企業に関する発祥の地を見ていこう
多摩モノレールの高松駅近くには、「立飛企業株式会社発祥の地」碑がある。
戦前に「立川飛行機株式会社」として、この地で軍用機の生産を行ってきたことに由来するそうだ。現在会社は「立飛ホールディングス」となり、事業内容は不動産業が中心となったが、この「発祥の地」碑を見ると、はるか昔の様子を想像することができる。
学校の発祥の地と同様に、企業発祥の地の碑も、現在その地に企業が存在していない場合に設置されることが多いようだ。
一方京都の四条大宮には、全国に700店以上を展開する「餃子の王将」の第1号店、すなわち「餃子の王将発祥の地」があり、こちらは現在もにぎわっている。
通信関係から、アニメ、映画まで
企業そのもの、というより、企業活動から生まれた新たな産業が記念碑として残されることもある。名古屋や京都にあるNTTの敷地内では、「電話発祥の地」を発見することができた。
通信関係では、伊香保温泉に設置された「ケーブルテレビ発祥の地」碑などもある。
こうした産業に関連する碑は、やはり明治時代以降に日本で発展した分野に関するものが多いようだ。
中でも後に一大文化を構成していく「発祥の地」碑は、たとえば大泉学園駅の「日本アニメ発祥の地」や、調布の「調布映画発祥の碑」のように、造形も工夫を凝らしたものが多く見られる。
「文化的発祥の地」は歴史の古いものから新しめのものまで
産業に直接には関連しない、文化に関する発祥の地も見てみたい。名古屋のテレビ塔(現中部電力MIRAI TOWER)横には、松尾芭蕉が土地の青年俳人らと歌仙を興行したことに由来する「蕉風発祥の地」碑が設置されている。
高崎の少林山達磨寺は、天明の大飢饉の際に、当時の住職が張子のだるまを考案したとのことで「福だるま発祥の寺」をうたっている。
このように歴史の古いものから、1955年に漫才の常打寄席である「栗友亭」が開かれたことに由来する南千住の「東京漫才発祥の地」、1966年に美川憲一がリリースした「柳ヶ瀬ブルース」を記念して作られた岐阜の「柳ヶ瀬ブルース発祥の地」、1981年に狛江郵便局で初めて絵手紙教室が開催されたことに基づく狛江の「絵手紙発祥の地」など、比較的新しめの「文化的発祥の地」記念碑もある。
記念碑によって、何かが新しく生まれるワクワクを追体験できる
ここまでさまざまな「発祥の地」記念碑を見てきたが、やはりいちばん目を引くのは「ユニークな造形の発祥の地碑」だ。私がこれまで遭遇してきたさまざまな発祥の地碑の中で、一番気に入っているものは、愛知・小牧駅前に設置された「名古屋コーチン発祥の地」記念碑である。
旧尾張藩士の海部壮平・正秀兄弟によって作り出されたという名古屋コーチンを記念した像は、つがいのニワトリの間にタマゴが1つ置かれているデザインで、一目で何の像だかよくわかる。
何かが新しく生まれるというのは、ワクワクとうれしい気持ちになるものだ。今後も各地でさまざまに新しいものが生まれていくだろうが、できればどんどん「発祥の地」碑も作ってもらい、そのワクワクを追体験していきたい。
イラスト・文・写真=オギリマサホ