ハレー彗星を見て生まれた男色プロレス集団への恋心【尾崎ムギ子の転んでも、笑いたい】
25歳で脱サラして、憧れのフリーライターになった。出版社に売り込みに行くと、必ず言われた言葉がある。「得意分野はなんですか?」――。ない。ないよ……。得意分野も、書きたいジャンルも、これといった趣味もない。強いて言えば美容が好きだったため、美容雑誌に売り込みに行ったが、そこでも「得意分野は?」と聞かれ、「いや、美容なんですけど」とは言えずに俯いてしまった。なんとなく体当たり系のレポートを書くことが増え、歌ったり踊ったり、ハプニングバーに潜入したり、いろいろやった。しかし30歳を過ぎると、「こんなやり方、いつまでできるのだろうか……」という焦りが芽生えた。先輩ライターに相談したところ、「コンビニのカップスープについて書いている人いないから、狙い目だよ」と言われ、カップスープを買い漁ったこともある。しかしさすがにニッチすぎるし、好きでもなんでもなかったため、すぐにやめた。だれも書いていないからとか、そういうことじゃないのだ。自分が心底惚れ込めるなにかが、わたしはほしかった。