特別な存在ではなく、日常に寄り添うパン

創業約100年の老舗『サンドイッチパーラー まつむら』は、水天宮前で元気に営業中。
創業約100年の老舗『サンドイッチパーラー まつむら』は、水天宮前で元気に営業中。

以前、銀座の有名店にいた『BEAVER BREAD』の割田健一さん。ある時「特別なパンじゃなくって、日常のパンを作りたい」と思い立ち、2017年、この店を始めた。割田さんの考える「町のパン屋」とは、地域の人々に必要とされるパン屋。当時、日本橋全体を見ればそれなりにパン屋はあったが、東日本橋に限ると「全然なかった」という。元々よく知っている土地だったので、どんな商品が好まれるか傾向は把握していた。読みは的中し客足は途切れることなく、今ではなんと地元のママたちに『BEAVER BREAD』の袋がサブバッグとして利用されるほど人気なのだとか。

『カワイイ ブレッド&コーヒー』の朝は早い。8時に店を開けるやいなや、出勤前のオフィスワーカーが朝食を調達しにやってくる。それ以降もカウンター席で一人、黙々と食事をする若い女性や、誰に配るのか、クロワッサンをまとめ買いする年配客など続々。買い物の様子から、みんな慣れた感じで常連客っぽい。

レシピ本も出版する菓子研究家の藤野貴子さんはカフェ『CASTOR』でも腕を振るう。デニッシュはフランスから直輸入した生地をキッチンスタジオで焼き上げ、しっかり濃いめに焼き込むことにより小麦粉とバターの印象を引き出す。冷めても味が保たれるため、明日の分も含め、多めに買っておくのもアリ。

「焼き直しする場合は、トースターから取り出して3分くらい待つと、バリッとした食感が復活します」

一方、酸味のあるサワードウブレッドは、日本人には苦手な人も多い。しかし『Parklet』のそれは意識して酸味を抑え、「毎日食べたくなる味わいを心がけています」と、レシピ開発にも携わるマネージャーの酒井雅美さん。「そのまま食べるなら当日、トーストするなら翌日以降がおすすめ」で、自家製ジャムも販売。窓の外は堀留児童公園。さっきまで店内で食事をしていた家族連れがブランコで子供を遊ばせている、なんて光景も珍しくない。

空が開け、広々とした浜町公園。活気のある遊具エリアを抜けると、隅田川テラスにつながる。
空が開け、広々とした浜町公園。活気のある遊具エリアを抜けると、隅田川テラスにつながる。

日本橋エリアで人々の暮らしを支えているのは、アップデートされた「町のパン屋」。都心ながら少し歩けば公園もあり、パンとコーヒーをテイクアウトしてのんびりする場所にも困らない。コーヒースタンド『TSUBUYORI』の近くには広々した浜町公園もある。さて、買い集めたコーヒー豆やパンは、どうやって、何と合わせて楽しもうかな?

【パン屋さんと喫茶店のロマンス】

菓子研究家のキッチンスタジオに併設『CASTOR』

ずらりと並ぶジャムやシロップ、コンフォートは、どれも菓子研究家の店主・藤野貴子さんのお手製。コーヒーのうち浅煎りはその都度豆を入れ替え、全国のロースターから仕入れたいち押しを紹介する。

・8:30~16:00、日・月休。Instagram:@castor_official

オーガニック食材が生むピュアな味わい『カワイイ ブレッド&コーヒー』

パンに合うオーガニックのスプレッドも手に入る。
パンに合うオーガニックのスプレッドも手に入る。

パンが焼き上がる匂いにつられ、おなかが鳴る。パン・オ・ショコラ380円はカカオの風味が小麦の旨味を引き立て、シナモンを利かせたカプチーノ580円と至極のペアリング。国産小麦や自家培養発酵種、食材にこだわり、王道を極める。

住所:東京都中央区八丁堀2-30-16 T&Yビル1F/営業時間:8:00~15:00/定休日:月・火/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩2分

おすすめはコレ

吉田牧場のカマンベール480円。
岡山・吉田牧場のカマンベールたっぷり。所々カリッと焼けた食感も◎。

クロワッサン300円。
高温で焼き上げ、外はサクッと中はしっとり。発酵バターの風味が舞う。

バゲット1本360円。
自家製発酵種と白神こだま酵母を使用。香ばしいクラストがたまらない。

静かな住宅地の挿し色のような存在『TSUBUYORI』

1杯ずつ丁寧にハンドドリップします。
1杯ずつ丁寧にハンドドリップします。

ハンドドリップコーヒー300円と手頃。豆は懇意にしている焙煎士からフレッシュなものを仕入れ、産地は時季によって異なる。すっきりした浅煎り「朝」とまろやかな深煎り「昼」は後味まで澄み渡り、柔らかい口当たり。

・11:00~15:00ごろ(変更あり)、不定休。☎03-6206-2103

職人が作り出す一点物との一期一会『HARIO Lampwork Factory 小伝馬町店』

ホットの飲み物にも安心して使える耐熱ガラス製。道具の新調に。
ホットの飲み物にも安心して使える耐熱ガラス製。道具の新調に。

老舗の耐熱ガラスメーカーによるアクセサリーブランド。店舗と工房が一体型で、作業風景は自由に見学できる。「アクセサリーのような食器」をテーマにしたカップ&ソーサーは、工房で取っ手を接着して仕上げ。4500円~。

・11:00~19:00、日・祝休。☎03-5623-2143

バターロールの可能性を広げる専門店『PARKER HOUSE BUTTER ROLL』

くるくるとロールパンを成形する様子にくぎ付け!
くるくるとロールパンを成形する様子にくぎ付け!

かじり付くとサクッ、もっちり。生地に巻き込んだ国産の有塩バターが深みを与える。イタリアン出身の元シェフがいて、アレンジメニューが豊富。スパイス香る野菜マリネと粗挽きソーセージ420円。コーヒー290円。

・7:30~19:00(土は9:00~17:00)、日・祝休。☎03-6262-8484

おすすめはコレ

パーカーハウスバターロール195円。
試行錯誤して生まれた自慢の品。食べ進めるごとに口溶けのよさを実感。

トリュフ香る卵サンドロールパン390円。
トリュフの香りが漂う卵のフィリングをぜいたくに、たっぷりサンド。

トリュフ香る海老とキノコのタルティーヌ420円。
こんがり焼いたパンの耳と、エビの食感のコントラストが絶妙。

東日本橋住民が待ち望んだ普段使いの店『BEAVER BREAD』

売り場の奥の工房では次々とパンが作られる。
売り場の奥の工房では次々とパンが作られる。

銀座の名店でブーランジェリーシェフを務めた割田健一さんの「町のパン屋」。食材を厳選、日本人になじみあるパンをブラッシュアップした。フルーツサンドには近所の姉妹店レストラン『bouqet』のアイデアも。

・8:00~19:00(土・日・祝は~18:00)、月・火休。 ☎03-6661-7145

おすすめはコレ

シナモンロール420円。
小麦の旨味とシナモンの香りが呼応するシェフのスペシャリテ。

ショクジパン400円。
噛み締めるとオリーブオブオイルの風味、ほんのり効いた塩気がじわり。

金柑と生ハム550円。
旬の果実を使ったフルーツサンドは、その都度続々と新作が登場。

コーヒーとミルクの幸福な出合い『RR Coffee Crafts』

「暖かい季節はアイスで飲んでみるのもおすすめ」。
「暖かい季節はアイスで飲んでみるのもおすすめ」。

名物はミルク出しコーヒー500円。浅煎りの豆を牛乳に入れ、半日かけてじっくり抽出する。砂糖不使用、甘さはあえて乳脂肪分が高めの牛乳のみ。コーヒー感も味わえ、夏になると中煎りの豆に変えるなどレシピの調整も行う。

・11:00~18:30、月休。Instagram:@rr_coffee_crafts

サンフランシスコ発のサワードウブレッド『Parklet』

公園で遊ぶ子供が窓越しに作業風景をのぞくことも。
公園で遊ぶ子供が窓越しに作業風景をのぞくことも。

クラストが薄く、パリッとした食感も醍醐味。国産小麦を自家配合し、自然発酵させた酵母を使う。オムレツサンドイッチ1200円とオーボンビュータンのハム350円。テロワールを意識した自家焙煎のコーヒー450円。

・8:30~18:00(カフェは~17:30LO)、無休。☎03-3527-2627

おすすめはコレ

丸いカントリーブレッド Large 1500円。
国産小麦で作る、酸味が穏やかで食べやすいサワードウブレッド。

ごまパン1200円。
表面を覆うゴマの香りがふわっ。しっかりしたパンの食感もクセになる。

生姜とフルーツのパン1350円。
プルーン、アンズ、カレンズ、レーズンなどドライフルーツがぎっしり。

取材・文=信藤舞子 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2023年2月号より