今大会がきっかけとなった選手の発掘・育成事業

中学生向け「プラチナ・ジュニア」は約30名。射撃、ボート、ラグビーフットボ ールと埼玉県ならではの練習環境がある3競技から選ぶ。

最終回は連載取材中に興味を持った「今大会をきっかけに始まった選手育成」を取り上げる。

まずは埼玉県の中学生のライフル射撃記録会。また珍しいスポーツを、と驚いたが、これは県の「彩の国プラチナジュニア発掘・育成事業」の一環だ。県内の並外れた運動能力を持つ中学生30人が、ライフル射撃かボート、ラグビーフットボールの3競技からひとつ選んで鍛えられる。

オリンピック競技などを本格的に練習できるのは魅力だ。競技団体の指導者も「驚くような才能の子がいます」とこの事業に期待を寄せる。

1964年大会会場だった戸田漕艇場で、埼玉ボート協会理事長 和田卓さんの指導を受けるプラチナ・ジュニア。

それからパラ選手のインタビューで「パラ発掘で競技を始めました」という声も聞いた。調べてみれば、こちらは東京都が行うパラスポーツ次世代選手発掘プログラムだった。

このパラ発掘をきっかけに今回のパラリンピック出場を果たしたボート選手の有安諒平さんに話を聞いた。

パラボート選手の有安諒平さん。15歳で視覚障害に。冬季大会のノルディックスキーにも挑戦。

視覚障害のために運動は得意ではなかったが、大学時代にパラ柔道を始め、さらにパラ発掘でボート競技と出合った。「本業の基礎医学の研究が忙しいので、ボート漕(こ)ぎのローイングマシンで自分のペースで練習できるのが魅力でした」と有安さん。
そしてトップアスリートに。

トップアスリート御用達 最高峰のトレーニング空間

有安さんたち選手仲間は、相模湖や戸田の漕艇場での練習のほか、屋内トレーニングにも励む。その場所がナショナルトレーニングセンター(NTC)。各競技団体が認定したトップアスリートだけが利用できる日本最高峰の施設だ。有安さんに使い心地を尋ねると、「NTCイーストはパラ選手も使いやすいですよ」。

視覚障害者が指で触ってわかるロッカーキー、車いすが動きやすい広い通路と至れり尽くせりだとか。

さらに選手それぞれの栄養を摂取できる食事、温冷交代浴やマッサージで体を整える。トレーニングだけでなく充実の一日を過ごせるのだ。

2019年新設の、味の素NTCイースト。オリ・パラのさらなる共同利用のためのトレーニング施設。

パラ発掘を皮切りにスポーツに邁進する有安さん。「障害はパラスポーツを行える権利と前向きに考えるようになりました」と明るい笑顔。

そんな有安さんが東京パラリンピック出場で驚いたのは、162の国と地域から来た、さまざまな障害を克服して活躍する競技選手の姿だった。「まさに多様性のるつぼ」。あの障害でここまで動けるのかと、研究者として学ぶことも多かったとか。

大きな世界へ次々に羽ばたくアスリートたち、何だかワクワクする。

【埼玉県】 彩の国アスリート育成プロジェクト

質の高い多様な競技を早くから体験して伸ばす

小学生から高校生までの選手育成事業。
まず小学生向けには2011年度開始の「プラチナ・キッズ」。体力測定で選ばれた30名が5・6年生でオリンピック競技など、20余種目の競技を体験。その子の適性をふまえた競技をスポーツ科学に基づいたプログラムで育成。その後中学生対象の「プラチナ・ジュニア」、高校生以上の国際級選手には「プラチナ・アスリート」がある。

射撃競技の、ビームライフルとビームピストルには現在十数名が所属。
埼玉県スポーツ協会 競技スポーツ支援課長の本間孝太郎さん。長年選手育成を手掛ける。

【東京都】 パラ発掘事業

国際級のパラ選手を見つけて育てたい!

「2020大会に一人でも多くの東京ゆかりのパラ選手を輩出したい」と2015年度に開始された選手の発掘事業。今大会ではボート競技3名、陸上競技1名が出場した。他競技の経験者や怪我や病気でパラ選手を志すアスリートもいるが、応募に競技レベルは問わない。体力測定や体験会の後、専門家の相談や知識面の座学などフォロープログラムも。障害者の活動の幅を広げ、認知度を上げる効果にも期待だ。

2021年度の募集はもう締め切ったが、11月3日に体力測定。
11月23日には、各競技団体のブースでそれぞれの適性を相談。以降は各競技団体に所属して国際級選手を目指す。
東京都パラリンピック部競技担当課長 千葉伸一さん。福祉保健局出身で障害者福祉を熟知している。

ハイパフォーマンス スポーツセンター

トップアスリートだけが使える最高峰の施設

スポーツ科学研究施設やスポーツクリニックなどがあるJISSの建物。横に味の素NTCウエストが。

国立スポーツ科学センター(JISS)と味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)を合わせた日本の国際競技力向上の中核拠点。国内最高峰の施設だ。またJOCが実施している中高生アスリートを育てるJOCエリートアカデミーはここNTCを拠点としており、卓球の平野美宇選手や張本智和選手らを輩出。広大な敷地は明治時代から陸軍用地で、終戦後のGHQ接収を経て1969年に国立競技場用地として払い下げされた。

トップアスリートが国際競技大会などにおいて優れた成績を収めることができるよう、様々な医・科学サポートや実践的研究、集中的にトレーニングするための環境の提供を行っている。(生理学実験室の写真提供=日本スポーツ振興センター)

取材・文=眞鍋じゅんこ 撮影=鴇田康則
『散歩の達人』2021年11月号より

6月1日、ついにオーストラリアのソフトボールチームが群馬県太田市にやってきた。総勢約30人のチームで、全員がワクチンを接種済みだという。それはそれでいいのだが、どうもこれから続々とやってくるらしい。一説によれば900ものチームと選手が! しかも数百規模の自治体が事前合宿を受け入れる……って聞いてないよ!と思ったあなたは正直でよろしい。私はここ数カ月間、「バブル方式」「ホストタウン」「事前合宿」、この知ってるようで意外と知らない3つの言葉について、関係各所に取材してきた。結果わかったのは、なかなか衝撃的な事実だったのだ。
3月25日に福島県で聖火リレーがスタートして3週間。これまでに福島県から栃木県、群馬県、長野県、岐阜県、愛知県、三重県、和歌山県、大阪府、そして四国へと走っているので、地元の方々はもうご存知だと思うが、一応、第一日目に見た聖火リレーをご紹介する。全国各地、あなたの街にもいずれこのご一行、走ります!
聖火リレーが3月25日に福島県をスタートして、ひと月以上。7月23日まで粛々と全国を網羅するらしい。コロナ禍なので当初とは形を変える自治体も増えてきたが、聖火リレーの原型はこんな感じ、というのは前編で書いた。で、私たちがなぜ第1日目の福島県での取材に訪れたのかと言うと、もうひとつ取材しておきたいことがあったからだ。それは「復興五輪」。今更ながら、これは一体どういう意味なのだろう?