醤油を愛する人々に今も支えられて
野田市駅を出ると、風にのって醤油の香ばしい匂いが運ばれてくる。噂には聞いていたけど本当だった! 現在は、大正6年(1917)に醸造家8家が合同し設立した野田醤油(現・キッコーマン)のほか、「キノエネ醤油」「窪田味噌醤油」「坂倉味噌醤油」の4蔵で醤油が造られている。キッコーマンが有名だが、近年は「キノエネ醤油」の代名詞である白しょうゆやオリジナル調味料も話題だ。さまざまな角度から醤油を究めてきたことも醤油の街を押し上げる要因になったに違いない。
「オリジナリティを出すために醤油を使ったらヒットしました」と話すのは、『イタリアンレストラン コメ・スタ』の総支配人・櫻井克さん。野田市民はほかの地域より醤油風味に慣れ親しんでいるからだろう。小学校では醤油の授業や醤油工場の見学も定番行事だ。
「醤油は野田の観光資源。活用しないのはもったいない」と、醤油みやげに力を入れている『酒のおおみや 醤油の里』の店主・町田好昭さん。醤油の街・野田は醤油を愛する人々に今も支えられているのだ。
キノエネ醤油[愛宕]
オリジナル商品開発の独自路線で進化を続ける
プロの料理人御用達の白しょうゆが看板商品。企業向けの商品開発が中心だったが、2022年に直売所がオープンして一般の人も気軽に購入できるようになった。
「有形文化財の建物を見に来る人が増えたので、少しでも歴史に触れてもらえたら」と、総務部長の田代さん。
これを機に、白ぽん酢や彩シリーズなどオリジナル調味料も続々登場。細かな要望に対応できる技術力の高さが発揮されている。
『キノエネ醬油』店舗詳細
イタリアンレストラン コメ・スタ野田市本店[野田市]
どんな料理とも合う醤油の底力を知る
メニューはピザやパスタ、お醤油ごはん、もろみステーキなど醤油ずくめ!
実は創業者がキッコーマンのレストランで活躍した人物で、醤油との縁が深いのだ。味噌で甘辛く調味した醤油もろみもポイントで、ほどよい塩味と旨味がイタリアンに欠かせないチーズとマッチ。前菜やデザートがボリューム満点のお値打ちランチも狙い目だ。
『イタリアンレストラン コメ・スタ野田市本店』店舗詳細
酒のおおみや 醤油の里[梅郷]
醤油関連の商品ならお任せを!
生まれも育ちも野田の店主・町田好昭さん。原材料に野田の醤油を使っている商品を見つけたら仕入れし、おみやげ仕様にラベルやパッケージも制作。さらにオリジナルで、市内4社の醤油を使ったロールケーキまで作ってしまったつわものだ。醤油を広める尽力者として、千葉市の小学4年生「社会」の教科書に登場したというのもすごい!
『酒のおおみや 醤油の里』店舗詳細
取材・文=井島加恵 撮影=山出高士
『散歩の達人』2023年4月号より