最初にでてきたのは、濃茶と生菓子です。
それよりも、すごい。
どうやって色を出したんだろうというくらいな鮮やかな紫色の釉の抹茶椀。
すごい色合い。こんな発色見たことがない。
濃茶の濃い緑色に映える見事な器です。
こんな器で私が飲んでいいのか?正直焦りました。
あっという間にそれに目を奪われた私の様子をみて店主のご婦人から「よくご存じですね」と微笑みつつお褒めの言葉をいただき、使用した抹茶椀の説明を丁寧にいただきました。京焼の作家もので、この紫の色を出すことを研究している方だそうです。

そういえば、お茶席のときは使用した茶碗の説明って入るんですよね。うっかりしてました。以前たまたま入れた増上寺の貞恭庵のときに経験しました。
今まで何回かお抹茶いただいたことがありましたが、こういった作家ものでいただいた席はその時ぐらいしかないです。

また濃茶に合わせて出てきた生菓子は地元の和菓子屋さんの作られたもので(塩田とおっしゃっていました。しなの鉄道の駅にもありましたね)野山の紅葉が山頂から徐々に赤く染まりゆく様を表現しているそうです。
薄黄緑から桃色のグラデーションがきれいな練切りです。練切り目当てでお抹茶頼む私は怪しい笑みがこぼれていたはずです。

しかし、この抹茶椀触っていいのか。持って飲むのよね。持って飲まないといけないのよね。
あわわわわわわと焦りながらあ、そうだと時計と腕輪などを外して濃茶をいただいたのでした。大学の授業で美術品に触るときはこうしなさいと習ったことを思い出しました。

ゆっくり濃茶と生菓子を楽しんだ後、続いて薄茶と干菓子が出てきました。
なすがままにされながらも、ご婦人の提供するタイミングの隙がないことについて静かに驚いていました。
茶碗は先ほどの緊張感のあるものとは対照的な、信楽焼のほっとする温かみと愛らしさのあるものです。こちらは女性作家さんの作品で、女性の手の中にすっぽり入りやすい形が特徴的だそうです。
抹茶椀はご自分で足を運んで実際に見て買っているそうで、こんな作法もわからない自分のために立派な茶碗を用意してもらえること自体が申し訳ないなあと恐縮していました。

一緒に用意された干菓子は金平糖と和三盆糖を使ったお菓子(詳細思い出せず。豆菓子だったかな)と、また丁寧にご婦人からの説明が入ります。お茶の種類によってお菓子も変わってくるのかとここで一つ学びました。

お茶をいただきながらぼんやり中庭を眺めていましたが、この庭も只者ではないなと感歎しました。
楓一つとっても紅葉の時期が品種によって変わります。この庭にはその紅葉の時期が違う楓が四種類バランスよく配置されています。それは長く紅葉の庭を楽しむ工夫がなされているということです。
しかもこの喫茶室を正面から見ても植物同士重ならないよう、高さ、向きと配置が記念写真に並ぶ学生のようにそろえてあります。
ほかの植物もいくつかの品種をバランスよく配置。石灯籠などの設置物も目立たずしかもいいアクセントとしてなじんでいます。
いつ来ても何かしらの一季節の変化を長い期間で楽しめる計算しつくされた中庭。小さいながらも維持管理できるなんてすごすぎる。そもそもこの庭を設計した人何者だろうかと心の中で舌を巻きました。

どこをとっても隙がないお茶室。
しかし静寂の中で庭を眺めて飲むお抹茶は居心地がよく、とてもいい気分転換になりました。また庭とお茶碗眺めに訪ねたい場所です。

帰りにお茶室の名前を確認したら「ひゃくよてい」でした。上田方面に行く人にぜひお勧めしたいです。