂『覚園寺』

樹齢は600~700年。老樹のため、木の中は人が入れるような空洞がある。左巻きにねじれているのも特徴的だ。
樹齢は600~700年。老樹のため、木の中は人が入れるような空洞がある。左巻きにねじれているのも特徴的だ。

案内付きの拝観は、薬師三尊坐像などの仏像、本堂薬師堂を中心とするお堂などを、約50分かけて巡る。寺の始まりは、北条義時が大倉薬師堂を建立した建保6年(1218)。今の本堂は、足利尊氏が再建したもので、改築されながらも、その時代の面影を色濃く残す。境内には本堂と同じ年月を過ごしてきたマキのほか、ツバキ、ナツグミなどが立つ。案内時、木々の解説は少ないが、そっと目を向けて、名木を愛でたい。

「このマキはお寺の歴史を一番知っている」と、覚園寺の仲田順昌住職。
「このマキはお寺の歴史を一番知っている」と、覚園寺の仲田順昌住職。
黒地蔵堂の裏にひっそりと立つ「太郎庵」と呼ばれるツバキ。別名「覚園寺椿」という。太い幹が3つに分かれているのが大きな特徴だ。
黒地蔵堂の裏にひっそりと立つ「太郎庵」と呼ばれるツバキ。別名「覚園寺椿」という。太い幹が3つに分かれているのが大きな特徴だ。
拝観受付所のすぐ先にあるナツグミ。1代目は老樹のため添え木で支えているが、その子供の2代目はまっすぐ屹立している。
拝観受付所のすぐ先にあるナツグミ。1代目は老樹のため添え木で支えているが、その子供の2代目はまっすぐ屹立している。

『覚園寺』詳細

住所:鎌倉市二階堂421/営業時間:10 :00~ 15:00の1時間ごと(平日の12:00を除く)に、お寺さんが境内を案内(50分)/アクセス:JR横須賀線・江ノ島電鉄鎌倉駅から京浜急行バス「鎌倉宮(大塔宮)」行き8分の終点下車10分。

静かな佇まいに心洗われる寺『浄光明寺』

「泉涌寺派はお堂前にマキを植える風習があった説もある」と、大三輪龍哉住職
「泉涌寺派はお堂前にマキを植える風習があった説もある」と、大三輪龍哉住職

鎌倉時代中期、第5代執権北条時頼、第6代執権北条長時が創建した、真言宗泉涌寺派の寺。境内は、三段の雛壇状になっており、二段目には、本堂や土紋と呼ばれる鎌倉地方特有の装飾技法を用いた阿弥陀如来像が祀られ、三段目には、綱引地蔵が安置されている。本堂に寄り添って佇むマキの大木が、人の目を惹きつける。さらに、非公開ながら、客殿裏の岩肌が露出した崖から垂れ下がるように生えているビャクシンも美しい。

岩肌が露出した崖の上から、下に伸びるビャクシン。この景観を狙って植えたのか、偶然の産物であるかはわかっていない。非公開。
岩肌が露出した崖の上から、下に伸びるビャクシン。この景観を狙って植えたのか、偶然の産物であるかはわかっていない。非公開。
数年前の大雪で、マキの一部の枝が折れた。「その枝を使って、仏師さんに土紋付きの仏像を作ってもらっています」(大三輪住職)。
数年前の大雪で、マキの一部の枝が折れた。「その枝を使って、仏師さんに土紋付きの仏像を作ってもらっています」(大三輪住職)。
山門を入ってすぐ、客殿の横には、立派な菩提樹があり、6月中旬に花を咲かせる。
山門を入ってすぐ、客殿の横には、立派な菩提樹があり、6月中旬に花を咲かせる。

『浄光明寺』詳細

住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷2-12-1/営業時間:10:00~16:00/定休日:月~水・金・雨天時/アクセス:JR横須賀線鎌倉駅から徒歩15分

中国式鐘楼門が珍しい禅宗寺院『浄智寺』

本堂「曇華殿」の背後にそびえ立つコウヤマキは、鎌倉随一の大きさを誇ると言われる。木の根元には、小さな仏像が安置されている。
本堂「曇華殿」の背後にそびえ立つコウヤマキは、鎌倉随一の大きさを誇ると言われる。木の根元には、小さな仏像が安置されている。

鎌倉の禅宗寺院を代表する鎌倉五山第4位のお寺。最初の住職が中国僧であったためか、山門は、中国式鐘楼門という様式を取り入れている。全盛期は、今の10倍の広さだったとも言われる。境内では、寺の本尊である過去・現在・未来を象徴する木造三世仏坐像や布袋様などが人気だ。一方で、自然が豊かな浄智寺は、コウヤマキ、タチヒガンザクラ、ビャクシンの3種の天然記念物があるなど、名木の名所でもある。

拝観受付の背後にあるタチヒガンは、ソメイヨシノよりも7~ 10日早く咲き誇る桜。樹齢120 年ともいわれる古木だ。
拝観受付の背後にあるタチヒガンは、ソメイヨシノよりも7~ 10日早く咲き誇る桜。樹齢120 年ともいわれる古木だ。
参道入り口には、鎌倉十井の一つである名水甘露の井と太鼓橋がある
参道入り口には、鎌倉十井の一つである名水甘露の井と太鼓橋がある

『浄智寺』詳細

心洗われる坐禅を体験『建長寺』

仏殿内部に鎮座する本尊・地蔵菩薩坐像。
仏殿内部に鎮座する本尊・地蔵菩薩坐像。

「鎌倉の坐禅会って、敷居が高そう」――。そう思っている人におすすめしたいのが、鎌倉五山第一位・建長寺で、毎週金・土曜に開催される「建長寺坐禅会」だ。坐禅前に、和尚から手と足の組み方や目線など、坐禅の基本を教えられ、初心者でも参加しやすい。とはいえ、坐禅は、無念夢想の境地で精神統一するというもの。真剣な気持ちで参加したい。建長寺の御本尊である「地蔵菩薩」に合掌一礼してから、坐禅会に臨むのもよいだろう。

『建長寺』詳細

静寂に支配された美しき竹林『英勝寺』

爽やかな道を歩く
爽やかな道を歩く

鎌倉の竹林の寺といえば、報国寺が有名だが、それに負けず劣らず美しいのが、英勝寺の竹林だ。竹林の中を縫うように散策路が整備されており、前後左右、そして頭上まで竹に囲まれたような道を歩くことができる。英勝寺は、徳川家康の側室、お勝の方(英勝院)が寛永13年(1636)に建立した、鎌倉に現存する唯一の尼寺。竹林の周辺には、代々住職を務めた水戸徳川家の姫君の住まいがあったという。そんな在りし日の面影も偲のびたい。

『英勝寺』詳細

住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-16-3/営業時間:9:00〜16:00/定休日:木/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩10分

滝の音が静かに響く、鎌倉の秘境の寺『称名寺』

山に囲まれた自然豊かな鎌倉の寺には、あまり知られていないが、滝が流れ落ちるスポットもある。空海によって開かれたとされる霊場「称名寺(今泉不動)」にひっそり流れる「陰陽の滝」だ。滝の音に耳を傾けながら、マイナスイオンが浴びられる心癒やされる空間だ。天園ハイキングコースにもつながり、登山の途中で立ち寄るのもいいだろう。なお、このあたりはホタルの生息地として知られていて、6月上旬はホタル観賞もできる。

『称名寺』詳細

住所:鎌倉市今泉4-5-1/営業時間:8:00 ~17:00/アクセス:JR・湘南モノレール大船駅より江ノ電バス「鎌倉湖畔循環」行きバス13分の「今泉不動」下車5分

一面に広がる緑の絨毯に見惚れる『妙法寺』

別名「鎌倉の苔寺」
別名「鎌倉の苔寺」

鎌倉のアジサイは、梅雨の時季に見頃を迎えるが、じつはもう一つ、この時季に見逃せない植物がある。それが苔だ。鎌倉・大町にある妙法寺は、苔に一面が覆われた石段が有名で、それゆえ「鎌倉の苔寺」と呼ばれている。仁王門から釈迦堂跡に続く苔の石段は、保護のために立ち入りはできないが、その脇に別の階段が設けられており、上からも下からも、苔の石段を堪能できる。緑の絨毯を敷いたような苔の石段の美しさを味わっていただきたい。

『妙法寺』詳細

住所:神奈川県鎌倉市大町4-7-4/営業時間:9:30~16:30/定休日:※7月中旬~9月中旬、12月中旬~3月中旬は、土・日・祝のみ見学可/アクセス:JR横須賀線鎌倉駅から徒歩15分

蓮池のある庭園を望み、精進料理を味わう『光明寺』

鎌倉には、お寺でも精進料理をいただけるところがいくつかあるが、材木座にある光明寺もその一つ。光明寺の庭園は、小堀遠州ゆかりの浄土庭園(記主庭園とも呼ばれる)で、その庭園を望みながら、お昼に精進料理を味わえるのだ。料理は3日前までの予約制で、蓮月御膳(4500円)と記主御膳(5500円)の2つから選ぶ。個室(大聖閣)を希望する場合は6500円。大聖閣の前は池が広がり、夏になると大賀ハスが咲き誇る。

『光明寺』詳細

住所:神奈川県鎌倉市材木座6-17-19/営業時間:7:00~ 16:00(夏季は6:00 ~ 17:00)/アクセス:JR横須賀線鎌倉駅から京浜急行バス「小坪経由逗子駅」行き10分の「光明寺前」下車1分

凛とした雰囲気の中、お抹茶をいただく『浄妙寺』

鎌倉の寺で歴史を感じながらお茶をいただくのは格別だが、鎌倉五山第五位の名刹・浄妙寺内にある喜泉庵でも味わえる。天正年間(1573~1592)に建てられた茶室を復興した、由緒あるお茶処だ。水琴窟の音色をBGMに、鎌倉には珍しい枯山水庭園を愛でながら、お抹茶を味わうのは至福。お茶請けは、生菓子と干菓子から選べる。ちなみに、浄妙寺の境内には、洋館を改装したカフェ&レストラン『石窯ガーデンテラス』も併設されている。

『浄妙寺』詳細

住所:鎌倉市浄明寺3-8-31/営業時間:9:00~16:30(喜泉庵は10:00~16:30)/アクセス:JR横須賀線・江ノ島電鉄鎌倉駅から京浜急行バス「金沢八景」「ハイランド循環」など行き10分の「浄明寺」下車1分

(クレジット)
取材・文=永峰英太郎 構成=前田真紀 撮影=小島真也、岡克己