銀座線1000系

2012年4月11日より営業運転を開始。1編成につき6両連結で、全40編成(車両は240両)を有する。レール幅は標準軌の1435㎜で丸ノ内線や新幹線と同じ。16mの車両長は東京メトロ路線の全車両の中で最も短い。

開通90周年・100周年を見据え

暗い地下をも照らす、黄色いこのコは1000系。100年近い銀座線の歴史の中で車両は何代にも引き継がれてきたが、2012年から走り出した銀座線の顔だ。その導入理由は、先代・01系の更新時期を見据え、新技術で快適性を向上したいこと、そして東洋初の地下鉄として開通90周年(2017年)、100周年(2027年)を迎えるにあたり、新車導入を求める社内的機運なども大きかったという。

「開業時の旧1000形(がた)は日本初の技術も採用した画期的な電車でした。ですので新車両も“伝統×先端の融合”をコンセプトに、東洋初の地下鉄を彷彿とさせるデザインを採用する一方、数々の最新技術も取り入れたいと考えました」とは、設計に携わった東京メトロの下村雄祐(鉄道本部車両部 設備担当課長)さん。

 

車体でまず目につくのは旧1000形と同じレモンイエローと頭のチョコレート色。実は当時のベルリンの地下鉄を模した車体色で、地下でも晴れやかな明るさがあると採用されたそう。おでこに前照灯はあるが、旧1000形の1灯と違って2灯だ。「デザイン的な理由ではありますが、営団地下鉄時代の2000形にあった2灯式の車両を参考にしたとも聞いています」と下村さん。ちなみに前照灯はLEDで、当時前照灯に使用したのは日本初! 車内もLED化し、電力量は照明ベースで約40%減少したという。

が、技術面での目玉は、何と言っても急カーブの騒音低減対策だ。銀座線は道路に沿って上から開削工法で掘られたため、道なりの急カーブが多い。そのため曲線通過時に車輪とレールの摩擦で生じるきしみ音が長年の課題で、レールに油を撒くなどで対処してきた。だが、1000系には新たに技術開発した「操舵台車」を導入。地下鉄で初めての試みだった。

「台車好きにはたまらないものだそうですが(笑)、本当に難しい構造で、数えられないほど試験しました。だから初導入の日、乗車して隣に座ったお客様から『めっちゃ静かになった!』と聞いた時は、よかったー!と思いました。この仕事をしていて今までで一番うれしかったですね」。

ああ、そんな話を聞いてたら1000系が愛おしくなるでしょ。まだある魅力を確かめに乗りに行こう!

銀座線1000系に8つの質問

気になることはまだまだほかにも。あなた(1000系)のことをもっと知りたいから、直撃させてくださーい!

Q1 そもそも旧1000形はどんな車両だったの?

「地下鉄車両としては日本初で東洋初。当時木材が多かった車両と違って、地下を走ることから不燃材料にこだわった画期的な全鋼製車両だよ。ATS(自動列車停止装置)も搭載して最新鋭だったんだ」

Q2 操舵台車について詳しく教えて!

「通常の台車は車軸が動かない。でも操舵台車は曲線に沿って自動的に動くから外輪が大きく、内輪が小さく回りスムーズに走るんだ。しかも僕のは2本ある車軸のうち片軸だけ動く珍しいタイプ!」

Q3 地下鉄なのに踏切があるってホント?

「ホント。上野検車区に入るために、地下から地上に出て道路を渡る時に遮断機が下りるんだ。ビルの中に入っていくみたいで不思議な光景だから、ギャラリーも多くてちょっと照れくさいんだよね」

Q4 出番のない車両はどこにいるの?

「上野検車区(写真)とマークシティの中の車庫にいるよ。上野検車区には地上に7本、地下に13本のレールがあるんだ。銀座線は短いからレールに2編成入ることもあるよ」

Q5 車体の真ん中のラインカラーの意味は?

「オレンジは銀座線のテーマカラーなんだ。ただオレンジだけ引いても目立たないから、白と東京メトロのセカンダリーカラーと言われるダークブルーのラインも重ねているんだよ」

Q6 連結面の強化ガラス扉に描かれているのは何?

「浅草駅は雷門の提灯、上野駅はジャイアントパンダ、銀座駅はガス灯、渋谷駅はハチ公など、銀座線主要駅をアイコン化したものだよ。実はその配置も路線の形状を意識しているからたどってみてね」

Q7 車内でこだわった色はある?

「座席横の脇仕切りは桜柄をアクセントにしたピンク色。車内を優しい柔らかい印象にしたかったんだ。座席は銀座のレンガ街をイメージした模様と色、優先席は雷門の赤だって聞いてるよ」

Q8 2編成だけ特別な車があるってホント?

「2017年に出た特別仕様車だね。前照灯は1灯で、壁や床、座席の色、吊り手も旧1000形に似せ、真鍮風の手すりに古風な銘板、消灯時に点いた予備灯などもあって凝ってる。毎日普通に運行してるよ」

取材・文=下里康子 撮影=山出高士 一部写真提供=東京メトロ
『散歩の達人』2023年12月号より