鉄と古材で作る調度品は全て特注の一点物

カウンター6席と、4席のテーブル1卓。窓際にはスタンディング席もある。
カウンター6席と、4席のテーブル1卓。窓際にはスタンディング席もある。

扉を開けると、まず目にするのは大きな木製カウンター。デコボコとした表面の木の風合いが味わい深い。このカウンターのほか、椅子やランプシェード、鉄製の扉などの調度品も、店のために作られた特注品だ。その証拠に椅子の背もたれには店名の『OTTO』の文字が小さく刻まれている。

これらは、松戸の工房「アイアンワームプラス」を主催する伊香賀大祐(いこうがだいすけ)さんの手によるものだ。主に鉄と古材を使った店舗什器や家具をデザイン含めて制作している。カウンターは、アメリカで100年以上の歴史を持つ民家で使われてきた古材だそう。

「古材は、まずレントゲンを撮ってみて中に釘などが入っていないか確かめるそうですよ。徹底してますよね」と、オーナーの鈴木孝宏さん。

おしゃれな雰囲気の中で焼き鳥を味わって欲しいと、インテリアには細部までこだわった。キッチンが客席よりも低いことも、その一つ。

「従業員の方が低い位置にいる方が、お客様にとって居心地良く過ごせると思っています。キッチンのスペースも広めなので、中まで見えるのがいいんです」と鈴木さん。

『OTTO』オリジナルポスター。よく見ると鶏がハイヒールを履いている。
『OTTO』オリジナルポスター。よく見ると鶏がハイヒールを履いている。

そんなモノトーンを貴重としたインテリアの中で、ひときわ映えるのがカラフルなポスター。美容師をしているオーナーの奥さんと交友があるというアイシングクッキーのアーティストのクッキーボーイが制作したポスターだ。クッキー・ボーイは、芸能人も顧客に持つというクリエイター。店名の『OTTO』はイタリア語で数字の「8」。縁起の良い末広がりの「八」の意味を込めた。

この他にも、トイレにはイギリス人アーティスト、ジャック・マクレーンさんがフリーハンドで描いた壁画がある。実は未完成なのもご愛敬。再び来日した時には完成品が見られるのかも知れないので、お楽しみに。

2年前にイギリス人アーティストが描き始めた壁画。完成したらサインを入れる約束だ。
2年前にイギリス人アーティストが描き始めた壁画。完成したらサインを入れる約束だ。

フレンチ、洋食、焼き鳥店、全ての経験が結集

濃厚フォワグラのクリームブリュレ くるみパン添え620円(税抜)。
濃厚フォワグラのクリームブリュレ くるみパン添え620円(税抜)。

『OTTO』のオープンは2018年。店主の鈴木孝宏さんは、洋食やフレンチの店で働き、その後、焼き鳥の名店で修業を積んだ。通常、焼き手になるまで数年はかかると言われている焼き鳥の世界で、仕込みのくし打ちを10ヶ月で卒業したそう。

「まだ焼き手になるのは早すぎると言われましたが、社長の前で焼いたらOKが出て、そのタイミングで、たまたま店にいた焼き手が辞めたので、バトンタッチできました。運ですね」と鈴木さんは謙遜するが、その裏には並々ならない努力があったのだろう。

焼き鳥のこだわりは串打ちと火加減。レバーの串打ちは全部同じ形に仕上げられるという。通常は開いた形で焼かれる鶏の心臓「はつ」も、開かずにそのまま焼いているので、旨味が逃げずジューシーな味わいになる。歯応えのある食感もたまらない。焼き鳥の他、自家製のキッシュ580円(税抜)や、アヒージョ、鮮魚のカルパッチョなどバル料理も多彩に用意している。パスタは生麺。カクテルの種類も豊富なのでデートにもおすすめだ。

おまかせ5本盛り合わせ960円(税抜)。左からレバー(タレ)、ふりそで(柚子胡椒)、かしわ(ケイジャン)、丸ハツ(塩)、手羽先(塩)。
おまかせ5本盛り合わせ960円(税抜)。左からレバー(タレ)、ふりそで(柚子胡椒)、かしわ(ケイジャン)、丸ハツ(塩)、手羽先(塩)。

焼き鳥の味付けはシオ・タレの他、柚子胡椒やバルサミコ醤油などなんと9種類もある。ケイジャンチキンでお馴染みのケイジャンや、ガーリックバターなどもあり、飽きさせない。さらに、スパイスは塩一つをとっても、厳選を重ねた岩塩をミキサーで砕いて使っているというこだわりよう。味噌ダレも手作りしている。

「焼き鳥は他の料理と違って味見ができません。塩加減も、その時次第です。味が薄いよりは、塩味が強い方が攻めている感じで好きなんです」と鈴木さん。そんな「攻め」の塩加減もぜひ、味わってみて欲しい。

「おいしい」の先を目指す。常に進化する店

ドアに貼られたポスターもおしゃれ。鉄製の扉はアイアンワームプラス製。
ドアに貼られたポスターもおしゃれ。鉄製の扉はアイアンワームプラス製。

エントランスに貼られたポスターや、店内のおしゃれなBGMも奥さんのチョイス。たまに替えられているそうなので、常連になったら楽しみが増えそうだ。隠れ家的な雰囲気が話題を呼んで、インスタグラムを見て興味を持ってきてくれるお客さんも多いそう。

今後の抱負を聞くと「(コロナ禍の)このピンチをチャンスに変えたいですね。おいしいのは当たり前。おいしいのその先を目指したいんです」と、鈴木さん。店の最新情報は、随時インスタグラムで更新しているので、チェックしてから来店しよう。

京成線沿いのマンション2階にある。窓に書かれた焼き鳥メニューが目印。
京成線沿いのマンション2階にある。窓に書かれた焼き鳥メニューが目印。
住所:千葉県船橋市本町4-4-12グラシア本町船橋2F/営業時間:17:00~23:00LO/定休日:日/アクセス:JR・京成本線船橋駅より徒歩2分

取材・文・撮影=新井鏡子