同じ年月を支え合ってきたマキと本堂『覚園寺』
案内付きの拝観は、薬師三尊坐像などの仏像、本堂薬師堂を中心とするお堂などを、約50分かけて巡る。寺の始まりは、北条義時が大倉薬師堂を建立した建保6年(1218)。今の本堂は、足利尊氏が再建したもので、改築されながらも、その時代の面影を色濃く残す。境内には本堂と同じ年月を過ごしてきたマキのほか、ツバキ、ナツグミなどが立つ。案内時、木々の解説は少ないが、そっと目を向けて、名木を愛でたい。
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静かな佇まいに心洗われる寺『浄光明寺』
鎌倉時代中期、第5代執権北条時頼、第6代執権北条長時が創建した、真言宗泉涌寺派の寺。境内は、三段の雛壇状になっており、二段目には、本堂や土紋と呼ばれる鎌倉地方特有の装飾技法を用いた阿弥陀如来像が祀られ、三段目には、綱引地蔵が安置されている。本堂に寄り添って佇むマキの大木が、人の目を惹きつける。さらに、非公開ながら、客殿裏の岩肌が露出した崖から垂れ下がるように生えているビャクシンも美しい。
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中国式鐘楼門が珍しい禅宗寺院『浄智寺』
鎌倉の禅宗寺院を代表する鎌倉五山第4位のお寺。最初の住職が中国僧であったためか、山門は、中国式鐘楼門という様式を取り入れている。全盛期は、今の10倍の広さだったとも言われる。境内では、寺の本尊である過去・現在・未来を象徴する木造三世仏坐像や布袋様などが人気だ。一方で、自然が豊かな浄智寺は、コウヤマキ、タチヒガンザクラ、ビャクシンの3種の天然記念物があるなど、名木の名所でもある。
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心洗われる坐禅を体験『建長寺』
「鎌倉の坐禅会って、敷居が高そう」――。そう思っている人におすすめしたいのが、鎌倉五山第一位・建長寺で、毎週金・土曜に開催される「建長寺坐禅会」だ。坐禅前に、和尚から手と足の組み方や目線など、坐禅の基本を教えられ、初心者でも参加しやすい。とはいえ、坐禅は、無念夢想の境地で精神統一するというもの。真剣な気持ちで参加したい。建長寺の御本尊である「地蔵菩薩」に合掌一礼してから、坐禅会に臨むのもよいだろう。
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静寂に支配された美しき竹林『英勝寺』
鎌倉の竹林の寺といえば、報国寺が有名だが、それに負けず劣らず美しいのが、英勝寺の竹林だ。竹林の中を縫うように散策路が整備されており、前後左右、そして頭上まで竹に囲まれたような道を歩くことができる。英勝寺は、徳川家康の側室、お勝の方(英勝院)が寛永13年(1636)に建立した、鎌倉に現存する唯一の尼寺。竹林の周辺には、代々住職を務めた水戸徳川家の姫君の住まいがあったという。そんな在りし日の面影も偲のびたい。
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滝の音が静かに響く、鎌倉の秘境の寺『称名寺』
山に囲まれた自然豊かな鎌倉の寺には、あまり知られていないが、滝が流れ落ちるスポットもある。空海によって開かれたとされる霊場「称名寺(今泉不動)」にひっそり流れる「陰陽の滝」だ。滝の音に耳を傾けながら、マイナスイオンが浴びられる心癒やされる空間だ。天園ハイキングコースにもつながり、登山の途中で立ち寄るのもいいだろう。なお、このあたりはホタルの生息地として知られていて、6月上旬はホタル観賞もできる。
『称名寺』詳細
一面に広がる緑の絨毯に見惚れる『妙法寺』
鎌倉のアジサイは、梅雨の時季に見頃を迎えるが、じつはもう一つ、この時季に見逃せない植物がある。それが苔だ。鎌倉・大町にある妙法寺は、苔に一面が覆われた石段が有名で、それゆえ「鎌倉の苔寺」と呼ばれている。仁王門から釈迦堂跡に続く苔の石段は、保護のために立ち入りはできないが、その脇に別の階段が設けられており、上からも下からも、苔の石段を堪能できる。緑の絨毯を敷いたような苔の石段の美しさを味わっていただきたい。
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蓮池のある庭園を望み、精進料理を味わう『光明寺』
鎌倉には、お寺でも精進料理をいただけるところがいくつかあるが、材木座にある光明寺もその一つ。光明寺の庭園は、小堀遠州ゆかりの浄土庭園(記主庭園とも呼ばれる)で、その庭園を望みながら、お昼に精進料理を味わえるのだ。料理は3日前までの予約制で、蓮月御膳(4500円)と記主御膳(5500円)の2つから選ぶ。個室(大聖閣)を希望する場合は6500円。大聖閣の前は池が広がり、夏になると大賀ハスが咲き誇る。
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凛とした雰囲気の中、お抹茶をいただく『浄妙寺』
鎌倉の寺で歴史を感じながらお茶をいただくのは格別だが、鎌倉五山第五位の名刹・浄妙寺内にある喜泉庵でも味わえる。天正年間(1573~1592)に建てられた茶室を復興した、由緒あるお茶処だ。水琴窟の音色をBGMに、鎌倉には珍しい枯山水庭園を愛でながら、お抹茶を味わうのは至福。お茶請けは、生菓子と干菓子から選べる。ちなみに、浄妙寺の境内には、洋館を改装したカフェ&レストラン『石窯ガーデンテラス』も併設されている。
『浄妙寺』詳細
(クレジット)
取材・文=永峰英太郎 構成=前田真紀 撮影=小島真也、岡克己