シャンデリア輝く重厚な内装と、浅草・下町の気さくな雰囲気。これぞ理想のレトロ喫茶店だ!

扉を開けると、シャンデリアが煌めくクラシックな店内に、さっそく気分は上々に。かつては漂っていた紫煙も今は無く、たばこが苦手な人にはうれしい空間だ。

出迎えてくれた3代目オーナーの保坂祐司さんにお話を聞くと、シャンデリアや壁掛け時計などの店内の装飾品はどれも、輸入業などを営んでいた初代オーナーのこだわりの品だという。1962年の創業時からほとんど変わらないゴージャスな雰囲気は、昔ながらの純喫茶を愛する人はもちろん、若い世代にも人気がある。

「最近はネットでこの店を知った若い人もよく来てくれるんですよ」と嬉しそうに語る保坂さん。常連さんの多い老舗にありがちな敷居の高さはなく、店員さん達も気さくな雰囲気だ。店内は60席と比較的広く、階段や調度品で座席が適度に仕切られているので、初めてでも一人でもふらっと入りやすいのがうれしい。

甘くない生クリームが、自家焙煎のコーヒーを引き立てる。クリーミーロワイヤル

『ローヤル珈琲店』の入り口には、創業当時から使用しているという年代物のロースターが。ほぼ毎朝自家焙煎する自慢のコーヒー豆は、ブレンド珈琲やロワイヤル珈琲のほか、自家製の珈琲ゼリーにも使われている。

豆にこだわる喫茶店というとブラック以外頼みづらいこともあるが、『ローヤル珈琲店』のメニューの一番上に載っているのは、ヨーロッパ風に焙煎したコーヒーに生クリームを加えたロワイヤル珈琲638円と、ホイップした生クリームを更にトッピングした、写真のクリーミーロワイヤル748円だ。

こちらのクリーミーロワイヤル、甘そうに見えて実はコーヒーにもホイップにも砂糖は入っていない。一口飲めばふんわりトロリとした生クリームの滑らかなコクと、深煎りコーヒーの濃厚な旨味が感じられる。コーヒーの熱で次第に溶けていく生クリームの食感を楽しみながら、ゆっくりと味わいたい。

ここへ来たら頼まずにはいられない。コンビーフチーズの絶品ホットサンド

次に頂いたのは、この店の看板メニューともいえるホットサンド583円だ。具材は5種類から選べるが、中でも人気なのはコンビーフチーズ。

一緒に頼んだブレンド珈琲528円は、モカを主体にマンデリンやスプレモを加えていて、ふんわりとした酸味と強い香りが美味しい一杯だ。

柔らかな食パンを使用してふんわりと焼き上げたホットサンドは、外は軽くてサクサク、中はとろとろのチーズとじっくり炒めたコンビーフが濃厚に絡んで、ボリューム満点なのに軽やかな食べ心地だ。たまに現れるホクホクのアスパラが、コンビーフの旨味を一層引き立てている。パンの耳が切り落とされていないのも新鮮で、カリカリ食感と香ばしさがたまらない。

ところで、ホットサンドに添えられるサラダなどは、曜日や時間帯、その日の忙しさなどによって内容が変わるので悪しからず。

ローヤル珈琲店
じっくり炒めたコンビーフが決め手。浅草『ローヤル珈琲店』のホットサンドのレシピ
人気メニューであるコンビーフのホットサンドは、これまた懐かしのテレビ番組『どっちの料理ショー』にて勝利したこともある、自慢の一品。シャキシャキアスパラと香ばしコンビーフ、とろーりチーズの組み合わせは…

甘さの引き算でコーヒー好きを虜にする、自家製珈琲ゼリー

もしコーヒー以外の飲み物を頼んだ時は、デザートで自家製珈琲ゼリー693円を頼むのがおすすめ。お店でドリップしたブレンド珈琲で丁寧に作ったゼリーは、砂糖を加えていないのでコーヒーの美味しさをダイレクトに感じられる。

一口大にカットされたゼリーはしっかりと弾力があり、コーヒーの香りや酸味、苦味をギュッと閉じ込めている。器に注がれた生クリーム無糖なので、一番上に乗せられたアイスクリームの甘さと濃厚さが印象深い。食べる部分によって甘さのバランスが変わるので、最後まで飽きずに楽しめるデザートだ。

どっしり腰かけて、好きなものをゆっくり味わう。『ローヤル珈琲店』で思い出す、気ままな喫茶店での過ごし方

ビロードの張られた四角いローチェアにどっしりと腰掛けて、ホットサンドをかじりながら店内を見回す。暗く暖かな照明と、ほんのりと入る自然光。賑わっているのに、なんとなく他の席と仕切られた過ごしやすい空間。こんなに快適では回転率が悪くなってしまうのでは、と要らぬ心配までしてしまう。

取材で来たはずなのに、サンドイッチを平らげコーヒーを飲み終わるころにはすっかりリラックスして、カメラマンとのんびり談笑してしまっていた。1962年から半世紀以上、媚びることも奢ることもなく、老若男女様々なお客さん達を迎え入れてきたこの空間は、不思議と人を寛がせる魅力があるようだ。

住所:東京都台東区浅草1-39-7/営業時間:8:00~18:30/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草駅から徒歩4分

取材・文=岡村朱万里 撮影=加藤熊三