10位 鉄板焼きそば 『福ちゃん』(浅草)
地下鉄銀座線浅草駅改札を出ると、東京最古の地下街である浅草地下街に直結している。モダンからレトロへ時空をワープしたような面白さの中、すぐ左側にあるカウンター中心の昭和感溢れるお店。オーバルの銀皿に盛られた焼きそばの見た目の普通さは、そのまま味わいの普通さに通じる。太めの麺が独特と云えば独特。普通こそ愛でるべき、愛でられるべき。これにカレーをかけたカレー焼きそばも愛すべき逸品。昔ながらの甘いレモンサワーと一緒に食べると大人のまま子供になれる。この昭和感は絶対に保護するべき文化遺産。ウマウマウー。
『福ちゃん』店舗詳細
9位 ぼっかけ焼きそば 『長田本庄軒 エキュート立川エキナカEAST店』(立川)
ワタシが敬愛する飲食店や楽器店のある神戸三宮センタープラザ地下にある焼きそば名店が立川駅構内にもある不思議。最初に出会った時はテレポーテーションでもしたかと思った。ぼっかけ焼きそばは太麺に濃厚なソース、そしてぼっかけ(牛スジとこんにゃくの煮物)が渾然一体となって奥深い味わいを形成している。青ネギがどうにもこうにも天才的。丸亀製麺と同じ会社の経営。なのでもっと店舗が増えるかと期待していたら現在では関東ではここだけ(亀有は閉店)。神戸気分を立川で味わうべし。ウマウマウー。
『長田本庄軒 エキュート立川エキナカEAST店』店舗詳細
8位 焼きそば 『甘味おかめ 交通会館店』(有楽町)
昔ながらの甘味処。不思議と心安らぐ空間。あんみつも磯辺巻きも好きだけれど、ここはやはり焼きそばを。極めてスタンダードで普通の焼きそばと思いきや、肉は挽肉で、全体的にとろみがある完全独自路線。とろみがあるのにちゃんとソース味なのがまた不思議。丸い銀皿と云うのもまた不思議に輪をかけます。穏やかな味わいなれど青海苔が声高にその存在をアピールし、紅生姜も負けじと色だけでなく酸味を投入してくる。友達と賑やかに会話する楽しさにも似ている。早くみんなで気兼ねなく飲んで食べて笑って喋れる日が戻るのを心から願う。ウマウマウー。
『甘味おかめ 交通会館店』店舗詳細
7位 五目あんかけやきそば 『水新菜館』(浅草橋)
昼時には行列も出来る人気店。五目あんかけやきそばはお店の方のイチオシメニュー。軽く焼き付けられた麺に、たっぷりの五目あんがかけられた逸品。世の中にあんかけ焼きそば数多くあれど、これだけの完成度を誇るものは多くない。濃厚で甘めの味付け。この甘めこそがワタシを懐かしき昭和の時代に誘う。横浜中華街と云うよりは横浜または都内デパートお好み大食堂のワクワク感。そしてなくてはならないタケノコの存在がスペシャルでプレシャス。タケノコなくして五目あんかけは成り立たないとまで極論する。いつも心にあんかけを。またこの五目あんかけやきそばの滋味に溺れたい。ウマウマウー。
『水新菜館』店舗詳細
6位 ルース焼きそば 『兆楽』(渋谷)
古くから渋谷にあって、渋谷に集う人々のオアシス的な中華料理店。ルース焼きそばは青椒肉絲を炒めた麺にトッピングしたアイディアメニュー。どこにでもありそうで意外にない。ピーマンのピーマンらしい香り、タケノコの食感の妙、肉のパワフルさ、そして麺のやさしさが織り成すタペストリー。高らかに鳴り響くシンフォニー。味付けは濃いめで甘め。その甘めの味付けは昔の東急東横線渋谷駅(地上)から桜木町駅(現在はJRのみ)に確実に繋がっていると横浜生まれ横浜育ちのワタシは信じている。朝7時からオーダー可能。ウマウマウー。
『兆楽』店舗詳細
5位 富士宮やきそば 『ヤキソバーきのこや』(西葛西)
東京都内で富士宮やきそばが味わえる貴重なお店。それも焼きそば完全メイン。ワタシはこのところ富士宮やきそばに心から惚れ込んでいるのだが、そのきっかけをくれたのがこちら。とにかく麺の食感の楽しさ嬉しさ面白さ。この独特な麺なくしては成り立たない。ソース味付けは控え目なれど、そこもまた現地感に溢れている。仕上げにかけるだし粉(いわしの削り粉に青海苔を混ぜたもの)の絶大なる威力も知った。油は使わずに肉かす(豚脂の絞りかすを乾燥させたもの)を使うので食後感は大変に軽い。具だくさんのデラックスやきそばから、ソース味以外のやきそばやシンプルストイックな富士宮やきそばまで自分の好みを探せるのも嬉しい。ウマウマウー。
『ヤキソバーきのこや』店舗詳細
4位 ソース焼きそばなど 『まるしょう 本郷三丁目店』(本郷三丁目)
焼きそば愛好家にとっては天国のような焼きそば専門店。焼きそばメニュー多数。その中でも基本となるソース焼きそばは王道の味わい。華やかでしっかりした味付けなれど麺(細いのと太いのが選べます)の魅力は損なわずに絶対的な満足感が得られるザ・ソース焼きそば。他にもさっぱりとした醤油味と塩味、濃厚なイカスミ味などもあり、そのどれもがハイレベル。醤油味には焼きそばの新たなる可能性も見いだせる。創作系やあんかけ焼きそばも提供するなど焼きそば道の探究に余念がない。ウマウマウー。焼きそば食べ放題プラン(飲み放題含む150分)もあってこれは満足必至です。
『まるしょう 本郷三丁目店』店舗詳細
3位 両面焼きそば 『あぺたいと 高島平本店』(高島平)
唯一無二の両面焼きそばを戴けるお店。しっかりと焼き付けられた麺はパリッと揚がったようになっているところとやわらかいところまでが混在し、そのコントラストを存分に楽しめるようになっている。独特の醤油とソースとのハイブリッド的味付けが更に麺の妙味を引き立てる。完成度高し。焼きそばとしてこれだけの高みにいるのにセットメニューがバラエティ豊富。餃子とも炒飯とも、そしてモチロン白飯とも相性バツグンの驚異的親和性を誇る。このところ支店が次々と開店しているが、やはり本店の味を知るべし。そしてこの焼きそば、出来たてはともかく、冷めてもウマイのをワタシは知っている。ウマウマウー。板橋店、銀座店もヨロシク。
『あぺたいと 高島平本店』店舗詳細
2位 ラム肉入り手打ち焼きそば 『味坊』(神田)
中国東北地方の家庭料理の名店。ラム肉入り手打ち焼きそばの味わいの豊かさに瞠目せよ。うどんにも通じるような手打ちのもちもちとした太麺に、ラム肉・トマト・キャベツ・セロリの具材と絶妙な醤油味がナイスマッチした絶品焼きそば。シンプルだけれどグラマラス。トマトの酸味が天才的。これだけでも天に昇るような心持ちになるのに、他の料理も絶品オンパレード。何本でも食べられてしまう羊肉串も、干し豆腐の冷菜も、ラム肉入り餃子もたまらない。ああ、書いていて食べたくなってしまった。ウマウマウー。
『味坊』店舗詳細
1位 焼きそば各種 『やなわらバー』(五反田)
北海道出身のマスターが営む沖縄料理のお店。沖縄そばの麺を使った焼きそばはソース味、塩味、ケチャップ味などバリエーションが豊富で、どれも素晴らしく美味しい。特にケチャップ味はワタシがリクエストして作ってもらったのが後にレギュラーメニュー入りしたと云う曰く付き。単体で食事としての先発も、飲みながらの酒肴としてのリリーフも、散々飲んだ後の締めとしてのストッパーまで自在にこなす。新メニュー開発に余念のないマスターが繰り出すスペシャル焼きそばも見逃せない。モチロン沖縄そばも沖縄料理もみんなウマイので、お腹のコンディションを整えて万全を期してたくさん戴くべし。ウマウマウー。
『やなわらバー』店舗詳細
取材・文=小野瀬 雅生(おのせ・まさお)
1962年神奈川県生まれ。「クレイジーケンバンド(CKB)」のリードギタリスト、バンド「小野瀬雅生ショウ」のリーダー、歌も担当。通称は”のっさん”。緩急自在なギタープレイは“ハマのギター大魔神”の異名をとる。アコースティックユニット「小野瀬雅生と須藤祐」やソロ名義でもライヴ活動を行うほか、数多くのアーティストと共演、楽曲提供をしている。横浜DeNAベイスターズの熱烈ファンであり、高級・B級問わぬ食べ歩き家としても知られる。ブログやnote、YouTubeなどでさまざまな分野の文章や動画を配信しており、横浜市商店街総連合会の食イベント『ガチ!シリーズ』に例年参加など多岐にわたる活動を精力的に行っている。最新刊は『焼きそばの果てしなき旅』(ワニプラス)。