13時までのお楽しみ! さつま揚げはやっぱり揚げたてが最高
突然だが、練り物ってどうやって作るかご存知だろうか。魚のすり身と塩や片栗粉、調味料などを混ぜたものを整形して油で揚げる。作り方は意外とシンプルだ。だが、問題は「魚のすり身」である。すり身をいちから作るのはとても手間がかかるため、冷凍のものを使うことが多くなっている。
ところが、この店では豊洲から仕入れた生の魚をさばくことから始まる。しかも魚は旬のものを入れるため、ときにはマグロが入ることもあるという。練り物といったら白身魚だと思っていたので、これはかなりの驚きだった。
店内ですり身にした魚に調味料を加えて練り、整形しては揚げていく。こうして次から次へとさつま揚げができていく様子は壮観だ。13時頃までにはすべての練り物が出来上がる。
ということは、揚げたてを楽しめるのはこの時間まで、ということ。ぜひ早めにスタートして、熱々を何も付けずに食べたい。
ニンジン、ネギ、ゴボウ、玉ねぎ、桜えびが入った五色揚げは、さつま揚げの弾力が強くぶりんぶりん。食材の歯ごたえも、シャキシャキからゴリゴリとさまざま。食べていて、とても楽しかった。
こだわりのだしと大根のおいしい関係
さあ、次はおでんだ。鶏ガラと昆布で作るこだわりのだしは、なくなり次第作って継ぎ足すシステム。ひっきりなしに客が来るこの店では、一日10回以上は継ぎ足すという。一体、どれだけのおでんを毎日煮ているのだろうか。
そんなおでんの中で、特に人気なのはやっぱり大根。2時間ほど下茹でした大根を、一度冷ましてからおでん鍋に入れて煮込む。
表面的に見えているおでんのその下で、大根予備軍、こんにゃく予備軍、ちくわぶ予備軍がひっそりと出番を待っている。3〜4時間ほど経つと食べごろだ。
大根は、さつま揚げから出た旨味と相まって、ふっくらやさしい味のだしが染み込んでいる。噛むたびに熱々の汁がじゅわっと溢れてくる。だしを吸ったさつま揚げは、そのまま食べるのとは違い、やわらかくて甘さが増したように感じた。
日本酒はすこーし残して「だし割」を楽しむべし!
店で出している丸眞正宗は、もともとは赤羽の「小山酒造」で造っていた地元の酒。しかし造り酒屋をやめてしまったため、現在はさいたま市の『小山本家酒造』が銘柄を引き継いでいる。
おでんセットの飲み物はやっぱり日本酒。すっきりした飲み口で、夏なら冷、冬なら熱燗がいい。
そして、おいしいからといって飲みきってはダメ! 3分の1くらい残して、丸健名物「だし割」(+50円)にしてもらおう。この店で立ち飲みする人のほとんどが飲むという伝説のメニューだ。さまざまな旨味や甘さの入ったおでんのだしと日本酒が混じり合う。心も身体もほっかほかの味に、思わずほーっと息をつきたい気持ち。すいすいと飲めるけれど、飲み過ぎにはくれぐれも注意だ。
これからもそのまま続けていきたい
昭和33年(1958)創業してから約70年間、ずっとおでん屋だ。10年ほど前に、初代が高齢を理由に引退。孫の高塚さんが2代目を継いだ。現在32歳と聞いて、若い!と思ったが、中学生の頃から店を手伝っていたというからかなりのベテランだ。
「変わらずにそのまま続けて行きたい」
と話す。なかなか貫禄のある横顔だった。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ