木のようにも見える。石のようにも見える。材質すら一目見ただけでは分からない。そんな謎の物体が真ん中に人々の興味を吸い込むようにしてぽっかり丸い穴をあけている。
中央のきれいな穴と対照的に物体自身はややいびつな丸の形をしている。
まるで中央の穴が主役だといわんばかりに。
このゆがんだ丸の関係性に俄然興味が増してくる。
一体これは何なのだろう。気になり周りを見渡すとこの物体の説明書きを見つけた。
なるほど。石貨か。
本やテレビなどで見たことはあったが実際に見るのは初めてだ。
説明書きを読むと1924年ごろに使われていたものらしい。
およそ100年前に使われていたものか。
その事実を知り石貨を見ると不思議と過去にさかのぼったような気分になる。
視線を上げると日比谷公園を囲む近代的な高層ビルが見えた。
この石貨こそ現在と過去をつなぐ穴なのかもしれない。