自ら"サテン"と名乗り文化を伝える喫茶店『310.COFFEE』
オープンは2016年2月。銀座で喫茶店と名乗る店の中では新顔の部類だ。「喫茶店というものを次の世代に引き継いでいきたい」と店長の佐藤由希絵さんは言う。鮮度を重視したおいしいコーヒーをお客さんに提供することも店のポリシー。ほぼ毎日開店前に店内にある焙煎機で焙煎を行っている。
コーヒーは一杯900円から。銀座らしい価格設定だが、おかわりは半額。5種類ある食事のメニューは単品では提供しておらず、ナポリタンやカレーと1000円以下の飲み物とセットで1400円と手頃な価格になる。銀座でコーヒーを味わいながら、ゆっくりした時間を過ごしたい時に立ち寄りたい店だ。
『310.COFFEE』店舗詳細
本格派カレーと銅製やかんで淹れるコーヒー。『樹の花』
ジョンとヨーコが訪れた店
歌舞伎座の裏手、木挽町通りにジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が訪れたことで有名な喫茶店がある。今でも2人が直筆した便箋が飾られ、多くのビートルズファンが聖地として訪れる『樹の花』だ。コーヒーやカレーがおいしい店としても親しまれている。
『樹の花』では、焙煎所から1日おきにコーヒー豆を配達してもらって、新鮮な豆で淹れたコーヒーをお客さんに提供することを基本にしている。もちろん注文を受けてから豆をひき、ハンドドリップで丁寧に淹れる。店主の成沢さんがコーヒーを学んだ先生が銅製のやかんを使っていたのを受け継いで、今日まで変わらず銅製のやかんを使うのが『樹の花』流だ。
ランチの人気はカレー。人伝に知り合ったインド人青年が店主にレシピを残した本格的なカレーを目当てに訪れる客も多い。
『樹の花』店舗詳細
“珈琲だけの店”でオールドコーヒーを『カフェ・ド・ランブル』
戦後間もなくから続く名店
1948年から銀座で営業している『カフェ・ド・ランブル』は、コーヒー好きにとっては聖地のような場所だ。店を開いたのは現店主林不二彦さんの伯父で、2018年に103歳で亡くなった関口一郎さん。日本中のコーヒー好きが尊敬してやまないコーヒー界のレジェンドだ。生のコーヒー豆を10年以上熟成させてから焙煎するオールドコーヒーを確立した人としても知られている。
子供の頃から夏休みなどには店に出入りしていて、20歳前から店で働くようになった林さんは自然な流れで店を引き継いだ。今も『カフェ・ド・ランブル』を象徴するメニュー「ブラン・エ・ノワール(琥珀の女王)」とともに、店の流儀とコーヒーへの姿勢が受け継がれている。
『カフェ・ド・ランブル』店舗詳細
画材店『月光荘』が開く人と感性が行き交うサロン。『月のはなれ』
『月のはなれ』は、1916年(大正6)創業の老舗画材店『月光荘』が2013年にオープンしたサロンだ。ドリンクや軽食も楽しめるが「喫茶店」ではなく、サロンと呼ぶのがふさわしい。もともと画材の倉庫として使われていた場所の約半分をルーフトップにした店では、インテリアやメニューの由来などを通して『月光荘』が持つ100年あまりの歴史に触れることもできる。
フードメニューはガンボに代表されるクレオール料理が中心。レモンが丸ごと練り込まれている月のレモンケーキも名物だ。同時に若いアーティストたちの作品展示やさまざまなジャンルの生演奏が日常的に行われている。コーヒー1杯を楽しみながら、新しい文化が生まれる瞬間に立ち会える場所と言えそうだ。
『月のはなれ』店舗詳細
/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄・ゆりかもめ新橋駅より徒歩3分
良質のお茶を台湾風に味わう。『千年茶館』
銀座にある異空間
かつて白金台にあった『千年茶館』が銀座に移転したのは2016年のこと。当初は会員限定だったが、2020年10月に一般客も入れるように方向転換。きっかけのひとつはスイーツ好きの間で幻とも言われる『COH』が作るカヌレだ。予約も簡単ではないこのカヌレは、現在は「今日のお菓子」として『千年茶館』で提供されている。
出てきたお茶は、まず茶杯から聞香杯を持ち上げて、空になった聞香杯に鼻を近づけて楽しむ。小さな器のなかに閉じ込められた香りがストレートに感じらるのがおもしろい。店内は「上海の怪しいビルがコンセプト」とオーナーはいうが、中国や台湾にあった看板や額、建具など調度品がセンスよく置かれている。インテリアに興味がある人にとってもたまらないだろう。
『千年茶館』店舗詳細
※変更の可能性あり/定休日:月・火/アクセス:地下鉄銀座駅から徒歩1分
老舗バーのごとき品位と深い味『十一房珈琲店』
30年以上寝かせた生豆を用いたヴィンテージコーヒーは高貴に香り、含むと濃厚な苦酸甘味が口内に爆発し、深い余 韻を残し消えていく。高級ウイスキーのような味みを感じる。ブレンド各種もひけをとらぬ一品。カップも BGM の趣味 も一級品など、全てにこだわりつつ、これみよがしなそぶりがない。自然体で、珈琲を心地よく楽しめる。これぞプロの ワザ。ほどよい緊張感ただよう大人の空間で味わう至高の一杯は格別である。
風情と香りでゴージャスな朝を。『カフェ銀座仏蘭西屋』
1981年の創業以来、銀座で数少ないモーニングを用意するのは、シャンデリアが灯ともる優雅な空間。モチッとしたイギリス食パンに、たっぷりバターを染み込ませたトーストをかじれば、バターの香り高さに思わずうっとり。コロンビアベースの特注ブレンドコーヒーも朝にうれしい軽い口当たりだ。目玉焼き、ウインナー、サラダ付きのCセットなら活力ばっちり。お尻を包むような革張り椅子、ふかふかな布張り椅子など、座り心地も満点だ。
たまごサンドの海に溺れたい。『喫茶 アメリカン』
パンがでかい。具のゆでたまごフィリングだって、こぶし大だ。1983年に創業したこちらは、歌舞伎座の改装を機に名物を作ろうと一大決心。そこで笑っちゃうほどジャンボなサイズにしたという。「1人前はパン1斤だね」。わっはっはと名物店主の原口誠さんは豪快に笑う。その日焼きたてのパンはふんわりもっちり。かぶりつけば、ふかふかのパンに顔がめり込むのが快感。食べきれないのは必然なので、持ち帰り可能です。
時間軸を揺さぶる地下喫茶。『カフェ ルトン』
無機質な階段を潜ったどん突きに、“まさか”の入り口がある。温かな灯りが満ちるモダンな店内は思いのほか広く、天井が高く、しっとり静寂だ。調度品や陶磁器は、隅々までアールヌーボー。店主の井田利光さんが蒐集(しゅうしゅう)したこれらアートが醸す雰囲気に加え、熟成豆を使うまろやかなコーヒー、素朴なワッフルが現実逃避を誘う。「お客さんは変わるけれど、店は変わらない」と、井田さん。変わらない時間をここで刻み、38年になる。
銀座通りを望むレトロビルの特等席。『カフェきょうぶんかん』
キリスト教書や絵本など、階ごとの品揃えに特徴ある『教文館』。館内めぐりのゴールは4階、トンネルみたいな廊下の先にあるカフェ。土の壁や観葉植物の自然の気配、お菓子の甘い香りに和む。満席時のざわめきも心地よいが、開店直後と夕暮れ時の静けさは格別だ。「雨の日もいいですよ。銀座通りに咲く傘の花がとてもきれい」とスタッフの秋定智子さん。17時~は、ベルギーの修道院で醸造されるシメイビールを注文できる。
書店の『教文館』はこちらの記事で紹介しています。
取材・文=奥谷道草、佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ)、岡本ジュン、野崎さおり 撮影=門馬央典、加藤昌人、高野尚人、鈴木奈保子、野崎さおり
銀座4丁目交差点から一本入っただけなのに、静かにゆったりと過ごせる空間です。
1936年.木村コーヒー 店(現キーコーヒー(株))店主、柴田文次が創業。
店内は歴史感じる趣があり、店員さんの素晴らしいおもてなしが嬉しいです。
ベイクドチーズケーキは、「酸味、甘味、酸味」のサンド構成。すっきりとした口当たりで始まり、控えめながらも満足感のあるまろやかさ、キレの良い後味でいくらでも食べられそうな大人味。美味しさの秘訣は、厳選されたチーズとベストなバランスで配合されたサワークリームとのこと。
ハンドドリップで淹れられるコーヒーは、強めの香りが印象的なブレンドコーヒー。澄んだ味わいはチーズケーキに負けない力強さ。勿論コーヒーだけいただいても美味しいんです。
牛乳たっぷりのまろやかなカフェラテは、口当たりも優しくすいすい飲めます。ライトな感じが、オンオフ切り替えのスイッチにぴったりな味わいで、控えめに喉を鳴らすたびに肩の力が抜けていくような感覚に。フォームミルクのきめもかなり繊細なのも特徴的。
お店のカフェラテは濃すぎる、苦いと感じている方にもおすすめです!