東京都無形民俗文化財に指定されている「世田谷ボロ市」。通称〝ボロ市通り〞を中心に約700の露店が並び、4日間で約70万人が訪れる一大マーケットだ。最近では地方や海外からの観光客も来るそうで、知名度は全国区といえるだろう。
ボロ市の歴史は今から440年以上前までさかのぼる。天正6年(1578)、関東地方を支配していた小田原城主北条氏政が、世田谷新宿と呼ばれた界隈に楽市を開いたのが始まりだ。「当時はまだ五街道が整備される前で、江戸から小田原に向かうのに大山街道が用いられ、この辺りは宿場町として栄えたんです。そこで市を開いて自由な行商を認めたのです」と教えてくれたのはボロ市保存会事務局長の村石圭樹さん。
その後、北条氏が豊臣秀吉に滅ぼされ、徳川の世になると楽市は衰退。かつて世田谷は、その地名が示す通り農村地帯で、楽市はやがて農具や古着、正月用品などが売り出される歳の市となって12月15日に開かれた。なかでも、農家の作業着の繕いや、わらじに編み込むと丈夫になるという布切れのボロが飛ぶように売れたという。それが「ボロ市」の由来だ。
お宝がザクザク見つかる!?
さすがにボロはもう売られていないが、通りを歩くと、骨董やアンティーク着物、植木、神棚、おもちゃ、古本と、あらゆるものが目に付く。北は青森から南は鹿児島まで全国から出店者が集まり、「ボロ市だけで一年間の生計が立つ店もある」という話からも、売り手のボロ市に懸ける意気込みが感じられる。これは選りすぐりの物に出合えるチャンス! というわけ。ちなみに、おすすめの時間帯は「人出が少し引く16~18時ぐらい。商品も比較的ゆっくりと見られて、値段交渉もしやすいですよ」。
また、ボロ市グルメの食べ歩きも醍醐味だ。飲食の出店は99軒。代官餅やボロ市まんじゅうといった名物のほか、地元飲食店が出すタンシチューや屋台のシャーピン(台湾風おやき)も人気。ホットワインや甘酒は冷えた体を温めてくれる。
買い物もグルメも満喫できるボロ市。「犬も歩けばマナ板に当る」なんてユニークな謳い文句を掲げた店もあるが、目的がなくても宝探し感覚でぶらぶら歩くのも実に楽しいのだ。そうそう、お出かけの際には防寒対策はお忘れなく!
取材・文・撮影=香取麻衣子 写真提供=世田谷区
『散歩の達人』2019年12月号より