ゆっくり安堵できるそば処。『手打ち蕎亭 なる堵』[狭山市]
店主の岩堀さんご夫妻は、夫の直二さんの定年退職後、二人でそば打ち学校へ通い、この店を開業。茨城の常陸秋そばを使った二八そばは、やや細打ちながらも歯応えがあり、香りも良い。蕎麦と6種類のミニ丼の中から選ぶミニ丼セット、かつお節の旨味と辛味大根のさっぱり感にはまる福井名物・越前おろし蕎麦で試したい。酒の肴やコース料理などメニュー幅も広く、住宅地にありながらも昼時には混雑する地元で評判のそば処だ。
『手打ち蕎亭 なる堵』店舗詳細
一皿一品を作品に見立てた美しい料理。『レストラン 一国』[新狭山]
フレンチと和食をそれぞれ6~7年間修業した国田英喜シェフが作る料理は、和洋いいとこ取りの創作料理。昼夜とも、お肉のオーブン焼き、鮮魚のソテー、パスタなど、日替わりのメイン料理から1品を選ぶコースのみ。前菜の数やデザートなどで料金が変わる。シェフの自慢はパイ包み焼き。地鶏やハンバーグ、鮮魚など毎日数種類が用意される。盛り付けの参考に山水画を学んだというシェフの料理は、季節感や立体感の表現にも注目したい。
『レストラン 一国』店舗詳細
本場仕入れの乾物と自家菜園の野菜。『中国家庭料理 蓮華』[入曽]
畑に囲まれポツンと営むが、店内は厨房からの調理音で活気に満ちている。店主は中華一筋の蓮見年男さん。「僕の料理を目指して来て」と、あえて辺境で独立した。看板は、陳麻婆豆腐。刺激がすぅっと抜ける青山椒や、じんわりくる紅山椒など、香辛料や調味料で巧みに調節する辛さは4段階。燃える口に滑らかな木綿豆腐をはふはふ運べば、五臓六腑が動き出すようだ。仕入れと料理探求のため、頻繁に中国へ。
『中国家庭料理 蓮華』店舗詳細
県内外の自然の幸に感謝して味わう。『郷土料理ともん』[入間]
「定休日は“仕入れ”と称して、川で魚、山でキノコや山菜を採ってくるんです」。渓流釣り名人の戸門秀雄さんと妻のみね子さんで営んできたが、近年、息子の剛さんが加わりパワーアップ! この日は、冬の貴重なタンパク源、寒雑魚がお目見え。ほくっとした身の微かな苦みが、日本酒を誘う。培ってきた産地とのつながり、自然との関わり、経験が織りなす料理を前に、この豊かさよ永遠にと願う。
『郷土料理ともん』店舗詳細
高級食材で作り上げた至高の一杯。『麺.SUZUKI』[武蔵藤沢]
「高級食材だけで作ったら、どんな味がするんだろう」。常連さんの声を聞いた店主の鈴木貴弘さんは、名古屋コーチン、比内地鶏、青森シャモロック、長州黒かしわの4地鶏で実践開始。配合、温度帯で異なる旨味、重ね方を追求し、深い味わいのスープに仕上げた。また、国産小麦をこね、製麺機にかけた麺は、なめらかな舌触りとしなやかな弾力。味変アイテムを付ければ華やぐ香りに刮目する。
『麺.SUZUKI』店舗詳細
南イタリアのマンマの味にニンマリ。『Via Mare』[新狭山]
ショーケースに並ぶのは、テイクアウト可能な総菜やスイーツの数々。店主の吉崎晶子さんはナポリ周辺のカンパニア州で腕を磨き、「野菜が本当においしくて。今でも出かけます」と、郷土料理発掘に余念がない。手作りニョッキや豚ロースのグリルなど、しっかりディナーも用意するが、常連客の目当ては、近所の直売所仕入れの地元野菜で作る旬のイタリアン総菜。赤ワインと飲む時間が愛おしい。
『Via Mare』店舗詳細
ハラールの羊肉を使うパキスタン料理。『マンダニ インドカレー』[入間市]
店名はインドと付くが、パキスタン南部カラチ出身の店主・マンダニさんが、故郷の家庭料理を紹介。羊肉を使うのが特徴で、現地のスパイスと3種の豆を煮込む定番カレー「ダルゴーシュ」は、マトンの弾力と柔らかさに驚く。羊の脳みそカレー「ブレインマサラ」など、通うと出合える限定メニューもある。「“ハラール”(イスラム教徒も食べられる)材料で愛も入れて作りますよ」。チャイの茶葉も自慢。
『マンダニ インドカレー』店舗詳細
野菜農家も器作家もご近所つながり。『ウェロニカ・ペルシカ』[仏子]
「地元のものにフレンチらしい食材を合わせて、仏子ならではのひと皿を」。祖母の家を改装して約10年前に独立したオーナーシェフ・横田哲也さんは、近隣の優れた産物を探し続けている。冬のメインは、赤身ながらしっとり柔らかいアイルランド産のヘアフォード牛に、親しい農家が作る赤キャベツや紫芋、ハーブを加えた日高市産ヨーグルトを添えて。控えめな彩りが温かく、親しみがふっと湧く。
『ウェロニカ・ペルシカ』店舗詳細
夫婦の豚愛が満載の相盛り丼。『炭火焼き豚丼 松風』[狭山市]
夫婦で日本中をツーリングする中、村松勝さんは帯広で豚の蒲焼丼に惚れ込んだ。片や真紀さんは幼い頃から秩父の味噌漬け丼が大好物。侃々諤々の末、仲良くハーフ&ハーフにし「合い盛り丼の発祥です!」と胸を張る。醤油ダレを付け焼きし、味噌漬けにした豚も炭火焼き。丼に咲く柔らかな豚肉の花は、醤油の香ばしさ、やさしい味噌の匂いが交互に押し寄せる。茶漬けでさらさら締めるのもいい。
『炭火焼き豚丼 松風』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ)、速志淳・千葉香苗(アド・グリーン) 撮影=加藤熊三、原 幹和、オカダタカオ、井原淳一、猪俣慎吾