「づゅる麺 豚あじ 恵比寿神社前」から独立し、あっさり系中華そば店をオープン
もともとこの場所にあった「づゅる麺 豚あじ 恵比寿神社前」に勤務していた店主の大関卓也さんが、2012年10月にオープンした『おおぜき中華そば店』。『づゅる麺』は太麺のつけ麺の店だったが、こちらはあっさりとした中華そばがウリ。180度方向転換をした。
「『づゅる麺』では目黒店、恵比寿神社前などで8年勤務していました。まあ人気のある店だったんですが、手掛けていた会社が飲食店から手を引くことになって、社長が当時店長だった僕に『それならここで独立してラーメン店をやれば?』と言ってくれたんです。もともとつけ麺よりも熱いスープのラーメンが好きだったので、自分の店を出すなら中華そばにしようと決めました」。
『づゅる麺』で、たまに期間限定のラーメンを出していたという大関さん。その中でも評判のよかった中華そばやにぼしそばをブラッシュアップさせた。
店をオープンするに至っては、「ひとりでは到底なしえなかった」と大関さんは話す。一緒に働いていた『づゅる麺』の先輩・池田さんの存在が大きかったそう。ちなみに池田さんは同じ恵比寿で前店の屋号を継ぎ『づゅる麺池田』として営業しており、今でもお互いの店を行き来する仲なのだとか。
3種の煮干しが集合して襲いかかってくるようなモーレツな煮干しスープはクセだらけ!
メニューは鶏、豚を主体に香味野菜や魚介のテイストも加えた昔ながらの中華そば、鶏と豚ガラを強火で炊き白しょうゆで味つけた白湯そば、『づゅる麺』時代のファンにも好評の鶏・豚・魚介のつけそば、そして今回注目したにぼしそばの4本柱。テイストが多いため間口が広く、さまざまな年齢層にささっている。
「にぼしそばは、3種の煮干しを水出ししたあと、ゆっくり熱を加えて旨味を抽出しています。煮込みながら木の棒でガンガン煮干しを砕くので、骨から濃厚ないい出汁が出ていますよ」。
スープは濾(こ)して提供されるが、全体的に濁っていてスープのうわずみに煮干しの皮や肉の破片が浮かんでいることからも濃厚さがわかる。「骨を砕かないとお吸い物のように透き通って上品な味になってしまうので、ワイルド感を出したかった」と大関さん。
さあ、にぼしそばがやってきました。まずはスープからいただきま〜す。
わぁ、これはクセが強い! 煮干しの臭みがあって苦味もある。でも、それ以上にモーレツな旨味もあるんだなぁ。
絵本のスイミーみたいに小さな煮干したちが固まり、巨大魚になって現れたような、濃厚な煮干しスープだ。そのキョーレツな個性とバランスを取るべく、キリリと醤油や塩を利かせたかえしもいいなあ。
「う〜ん、う〜ん」と味わいながら、2口、3口とこのクセがクセになる。ああ、めっちゃくちゃおいしい! ここまですごい煮干し味は久しぶりに食べたかもしれない。
「ダシは煮干し100%です。かえしはコンブやしょっつる、ナンプラーとかを入れて無化調で作っています。これはお湯で溶いただけでもおいしいくらいなんですよ。今や、うちには欠かせないものですね」。
しっとりとして甘味も感じられる2種類のチャーシュー。大きめのほうが丁寧に脂を処理した豚肩ロースで、レア感も残るように仕上げてある。とはいえ70度ほどで加熱し、最後に軽く薫製をしているので風味も豊かだ。一方、細長い方は鶏もも肉のチャーシュー。中華鍋で焼き、甘めの醤油たれに漬けており、香ばしさを感じる。スープがワイルドなだけに、やさしさが染みるなあ。
食べ終わった後でも、スープの印象が強かったのか舌がジンジンしていつまでも煮干しの余韻が消えなかった。うーん、また今日もすごいものをいただいてしまった。ごちそうさまでした!
地元の人に愛されるラーメンを提供してはや10余年。違ったアプローチのラーメン店も構想中!?
いつも行列が絶えない『おおぜき中華そば店』。地元のサラリーマンを中心に、あっさり系ラーメンが好きな女性や高齢のファンもいるそうだ。
「オープン当初の恵比寿は、トンコツの乳化系スープを出すラーメン屋さんが多かったんで、うちはあっさり系でいいかなと思ってたんですけど、今はあっさり系ラーメンが増えてきちゃいましたね。つけ麺を出す店も少なくなっている気がします」と地元のラーメン事情を語ってくれた大関さん。
開店から10年が経過し、固定ファンもがっちりついている『おおぜき中華そば店』。この先、新メニューの構想などチャレンジしたいことはないですか? と質問してみた。
すると、「実は、恵比寿でこの店とは違うアプローチの店を作ってみたいなあと考えているんです。ふんわりとしていた構想が固まりつつあるんですけど、僕はこの店で手いっぱいだから誰かにやってもらわないといけない。物件とスタッフが見つかれば始めてみようかなと思っているんですよ」と、目を輝かせて語る大関さん。
(いい意味で)クセだらけの絶品にぼしそばを生み出した大関さんだもの、きっと新店もあっと驚くラーメンを提供してくれるに違いない。今後も大関さんの活躍に期待したい!
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢